介護に関わったものが報われません・・JR東海列車事故判決:認知症患者の遺族に損害賠償

2014-03-24

平成25年8月9日、“平成19年12月7日、91歳の認知症患者のAさんが、徘徊したうえ線路内に立ち入り列車にはねられ死亡。遺族に約720万円の損害賠償を命ずる”という判決が下りました。この事件は、認知症専門医としてショッキングでした。この判決について、3回にわたってご紹介します。

裁判においては、事案の概要として人物関係が事細かに論じられていました。人物関係といっても、もちろん家族だけです。驚いたことは、同じ家族の中で認知症介護に関わった度合いによって責任の重さに差異がもたらされたのです。
亡くなった、Aさんには配偶者と、長男、二男、二女、三女の4人の子供がいました。結論的には、それぞれへの判決が異なったのです。

まず長男ですが、Aさんの配偶者と介護をして、家族会議を取り仕切っていました。そのため、結果として『事実上の監督者』として認定され、責任無能力者の監督者責任を肯定されてしまったのです。次いで、Aさんの配偶者は、徘徊や自己惹起を予見可能として、一般行為責任を肯定されてしまいました。
一方で、二男、二女、三女は、介護体制の決定に関わらなかったために責任なしです。


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最初にこの判決を知った時には、遺族全員に損害賠償請求と思いました。まさか、介護に携わっていた長男と配偶者にのみに責任が負わされているとは思いもよりませんでした。これでは、家族関係が分断される恐れもあります。私の外来には、認知症患者さんだけでなく付添いのご家族が2-3名は付き添われます。それだけ、ご家族は協力して必死に介護をしているのです。そんな家族関係に配慮した裁判・判決を望みたいものです。これでは、介護に関わったものが報われません。

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