専門医が推奨!「認知症にならないための歯科医選び」7つの知識とは

専門医が推奨!「認知症にならないための歯科医選び」7つの知識とは

私は、平成30年2月より内科クリニックで歯科衛生士さんを雇用し「医科歯科連携」の実践をしています。患者さんに内科の外来で歯科受診の重要性を説明すると、改めてかかりつけの歯科医を受診される方が少なくありません。

しかし、せっかく受診しても1〜2回の治療のみで終了してしまう歯科クリニックが大半なのです。なかには、受診後、定期的にメンテナンスをしてもらえる歯科医もありますが、全体の2〜3割かと思います。正直、この短期間で市内の頼りになる歯科クリニックさんが選別できたほどです。

歯科で定期的なメンテナンスを受けることは、歯周病を予防改善することになり、ひいては認知症の予防につながります。今回の記事では、月に1,000人の認知症患者さんを診察する長谷川嘉哉が、認知症にならないための歯科医の選び方をご紹介します。

目次

1.認知症は歯周病から、という研究報告がある

歯周病菌の毒素がアルツハイマー型認知症の原因とされる脳の「ゴミ」を増やし認知症の症状が悪化することが実験で証明されました。歯周病のマウスの脳内では、歯周病菌から出ている毒素や、免疫細胞が細菌を攻撃するために出すサイトカインが増殖。それによって、アミロイドβが作られる量が増えていたのです。つまり、歯周病の予防や治療が、アルツハイマー型認知症の発症や進行の抑制につながるのです。(「歯周病で加速するアルツハイマー病分子病態と認知機能障害」名古屋市立 大学大学院医学研究科 道川 誠教授ら )

The beta amyloid peptid, amyloid plaques, Alzheimer disease
サイトカインの増殖により「脳のゴミ」が増えるのです

2.歯周病予防は、定期的なメンテナンスが第一

歯周病予防には歯科でのメンテナンスを受けることをお勧めします。

「毎日歯磨きしていれば、虫歯や歯周病を防げる」と思っていませんか? しかし、全ての人が歯磨きだけで虫歯や歯周病を予防できるわけではありません。口の中の状態は、その人によって違うので、自分で行うブラッシングだけでは不十分です。歯周病対策にはいろいろな方法があります。しかし、残念ながら歯科受診に勝る対策はありません。

いかなる対策も評価がなければ意味がありません。歯磨きがうまくできているか? 生活習慣の改善が効果を上げているか? いずれも、歯科受診による評価が重要となるのです。評価の結果、効果があれば継続。効果がなければ修正する必要があるのです。そのためにも自分で漫然と対策を行なうだけではなく、歯科医による正確で客観的なチェックが必要なのです。認知症にならずに、一生使える脳を手にれたいならば、髪を切りに行くと同じ頻度、1~3ヶ月に一度は受診したいものです。

3.治療重視の歯科よりも予防歯科の時代へ

外来で患者さんに聞いても、歯が痛くならなければ歯科医に行かない人が多いようです。つまり歯が痛くなってようやく歯科に受診するのです。そのような患者さんが多いため、歯科医では治療が第一になってしまうのです。

しかし、アメリカやスウェーデンなどの先進諸国は違います。歯科受診の中心がメンテナンスです。アメリカやスウェーデンでは、歯が痛くなくても歯科医に行くのです。この違いの現れが、以下の2012年の厚生省国民健康白書統計にある80歳の歯の残存数を反映しています。

国名 残存歯数
スウェーデン 20本
アメリカ 13本
日本 9.8本

日本には、「年をとったら、歯を失うのが当たり前」と思っている人が多いですが、他の国では、80歳になっても自分の歯で噛めるように、歯を守るためにメンテナンスしているのです。

歯の残存数が多ければ多いほど認知症になりにくいことは、多くの研究で明らかになっています。そのためには、患者さん自身がメンテナンスの重要性に気が付くことが大事なのです。

4.「認知症になりにくい」予防歯科かどうか見極める5つのポイント

認知症にならないためには、定期な歯科医でのメンテナンスが必要ですが、それ以上に世の中に2〜3割しかない「メンテナンスに取り組んでくれる歯科医」にかかることが必要です。

4-1.ホームページは必須

今の時代、患者さんへの丁寧な説明は必須です。そのためには、ホームページで歯科クリニックの理念・取り組みを情報発信することは患者さんへの最低限の義務です。ホームページもない、あっても丁寧な情報発信をしていない歯科クリニックは論外です。

4-2.歯科衛生士がいるか?

