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今回は、アルコールと脳への影響についてのお話です。
認知症の専門医からすると、アルコール多飲歴のある患者さんの頭部CTは見ればわかります。以前から大量に飲酒する人には脳が小さくなる脳萎縮が高い割合でみられることは知られていましたが、最近の調査によれば、飲酒量と脳萎縮の程度には正の相関が見られることが報告されています。すなわち、飲酒量が増えるほど脳が萎縮するということです。萎縮以外の影響としては、アルコールが加齢による記憶、学習低下を促進することが動物実験では証明されています。
また、施設に入所している認知症の高齢者の29%は大量飲酒が原因の認知症と考えられたという調査結果があります。また、別の調査では、過去に5年間以上のアルコール乱用または大量飲酒の経験のある高齢男性では、そのような経験のない男性と比べて認知症の危険性が4.6倍、うつ病の危険性が3.7倍と報告されています。このように大量の飲酒が認知症の危険性を高めることが示されています。
一方、脳血管障害の予防を考えた時、飲酒の習慣は勧められるものではありません。脳出血の発症率は、飲酒の量と比例するといわれています。くも膜下出血に関しては、飲酒は危険因子とされています。ところが、脳梗塞に関しては、適量の飲酒を習慣にしている人は、酒を飲む習慣のない人よりも症率が低いという調査結果があります。脳血管障害のリスクを減らす側面もあったのです。
赤ワインを日常的に飲んでいるフランスでは脂肪分の摂取が多い割に、心臓病の死亡率が高くなりませんが、これはワインに含まれるポリフェノールの効用であり、ポリフェノールは高コレステロール対策にも力を発揮します。けれども「過ぎたるは及ばざるがごとし」というように、適量を超える多量の飲酒は、血圧を上昇させる原因となり、その結果、脳出血を発症しやすくします。
多量の飲酒で怖いのは、肝臓など他の臓器や、肉体のみならず精神にも影響をおよぼし、アルコール性肝炎やアルコール依存症になって、脳卒中とは別の意味で生活そのものを危険にさらす可能性もはらんでいることです。

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