ゴルフの後や、重い荷物を持った後などに、少し手がしびれた感じを自覚することはよくあるものです。また、味の濃いものを食べた後に、唇がしびれることも経験するものです。そのどちらも多くの場合は問題はありません。しかし、これらの症状が、突然、同時に起こると手掌・口症候群といって脳梗塞を発症している可能性がとても高くなります。脳神経内科医の長谷川嘉哉が解説します。
目次
1.手掌・口症候群とは?
手掌・口症候群は、ある日突然起こります。左右どちらかの口の周りと、同じ側の手がしびれます。この症状は、脳の中の視床という部位の梗塞で発症します。脳神経内科専門医であれば、問診だけで診断がついてしまいますが、一般の先生方はご存じない方が多いようです。
2.診断方法は?
症状だけでも診断はつくのですが、確定診断のためには画像検査が必要です。
2-1.頭部CTでは映らないことも多い
手掌・口症候群による視床の梗塞は、発症からの時間が短かければ短いほど頭部CTでは分かりにくいものです。一般的に発症から6時間経過すれば頭部CTでも映るのですが、病変も極めて小さいため、病気を知らずに画像だけ見ると見落とされることが多くなります。
2-2.発生直後はCTで映らない場合も。疑わしい場合はMRIが必須
そのため、手掌・口症候群が疑われる場合かつ、頭部CT上でも病変がはっきりしない場合は、早急に頭部のMRI検査が必要になります。MRI検査であれば、発症からの時間が短くても描出されます。
3.予後は?
手掌・口症候群は病変も小さいため、生命的危険を伴うことは殆どありません。そのため予後も良好です。初めて手掌・口症候群を発症した時に、いわゆる言語障害や、片麻痺などの運動障害をいきなり起こす、ということはそれほどない、とお考えください。
ただし、視床に梗塞が起こったということは、再発時には、より大きな部位の梗塞が起こる可能性が高くなります。そのため、アスピリンなどの抗血小板療法で脳梗塞の再発を予防します。同時に、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常などの生活習慣病を認める場合は、その基礎疾患の治療も行います。アスピリンについては以下の記事も参考になさってください。