平成26年11月1日は、東濃信用金庫の行員さんに向けて、『専門医が教える遺言作成のすゝめ』という講演をしました。この日は、社団法人『東海相続支援コンサルティング』の代表としての立場です。講演は、最初に認知症の基礎知識を学んでいただき、その後に“私が遺言作成で学んだ経験”を認知症専門医の切り口でお話しさせていただきました。
認知症には、 “早期認知症”という前段階があります。この段階では日常生活は正常、表面上も認知症とは思えません。しかし、“早期認知症”は前頭葉機能が低下しています。前頭葉機能とは、簡単に言うと、論理的思考と理性のコントロールの低下です。どれだけ説明しても理屈が通らず、最後は感情の赴くままに怒り出してしまいます。最近、スーパーやレストランで怒っている老人を見かけませんか?彼らは、まさに前頭葉機能が低下しているのです。そのあたりで、行員さんたちも納得顔です。銀行の窓口にはそういった方がいっぱいいるのです。ご説明しても納得できず最後は怒ってしまう。それでも銀行としては頭を下げるしかないのです。このような“早期認知症”の患者さんは65歳以上の7人に1人いるのですから困ったものです。『上司も前頭葉機能が低下しているような気がするのですが?』と耳打ちされる方も見えました。部下も大変です。
後半は、遺言の重要性。そして認知症になると遺言が作成できないこと。人間が死ぬときは、家族に言葉を残すことはできないこと。そのため遺言は、遺産の分配以上に“付言”で家族への言葉を残すことが目的であることをお話ししました。皆さん、大変熱心に聞いてくださいました。これからも機会があれば、異なった分野での、認知症の知識の普及および遺言作成の本当の意味を伝えていきたいと思います。