今年は正月のお休みが長かったためか、休み中に高熱を発症、救急外来を受診された患者さんが多くいらっしゃいました。コロナと診断された方、インフルエンザと診断された方、いずれでもないと診断された方と多様でした。
その中にもすぐに解熱した患者さんだけでなく、熱が長引き体調を崩された患者さんもいらっしゃいました。実は、これには理由があります。多くの医療機関では、コロナとインフルエンザのウイルス感染の診断だけにとらわれ、細菌感染の鑑別がなされていません。そのため細菌感染であれば行うべき抗生剤治療が行われないため熱が下がらず、長期にわたって体調を崩すことになるのです。
医療法人ブレングループでは、発熱患者さん全例に対して、CRP測定を行うことで細菌感染も鑑別しています。今回の記事では、高熱の患者さんに対して、コロナとインフルエンザの検査以外にCRP測定が重要な理由を認定内科専門医の長谷川が解説します。
目次
1.CRPとは?
CRPは、体内で炎症が起こると肝臓から分泌されるタンパク質で、炎症の程度を示す指標として広く用いられています。ウイルス感染の際はCRP値が比較的低いことが多いのに対し、細菌感染の場合はCRP値が高くなります。このため、高熱の患者さんに対してCRP検査を行うことで、細菌性肺炎などの重篤な感染症を否定する手助けとなります。
但し、測定機械がかなり高価なため、開業医では所有していないことが多いです。当院では機械を導入しているため、5分程度でCRPが測定できます。通常、CRPがすぐに測定できる環境で働いていると、測定できない医師会の休日診療所では相当ストレスになります。
2.CRPが上昇するケース
CRPの正常値は、通常0.3mg/L以下ですが、5.0mg/L以上を超えると細菌感染の合併を疑って、抗生剤治療が必要となります。この状態で、抗生剤を加えないと、自然治癒には相当時間がかかります。なお、CRPが上昇するケースは以下の3つのケースです。
2-1.インフルエンザと細菌感染の合併
インフルエンザと診断されて、抗ウイルス剤を処方されて安心してはいけません。細菌感染を合併しているか否かをCRPの検査で否定する必要があります。なにしろ1918年に起きたインフルエンザパンデミックによる死亡者の約50%から70%は、直接的なインフルエンザウイルス感染によるものではなく、二次的な細菌性肺炎が原因であったとされています。そのため当院では細菌感染の合併が疑われる場合は、抗ウイルス剤に抗生剤を追加します。
2-2.コロナ感染と細菌感染の合併
インフルエンザと同様に、コロナ感染でも、細菌感染の合併を否定する必要があります。若い患者さんの場合、抗ウイルス剤を投与することは殆どありませんが、CRPが上昇している場合は、抗生剤の投与が必要です。この対応がされていない患者さんが、回復まで時間がかかっているようです。
2-3.細菌感染単独の場合
インフルエンザもコロナ感染も否定されて、CRPが上昇しているケースです。この場合は、抗生剤の治療を単独で行います。ただし、インフルエンザの迅速抗原検査では偽陰性率は、約20%から30%程度、コロナウイルスの検査キットによる偽陰性率は、偽陰性率は約15%から30%とされています。つまり、陰性でも実は感染しているケースがかなりあるのです。そのため、同居家族の感染状況から、感染が強く疑われる場合、特に高齢者などでは抗ウイルス剤の使用も検討します。
3.まとめ
- 高熱が出た場合は、インフルエンザとコロナの迅速キット以外にCRPの測定が必須です。
- CRPが高値の場合、インフルエンザとコロナの感染の有無に関係なく抗生剤の治療が必要です。
- インフルエンザとコロナの迅速キットは、双方とも30%程度の偽陰性があることを忘れてはいけません。