2025年1月29日南東北医療クリニック(福島県郡山市)と医療スタートアップのオーガンテック(東京・中央)は、歯の周囲の組織を再現しやすい次世代型インプラントの臨床研究を始めると発表しました。従来のインプラントに歯根膜を結合させることによるメリットは歯科領域だけでなく認知症の予防においても重要です。
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1.インプラントと歯根膜再生の重要性
インプラント治療は、失った歯を補うための効果的な方法です。特に、歯根膜は、歯と顎の骨をつなぐ組織であり、歯の支持、感覚機能、そして骨の再生を促進する役割があります。そのため歯根膜の再生は、インプラントの機能性や周囲の組織の健康にとって重要な役割を果たします。
2.脳血流との関連
歯根膜にはクッションのような働きがあります。 物を噛むと歯は歯根膜に約30ミクロン(0.03㎜)ぐらい沈み込みます。 それによって歯根膜の下にある血管が圧縮され、ポンプのように血液を脳に送り込まれます。 血液が送り込まれることで脳は刺激を受けますから、噛めば噛むほど脳は活性化されるのです。
3.研究概要
研究概要は以下になります。
- 研究名称 抜歯窩に残存する歯根膜組織を介した歯根膜結合型インプラントの有効性 及び安全性評価試験
- 対象患者 抜歯(歯根破折、歯冠破折、う蝕、脱臼歯などを原因とする)を必要とする患者 選択基準 以下の基準の全てに該当する患者
- 1) 上下顎の前歯~小臼歯までの単根歯が、う蝕ならびに歯の破折などによって、抜歯を必要とする場合。ただし、その抜歯対象歯の歯根周囲に健全な歯周組織が残存していること。
- 2) 抜歯対象歯の両隣在歯も健全な歯周組織を有する天然歯であること。また、対合歯による適切な咬合が得られること。
- 3) 同意取得時の年齢が18歳以上であること。
- 4) 本臨床研究の参加に関して、患者本人から文書で同意が得られること。
4.研究の意義
研究の意義を、プレスリリースから抜粋します。
抜歯窩を利用したバイオインプラント技術は、従来のインプラント治療をベースにしながらも、移植技術や生着様式が本質的に異なるため独創性が高いものです。失われた歯の生理機能を回復するとともに、これまで禁忌とされてきた若齢患者への適応拡大や天然歯との連結治療も可能になります。さらに、抜歯窩に埋入を行うためドリリング操作を必要としないことから患者侵襲の軽減にもつながります。また要介護状態となった高齢患者のインプラント除去における困難な歯科的問題も介護現場において抜歯処置と同様の対応ができるという利点もあります。本技術は、将来の歯科医療に革新をもたらすとともに、高齢化社会にも貢献しうる技術開発であると考えられます。
5.まとめ
- インプラント治療において歯根膜の再生は、従来に比べ機能的な歯を提供することができます。
- 同時に、歯根膜の維持のために、脳血流を維持することも期待できます。
- 医科歯科連携の観点からも、早期に、実用化することが望まれます。