「晴れのシーンを撮る日に、雨が降ったら?」は、映画監督・脚本家である飯塚健さんが、映像制作の現場で体験してきた数々の「想定外」を通して、仕事や人生に通じる大切な考え方を語った一冊です。
タイトルが示す問い――「晴れのシーンを撮る日に、雨が降ったらどうするのか?」は、そのまま私たちの日常にも当てはまります。仕事でも人生でも、計画通りに進むことの方が少ないものです。むしろ、うまくいかない場面にどう対応するかで、その人の力量が問われます。本書は、そのことをとても現実的かつ前向きに教えてくれます。
目次
1.「失敗」は現場で起きるのではなく、思考停止で起きる
映画やドラマの撮影現場では、どれほど準備を重ねても、天候や役者の体調、時間や予算など、コントロールできない要素が必ず発生します。晴れを想定していた日に雨が降る――それは決して珍しいことではありません。
多くの場合、こうした出来事は「トラブル」「失敗」と捉えられがちです。しかし飯塚さんは、そこで思考を止めないことの重要性を繰り返し語ります。
雨は消すべき障害ではなく、使い方次第で表現を深める材料にもなる。そうした視点の切り替えこそが、プロフェッショナルの条件なのです。
2.「できる俳優」は、状況に文句を言わない
本書を読んでいて印象的なのは、「できる俳優」の共通点が自然と浮かび上がってくる点です。その代表例として思い浮かぶのが、俳優の山田孝之さんです。山田孝之さんは、台本通りに演技を再現するだけの俳優ではありません。現場の空気、天候、共演者の芝居、監督の意図――そうした要素を瞬時に読み取り、その場に最もふさわしい演技へと自然にシフトできる俳優として知られています。
予定が崩れたときに不満を口にするのではなく、「この条件なら、どう表現できるか」を考える。濡れた服や足元の不安定さすら、役の感情として取り込んでしまう。こうした姿勢が、現場で圧倒的な信頼を得る理由なのだと、本書を通してよく分かります。
3.即興ができる人ほど、準備をしている
飯塚さんは、「準備」と「即興」は対立するものではないと述べています。むしろ、徹底した準備があるからこそ、即興が成立するのです。
山田孝之さんのような俳優が強いのは、役の背景や物語の流れを深く理解しているからです。だからこそ、想定外の出来事が起きても、演技の軸がぶれません。その結果、予定外の演技が名シーンになることもあります。
これは俳優に限らず、ビジネスの現場でも同じです。場当たり的な対応と、準備に裏打ちされた柔軟な対応は、似ているようで本質的にまったく違います。
4.コントロールできないものを嘆かない
本書で一貫して語られているのは、「コントロールできること」と「できないこと」を切り分ける姿勢です。
天候や他人の感情、社会の流れは変えられません。しかし、自分の受け止め方や行動は変えられます。
予定が狂ったときに愚痴を言うのか、それとも「今ある条件で最善を尽くすか」。その選択の積み重ねが、仕事の質や人生の手応えを大きく左右するのだと、本書は教えてくれます。
5.計画が崩れた瞬間が、本当のスタート

『晴れのシーンを撮る日に、雨が降ったら?』は、失敗を避けるための本ではありません。むしろ、失敗に見える出来事をどう意味づけし、どう活かすかを教えてくれる本です。計画通りにいかない瞬間こそが、凡庸さとプロフェッショナリズムを分ける分岐点なのかもしれません。静かですが力強いこのメッセージは、仕事に向き合うすべての人にとって、大きなヒントになる一冊だと感じました。

認知症専門医として毎月1,000人の患者さんを外来診療する長谷川嘉哉。長年の経験と知識、最新の研究結果を元にした「認知症予防」のレポートPDFを無料で差し上げています。