若年性アルツハイマーの初期症状、『頭痛』を見逃さないで

若年性アルツハイマーの初期症状、『頭痛』を見逃さないで

若年性アルツハイマーの患者さんは、認知症専門外来でもその頻度は少なく、その割合は1割もなく数%です。その上、高齢者のアルツハイマー型認知症に比べ発生時の症状が異なるため気が付かれること少なく、診断が遅れることさえあります。今回の記事では若年性アルツハイマー特有の初期症状について解説します。

目次

1.若年性アルツハイマーとは?

若年性アルツハイマーとは65歳未満で発症するアルツハイマー型認知症を言います。若年性と高齢者での認知症の病理的な違いはないため、ともに診断名に「アルツハイマー」がついています。しかし、病気の勢いが全く違います。高齢者のアルツハイマー型認知症は年単位で進行することが多いのですが、若年性アルツハイマーはときに月単位で進行することさえあるほど急激です。散歩に出て迷子になったり、自宅のトイレの場所が分からなくなって失禁してしまうほどに進行することも、若年性アルツハイマーにみられる症状です。

2.若年性アルツハイマーの初期症状のダントツは「頭痛」!

通常の高齢者のアルツハイマーの初期症状は、物忘れ、繰り返す質問、短期記憶障害、言葉が出ない、判断力の低下などです。

一方で若年性アルツハイマーの患者さんは当初は、頭痛を訴える方が私の経験では最も多いです。確かに、不安、不眠、抑うつ状態も訴えることがありますが、話をうかがうと慢性的な頭痛が根本であることが多いようです。

3.頭痛の特徴は?

一般的には頭痛は血管性と筋肉性の頭痛に分けられます。しかし、認知症の初期症状の頭痛はこのどちらでもない特有の特徴を持っています。頭痛については以下の記事も参考になさってください。

3-1.頭痛を常に自覚

患者さんの訴えによると、頭痛自体は常に自覚しているが、通常の生活ではガマンできる範囲だそうです。しかし、仕事などで頭を使う必要がある際、極度な緊張状態などになると頭痛の程度が悪化し、大声を出したくなるほどの痛みになるようです。もちろん、自制心でその衝動は抑えられるようです。しかし時に頭を抱え込んで動けなくなることさえあるようです。

3-2.治療薬は通常の鎮痛剤が効果あり

頭痛に対する薬は片頭痛の薬は効果がなく、通常のロキソニンやSG顆粒のような鎮痛剤で十分効果があります。ただし、1日1回程度の頓服では間に合わないことが多く、患者さんの希望としては1日に3回程度は服用を希望されます。


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3-3.頭痛の原因は?

教科書的には、認知症における頭痛の原因は、「脳の血流が低下することで、脳の細胞に十分な栄養が行きわたらず、頭痛やめまいが生じる。」と説明されていますが、専門医としては疑問が残ります。どちらかというと脳の慢性炎症が原因ではないかと考えています。従来から認知症は脳の慢性炎症が一因と言われていましたが、高齢でおこるアルツハイマーに比べ若年性アルツハイマーには、特にその要素が強いと考えられます。そのため、通常の鎮痛剤は頭痛の改善に効果があるのかもしれません。

4.積極的に鎮痛剤を

通常医師としては、頭痛に対しての鎮痛剤使用は過剰にならないように気をつけたいものです。しかし、若年性アルツハイマーの患者さんの場合は、頭痛により生活の質が著しく低下します。そのため、ロキソニンであれば1日3回、SG顆粒についても1日3回程度を限度とした使用を行っています。種類については、患者さんにどちらが効果あるかによって選択してもらっています。どちらも効果がある場合は、交互に使用してもらうこともあります。

以前より、「慢性関節リウマチ患者さんは、消炎鎮痛剤を継続的に投与されているため、アルツハイマー病を発症しにくい」と報告されています。若年性アルツハイマーの原因の一つが、脳の慢性炎症と考えると、鎮痛剤の使用は頭痛だけでなく認知症の根本原因にまで期待が持てるのかもしれません。

5.まとめ

  • 高齢者と異なり、若年性アルツハイマーの患者さんは当初は、頭痛を訴える方が最も多いです。
  • 50歳前後の方が、頻回に頭痛を訴え、特に頭を使う作業で悪化するような場合は一度認知症の検査もお薦めです
  • 若年性アルツハイマーの診断がついてから頭痛を訴える場合は、積極的な鎮痛剤の使用が生活の質の低下を予防するだけでなく根本原因の改善につながっているかもしれません。
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