天声人語(新聞コラム)を書き写して認知症予防!理由を専門医が解説

天声人語(新聞コラム)を書き写して認知症予防!理由を専門医が解説

認知症専門外来では、よくご家族から「薬だけでなく何か認知症の改善・予防に効果的なことはありませんか?」という質問をいただきます。そんな時にお勧めしているのが、新聞の一面のコラムの書き写しです。コラムといえば朝日新聞の天声人語が有名ですが、どこの新聞でも構いません。

「ただ書き写すだけで?」と思われがちですが、脳の働きからみても多くの効果があります。今回の記事では、認知症専門医である長谷川嘉哉が、天声人語を書き写すことが認知症の改善・予防になる理由を解説します。

1.天声人語に代表される「一面のコラム」とは?

天声人語とは、朝日新聞の一面のコラムです。もちろん、他の新聞にも見られます。読売新聞は「編集手帳」、毎日新聞は「余録」、中日新聞は「中日春秋」、日本経済新聞は「春秋」と呼ばれています。

内容は、最近のニュース、話題を題材にして各新聞の論説委員が執筆し、社説とは異なる角度から分析を加えています。天声人語では特定の論説委員が一定期間「天声人語子」として匿名で執筆しているそうです。文字数は、おおよそ600文字前後で書かれています。

*社説:新聞などに掲載される論説記事の一つで、時事のさまざまな問題に対し社としての意見や主張が書かれています。

Reporters at work
経験豊富な各社を代表する文章の専門家が執筆しています

2.書き写すとは?

昔から、学生に天声人語を書き写すことは推奨されていました。単に600文字程度のコラムを書き写すことに何か意味があるのでしょうか?

2-1.集中力が必要

書き写すとは、天声人語を読み、ノートに目を移して書きます。600文字を書き写すには、初めての場合30分はかかりますから、それをひたすら繰り返します。そのため、自然に集中力がついてくるのです。

2-2.インプットとアウトプットのバランス

情報化の現代は、インプットされる情報に偏りすぎています。インプットにだけ偏ると、時間がたつにつれて、情報は忘れ去られてしまいます。インプットされた情報は、アウトプットされることで初めて記憶として定着するのです。

天声人語を書き写すには、まず文章を読むことで情報をインプットします。そして、書くという行為で情報をアウトプットするのです。書き写すことで、情報のアウトプットとインプットのバランスがとれ記憶としても定着するのです。

2-3.ワーキングメモリーが鍛えられる

ワーキングメモリーとは、短い時間に心の中で情報を保持し,同時に処理する能力のことを指します。書き写すとは、新聞の記事を読んで記憶に保持しながら、書き写すという行為を行います。そのため、ワーキングメモリーが低下していると、一度に記事を保持する文字数が少なくなるため、とても時間がかかります。逆に、書き写しを繰り返すことでワーキングメモリーが鍛えられ、一度に保持できる文字数が増えることから、書き写しにかかる時間が短縮されます。

ちなみに、初めは600文字の書き写しに30分程度かかっていたものが、慣れてくると20分程度にまで短縮されることが多いようです。

Use your brain
インプットだけでは記憶は定着しにくいです

3.天声人語を書き写すことの効果

天声人語を書き写すと、具体的には以下のような効果が認められます。

3-1.忘れていた漢字が書けるようになる

最近は、ワープロ、パソコン、携帯など文章を入力する場合、漢字は候補から選択するだけです。そのため、いざ漢字を書こうとすると、漢字が書けない自分に驚いてしまいます。その点、どんな難しい漢字でも書き写すことで、実際に手を動かすことで漢字が書けるようになるのです。

3-2.文章力が上がる

昔から、「名文を書き写すことが、遠回りのようで一番近い文章上達法」と言われています。何しろ、各新聞の一面のコラムは、選ばれた記者による名文です。書き写すことで、文章の「型」や「展開」の頭のなかでの構築が理解できるようになります。そのうえ、感情移入すべきところや結論をどこでどう書けばよいかも徐々に理解できるようになるのです。

3-3.情報が定着する

ただ、新聞をよんだり、テレビを見ても大量の情報を入れても、垂れ流しで定着しません。書き写すことで、記憶として定着し、徐々に知恵へと昇華するのです。

*昇華:物事が一段上の状態に高められること。

4.学生だけでなく50歳を超えたらお勧め

このような書き写すという行為は、確かに学生にはとても有効です。しかし、それ以上に加齢により前頭葉機能が低下しつつある50歳以上の方にこそ効果があるのです。ちなみにワーキングメモリーは前頭葉機能の一つで、加齢により徐々に低下することが分かっています。

個人的な経験ですが、私の父親は84歳ですが30年近く天声人語を毎日書き続けています。現在も認知機能障害はなく、身体もとても元気で、ゴルフのエージシュートを20回以上達成しています。

*エージシュート(Age-Shooting):ゴルフの1ラウンド(18ホール)ストロークプレイを、自身の年齢以下の打数でホールアウトすること。

Happy senior couple playing golf with palms in background
趣味を長く楽しむためには脳の健康も大事です

5.まとめ

  • 新聞の一面のコラムを書き写すことは、集中力、インプットとアウトプットのバランス、ワーキングメモリーの観点からもおすすめです。
  • 継続することで、漢字が書けるようになり、文章力も上がり、情報を知恵にまで昇華することができます。
  • 学生だけでなく、50歳を超えたらお勧めです。
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