先回まで75歳以上で介護を必要とする人が29%、高齢者の運転の問題を指摘しました。一方でこんな記事もありました。『日本老年学会は6月12日、65歳以上の高齢者の身体、知的機能や健康状態についての分析結果を発表した。最新の科学データを総合すると、「現在の高齢者は10~20年前に比べて、5~10歳は若返っていると想定される」と評価。』
知的機能については、認知症がなく、健康状態の良い高齢者の集団では、ほとんどの検査項目で60~70歳代の成績が向上し、2010年の70歳代は10年前の10歳程度若い人たちと同等の成績だそうです。また、病気にかかる割合についても、75~79歳の女性では脳卒中で治療を受けた割合が3分の1近くになるなど、脳卒中、心筋梗塞、骨粗しょう症で大きく減っているようです。この他にもアルツハイマー型認知症を除く、ほぼ全ての病気で低下傾向にあり、これに伴い、要介護認定率もほぼ全ての年代で低下しているようです。定期的な運動など生活習慣が改善したのが原因ではないかと指摘されています。 身体機能では、歩く速さや握力、片足立ちの時間などが各年代で向上していようです。
このように、多くの分野で、『現在の高齢者は10~20年前に比べて、5~10歳は若返っている』ことは、外来でも感じます。 昔は75歳というと”高齢”という印象でしたが、現在は就労している人さえいます。実際に、日本の65歳以上の就業者数が636万人と、過去初めて人口の1割を超えたことが話題となっています。働く事で人との交流がうまれ、社会保障も受けられるという事で、もっと元気な老人が増えればとても喜ばしい事です。
しかし、以上の様な記事の中でも、認知症は減っていないようです。専門医として、認知症予防・改善には挑戦し続けたいと思います。