【警鐘】見えない敵“果糖液糖”が糖尿病を呼ぶ

【警鐘】見えない敵“果糖液糖”が糖尿病を呼ぶ

認知症専門医として日々診療を行っている中で、糖尿病を抱える患者さんと多く接する機会があります。これは決して偶然ではありません。糖尿病は、脳血管障害を含む様々な合併症を引き起こし、アルツハイマー型認知症や血管性認知症のリスクを著しく高めることが、数多くの研究で示されています。

最近、ある糖尿病患者さんとの会話の中で非常に興味深い話がありました。その方は、「普通のうなぎ屋でうな重を食べても血糖値はあまり上がらないのに、スーパーやファーストフードのウナギを食べると、急激に血糖値が上昇する」とおっしゃっていました。その原因として、その方は「果糖ブドウ糖液糖(通称:果糖液糖)」の使用に注目されていました。実は、これは大変重要な示唆を含んでいます。

目次

1.果糖液糖とは何か?

果糖ブドウ糖液糖とは、トウモロコシなどのデンプンから作られる人工甘味料で、清涼飲料水や加工食品、安価なタレやドレッシング、冷凍食品など、多くの市販製品に使用されています。特にコストが安く、甘味が強いため、外食産業や加工食品業界で広く使われています。しかし、この「安価で手軽な甘味料」には大きな代償があります。

2.果糖液糖がもたらす血糖の急上昇

果糖液糖は、単糖類である果糖とブドウ糖を主成分としています。ブドウ糖は直接血糖値を上昇させ、果糖は肝臓で代謝されますが、過剰摂取によりインスリン抵抗性を悪化させる可能性があると言われています。これは糖尿病の進行だけでなく、非アルコール性脂肪肝、メタボリックシンドローム、さらにはアルツハイマー病の一因とも考えられている「脳インスリン抵抗性」にもつながるおそれがあります。

患者さんが言及された「ファーストフードのウナギで血糖値が急上昇する」という体験は、こうした果糖液糖の作用によるものと考えられます。市販のウナギのタレには、果糖液糖が使われていることが多く、しかも加熱によりさらに代謝に悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。

3.果糖液糖はどこに潜んでいるか?

果糖液糖は、以下のような食品に多く含まれています。

  • 清涼飲料水(スポーツドリンク、炭酸飲料)
  • 菓子パン、スナック菓子
  • 市販の焼き肉のタレや照り焼きソース
  • 冷凍食品(とくに調理済み惣菜)
  • 安価なうなぎのかば焼き
  • ヨーグルトや乳飲料(甘味付き)

つまり、糖尿病予防や管理を意識していても、日常生活の中で無意識のうちに果糖液糖を摂取してしまっていることが多いのです。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


4.認知症リスクとの関係

糖尿病自体が認知症のリスクを高めるということはよく知られていますが、果糖液糖の過剰摂取による血糖の乱高下やインスリン抵抗性の増悪もまた、脳の慢性的な炎症状態や血流障害を引き起こし、認知機能の低下に繋がる可能性があります。特に高齢者では、こうした「見えないリスク」が蓄積され、ある日突然、大きな問題となって現れることもあります。

5.最後に

私たちは、医師としての立場だけでなく、一人の生活者としても、日々の「食」にもっと注意を払うべき時代に生きています。成分表示を確認する、なるべく手作りの食事を選ぶ、そして「安くて便利な食品」の裏にあるリスクに目を向けることが大切です。果糖液糖は決して「毒」ではありません。しかし、過剰に、無自覚に摂取し続けることは、糖尿病の悪化や認知症のリスク増大につながる可能性があります。身近な食品の選び方が、未来の脳と身体の健康を左右する——そのことを、改めて多くの方に知っていただきたいと思います。

 

長谷川嘉哉監修シリーズ