歯科衛生士がいないような歯科医に受診してはいけません。従来の、歯が痛くなったら治療するという昔のスタイル。このレベルの歯科医には、そもそも歯科衛生士さんは不要です。歯科医師のレベルも低いと言わざる得ません。

歯科の開業医は全国で7万件程度と言われています。平成28年末現在の就業歯科衛生士数は123,831人、そのうち90%にあたる10万人程度が診療所で働いています。つまり、7万件ある診療所1件当たりの歯科衛生士の数は1.5人程度なのです。しかし、これはあくまで平均値であり偏在しています。メンテナンスを積極的に行っている歯科クリニックに歯科衛生士は集まっています。逆に、いまだに治療の助手程度にしか扱われていない歯科クリニックには、歯科衛生士は集まらないのです。


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Men subjected to dental hygiene and therapy
歯科衛生士さんがどれだけいるか、はわかりやすい指標です

4-3.チェアの数が認知症を予防する

できれば歯科クリニックの診療チェア数は5台以上のクリニックが安全です。実は歯科クリニックの診療チェア数の平均は3台です。しかし3台ではどうしても治療が中心になってしまい、メンテナンスが十分に行えません。

現在、全国の優秀な歯科医院ではメンテナンスを中心に、歯科医と同様に歯科衛生士も活躍していきます。結果、診療チェアを10台以上備えるような歯科クリニックが増えています。そうなると多くの患者さんがメンテナンスを受けるようになり、一生涯口から食事がとれるように歯が残り、結果として認知症も予防することにつながるのです。

4-4.できれば医療法人

メンテナンスを積極的に行うには、それなりの設備・人の雇用が必要になります。そのためには、歯科クリニックの経営的基盤が不可欠です。一般的には、多くの患者さんに支持されて年商が一億円を超えると個人立から医療法人になることが多いようです。2016年10月1日現在の資料では歯科クリニック68,940件のうち、医療法人は13,393件と約19.4%です。

不思議ですが、自分が医科歯科連携を始めて、積極的なメンテナンスをしてくれる歯科医院が2〜3割である、と感じた数字に近いのです。

4-5.マスクをとって説明をするか?

接遇を教える先生や歯科大学では、「患者さんに説明する時にはマスクを取って説明する」ように指導されるようです。しかし、実際の歯科医さんでは、なかなか実践されていないようです。しかし、私がお付き合いしている優秀な歯科医の先生は、必ずマスクを取って説明されます。一度気にしてみてください。

Senior male dentist in dental office
歯科に限らず、マスクをとって説明することが医師には求められます

5.認知症患者さんも歯科受診を

認知症になると、そもそも歯科受診ができないと考えられているご家族もいらっしゃいます。しかし認知症になっても、当院の歯科メンテナンスで症状が改善されることは私がいくつも体験しています。ぜひ若い時からメンテナンスの習慣を持ち、仮に認知症になっても歯科受診は継続してもらいたいものです。

5-1.社会性は残される

認知症患者さんは、「暴れたり、怒ったり、拒否する人がいるのでは?」と心配されます。しかし、認知症患者さんは、どれだけ症状が進んでも社会性は最後まで維持されます。そのため、当院でも100人を超える認知症患者さんで、歯科衛生士さんのメンテナンスを拒否された方は一人もいませんでした。

5-2.ときには虫歯を治療しないことも

歯科の世界では、虫歯があれば治療することが当たり前かもしれません。しかし、当院のケースでは敢えて虫歯を治療しないで様子観察することもあります。明らかな症状がない場合は、メンテナンスを中心とするのです。我々が診察する高齢者の場合は、癌があっても手術や治療をしないで様子を見ることが多々あります。その考えからすれば、虫歯を様子観察することも不思議ではないのです。

5-3.メンテナンスによる心地よさは認識する

気難しそうな認知症患者さんでも、メンテナンス後の口腔内の心地よさを経験すると、拒否どころか楽しみにされる方さえいらっしゃいます。感情を司る扁桃核が刺激されることで認知症の症状自体を落ち着かせることもあるのです。

Dental problems
家では不調でも、外の世界に出かけるとちゃんとしている患者さんがほとんどなのです

6.歯科医の方へ。認知症患者さん治療の心がまえとは

歯医者さんとしても、認知症患者さんの対応に慣れていないこともあるようです。しかし健康長寿のためにはぜひ認知症患者さんも受け入れていただきたいのです。

6-1.多くの歯科医は、介護者を必要とする患者さんに慣れていない

歯科を受診する場合、多くの方は患者さんが一人で受診されます。ですので付き添いがついてくる認知症患者さんのケースに慣れていない歯科医師さんも多いかと思います。

ちなみに、認知症専門外来の当院では、大多数はご家族が付き添われます。歯科診療ユニットのそばに家族が付いてくるようなことも想定していただきたいと思います。上記したとおり暴れたり、言うことを聞かないという患者さんはほとんどいません。思ったより普通に診療できると思います。

6-2.一人で受診できない患者さんが埋もれている

歯科医は過当競争と言われています。しかし、当院の患者さんなどはほとんど歯科医に受診していません。ということは、一人で受診できない膨大な患者さんが世の中に存在するのです。ぜひ、歯科医の方にも目を向けていただきたいものです。

6-3.信頼を得ると、介護者も同時に受診される

患者さんが、しっかりと治療・メンテナンスを受けている姿を見ると介護者も当たり前のように歯科の患者さんになってくれます。これが紹介の輪を作ることになり、歯科クリニック経営を安定させるのです。

7.まとめ

  • 認知症を予防するためには歯科クリニックでの定期的なメンテナンス必須です。
  • しかし、メンテナンスをしっかりやってくれる歯科クリニックは全体の2-3割です。
  • 優秀な歯科クリニックを見つけるためには、HP、歯科衛生士、チェア数、医療法人成りを一つの目安にしてみましょう。
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