平成25年12月16日、高齢者に金融商品を販売する際のトラブルを防ぐため、日本証券業界が定めた統一ルールが施行されました。これまでは、証券各社の自主的な努力に頼っていたようですが、金融商品をめぐるトラブルが絶えなかったようです。証券会社の預かり資産のうち、70歳以上は口座数で全体の約3割、金額ベースで約4割占め、一方で、金融商品の勧誘による苦情・相談は、年間7-8000件であり、70歳以上が相談者の4割を占めているようです。
今回の協会のルールでは、“75歳以上の顧客に仕組みの複雑な金融商品を販売する際、支店の課長など役職者が事前に承認するよう義務付ける。さらに80歳以上には勧誘した翌日以降に上司が契約を結ぶこと”を原則としました。
この統一ルールにおいて、一律年齢で制限することに反対意見も出ているようです。しかし、認知症の専門医からすると年齢による一律の制限には大賛成です。もちろん判断力が正常な方からすれば、迷惑な話かもしれませんが、加齢に伴い多くの方で前頭葉の機能が低下します。しかしこの段階では、日常生活は自立していますが、物事を理論的に判断する力は落ちてきます。“見かけ上の異常もなく、判断力だけが低下している”、ある意味もっとも騙しやすい状態とも言えます。このような状態を診断することは、専門医により相当時間をかける必要があります。そのため多くの場合は、見過ごされています。私の経験からすると、75歳を超えればかなりの頻度で前頭葉機能が落ちてきていますので、一律販売を規制した方が安全だと考えます。このことは、金融商品の販売だけでなく、車の運転、会社の経営でも同様です。
75歳を超えたら、一律車の運転、会社の経営、金融商品の売買は規制をする。そのような前提で社会資本を整備することが必要と思われます。実際には、“車は売れなくなる”、“金融商品は売れなくなる”ので実現は難しいと思われますが・・・