先日、新型コロナウイルスの感染拡大で、解熱鎮痛剤カロナールが品薄になっているというニュースが出ていました。しかし、冷静に考えるとおかしな話です。本来、ウイルス感染症である新型コロナウイルスにカロナールの処方は必須ではありません。マスコミに踊らされて患者さんがやみくもに「カロナールの処方」を求めていることも一因です。今回の記事では、総合内科専門医の長谷川嘉哉が、新型コロナウイルスに対してはカロナールは必須ではない理由についてご紹介します。
目次
1.カロナールが品薄とは?
カロナールが品薄とは以下の記事によります。
あゆみ製薬(東京・中央)は2022年7月29日、解熱鎮痛剤「カロナール」の出荷調整を始めたと発表した。新型コロナウイルスの感染拡大「第7波」で患者が急増し、医療機関からの発注に対応することが難しくなったため。主力の錠剤を出荷調整するほか、一部製品は出荷を停止した。対象はカロナールの錠剤や座薬など。欠品などを避けるため、過去の発注量をベースに出荷量を割り当てる「限定出荷」を始めた。終了日は未定で、「安定供給の体制が整うまでの間」(同社)としている。カロナールの細粒の一部製品は出荷を停止した。
2.そもそもカロナールとは?
そもそもカロナールとはどんな薬なのでしょうか?
2-1.解熱鎮痛剤
カロナールは熱を下げたり、組織の炎症を抑える働きがあります。発熱時や頭痛、歯痛、生理痛などの適応があります。そのため小児の解熱にはよく使われます。炎症を取る作用は弱いためリウマチなどには効果はありません。
2-2.解熱効果は弱い
カロナールの効果は、穏やかでそれほど強いものではありません。WHO方式3段階疼痛治療法の第1段階に位置付けられています。臨床的にも、使用しても体温が1℃下がるか否か程度です。実際、コロナワクチン接種後の発熱でカロナールを飲んでもあまり効果がなかった方もたくさんいらっしゃいました。
2-3.ウイルス感染自体に対する治療ではない
いずれにせよカロナールは、「単に熱を下げるだけの薬」です。ウイルス自体を殺す作用は一切ありません。したがって本来は、新型コロナウイルスの感染の際に必ず処方する必要はありません。のどの痛みと軽い発熱で、患者さん自身に体力があれば不要です。というかそれほど効く薬ではないのです。
3.カロナールがかえって治療を長引かせることも
ウイルス感染に伴う症状の多くは、身体が自然治癒力で治そうとしているために起きているものです。発熱やのどの痛みは、熱を出すことで、ウイルスを殺そうとしているのです。そのため基本的には、無理に熱を下げる必要はありません。逆に、安易に熱を下げることでウイルスを殺す作用が弱まってしまい、治療経過が長引くことさえあるのです。
4.なぜ医師は処方する?
ならばなぜ医師は、カロナールを処方するのでしょうか?多くの医師は、「ウイルス感染に解熱鎮痛剤が不要」なことは知っています。しかし、多くの患者さんが、押しかけている現状では以下の理由で処方していると思われます。
- 何も処方しないで帰ってもらうと患者さんが不安がる
- 患者さん自身が、カロナールの処方を希望する
- ウイルス感染に解熱鎮痛剤が不要であることを説明する時間もない
5.カロナールが必要な人は
但し以下の方にはカロナール処方がお薦めです
5-1.小児
小児の方は、熱やのどの痛みで食事や水分が取れなくなることがあります。確かにカロナールは1℃程度しか解熱されませんが、この1℃が小児の方には劇的に症状を改善させることもあります。
5-2.高齢者
小児と同じ理由で、発熱にともなう脱水を予防するためにカロナールは有効です。ただし、高齢者の場合、細菌性感染を合併することもあります。カロナールを処方してもさらに熱が上がるような場合は、血液検査を行い細菌感染の合併を検討します。そして細菌感染が疑われる場合は、抗生剤の投与が必要となります。
6.カロナールよりも麻黄湯がお薦め
私個人は、新型コロナウイルスに対しては、カロナールよりも漢方の麻黄湯を処方しています。麻黄湯を服薬することで、熱をさらに出して、解熱するイメージです。自然治癒力に沿った治療になりますから、すっきりと治療期間も短くなります。アマゾンでは、医師が処方するものと同じ量が含まれた「満量処方」の薬も手に入りますのでお薦めです。
7.まとめ
- 新型コロナ感染の拡大で解熱鎮痛剤カロナールが品薄になっています。
- カロナールは根本治療ではないので必ず必要な薬ではありません。
- 自然治癒力に沿った麻黄湯もお薦めです。