アルツハイマー型認知症では、物忘れのような“記憶障害”よりも先に”嗅覚障害”が先に現れることがあります。患者さんを診ていると、臭覚が鈍くなっている印象があります。においがわからなくなってしまうことで、食べ物の好みが、まったく変わってしまう患者さんも見えます。今までは嫌いと言っていたものを平気で食べる方さえいるのです。
それ以外にも、患者さん自身が相当の悪臭を発していても平気な姿を見ることもあります。認知症患者さんが、診察室に入ってきたときの悪臭には以下の3つの原因があります
1) 風呂に入らない・・認知症になると風呂嫌いになる方が多く見えます。風呂好きであったのに、かたくなに入浴を拒否されます。私の患者さんでは、最高2年入浴されなかった方が見えます。
2) 服を変えない・・認知症になると身だしなみにもこだわらなくなります。何日も同じ服を着続けるので、臭ってきます。何を着てよいか分からなくなる“着衣失行”が原因でもあります。
3) 尿臭・・高齢になると、排尿後の始末がうまくできなかったり、そもそも尿失禁を繰り返している方が増えてきます。尿パッドや紙パンツを使ってもらえれば良いのですが、拒否される方みえます。臭いだけでなく、椅子が濡れてしまっている方さえいらっしゃいます。
以上より、すぐに次の患者さんに入ってもらえないほどの臭いのことも多々あります。そのため、診察室に消臭スプレーは必須です。もちろん、短時間に座られていた椅子を拭くことも当然です。
このような患者さんのにおいを感じるためには、私自身は基本的にマスクを使いません。早い段階で、患者さんの異臭に気が付くためです。認知症の兆候を見逃さないためには、鼻でも診察する必要があるのです。