インフルエンザに有効な麻黄湯はコロナウイルスが疑われるときにも有効です。インフルエンザは風邪とは異なり、突然の発熱、悪寒、筋肉痛を特徴とします。医療機関を受診して、迅速キットによる検査でインフルエンザの診断がなされれば、抗インフルエンザ薬が処方されます。しかし、現実にはキットの検査で陰性であることもあります。そのような場合は、患者さんの状態に応じて薬を使い分けます。そんなときに有用な薬が漢方の麻黄湯です。インフルエンザに漢方薬? と思われるかもしれませんが、状況によってはとても効果的です。今回の記事では、認定内科専門医の長谷川嘉哉が、インフルエンザ治療において麻黄湯を使用するポイントを紹介します。
目次
1.麻黄湯のインフエンザに対する効果とは
漢方薬の麻黄湯は、インフルエンザに保険適応があります。抗インフルエンザ薬とは異なり、抗ウイルス作用に加えて宿主側の免疫応答を調整することでも効果を発揮すると報告されています。以下のような報告例もあります。(The efficacy of ma-huang-tang (maoto) against influenza(Saita M, Naito T, et al. Health 3,2011;300-303)
(1)麻黄湯のインフルエンザ感染後の解熱作用は、抗ウイルス薬と同等だった。
(2)麻黄湯は、インフルエンザ感染後の頭痛、筋肉痛、咳、倦怠感の自覚症状において、抗ウイルス薬と同等の効果が認められた。
(3)関節痛に関しては、タミフル単独群よりも有意な改善効果が認められた。
2.麻黄湯の構成生薬
漢方薬は、自然の草や木からとった「生薬」の組み合わせでできています。麻黄湯は、主薬の「麻黄」を中心に、下記の4種類の生薬からなります。
- 麻黄:発汗・発散作用をもちます。交感神経刺激薬のエフェドリン類が含まれます。この成分は、西洋医学の気管支拡張薬と同様の作用を示し、咳や喘鳴をおさえます。
- 桂枝:麻黄との組み合わせで発汗・発散作用の増強効果があります。
- 杏仁:麻黄の補助として働き、咳や痰の緩和をします。
- 甘草:急性の症状を緩和し、上記の生薬間の調和をはかります。
3.麻黄湯を使いたい時とは?
インフルエンザが流行しているときに、麻黄湯は以下のようなケースで使用すると効果があります。
3-1.一過性の発熱を認め、解熱、倦怠感が残る場合
若い健康な方に多いケースです。周囲にインフルエンザの患者さんがいて、突然38度以上の高熱が出現。高熱は半日で解熱しますが、倦怠感や筋肉痛が残るようなケースです。この場合、インフルエンザの感染が強く疑われますが、熱を出すことでウイルスを撃退したため、熱も下がっているのです。このようなケースでの抗インフルエンザ薬は不要です。ただし、倦怠感や筋肉痛を和らげる目的で麻黄湯を使用すると効果があります。
3-2.検査キットで陰性だが、インフルエンザが否定できない
インフルエンザの症状もそれほど強くなく、検査キットも陰性。抗インフルエンザ薬を投与するほどの重症感もない場合に、麻黄湯を使用します。麻黄湯の抗ウイルス作用および宿主側の免疫応答の調整力は結構効果があります。
3-3.インフルエンザが陽性で、筋肉痛が強い場合
インフルエンザの検査キットが陽性の場合は、抗インフルエンザ薬を使用します。その中でも、頭痛、筋肉痛、関節痛、倦怠感の症状が強い場合は、麻黄湯を併用することで症状を和らげることができます。
4.検査が陰性でも抗インフルエンザ薬を使用する場合
インフルエンザの検査キットが陰性でも、抗インフルエンザ薬を使用することもあります。
4-1.検査キットには偽陰性がある
本当は病気にかかっているのに、陰性の結果が出てしまう場合を「偽陰性」と言います。インフルエンザキットで言えば、本当はインフルエンザなのに陰性と出ることがあるのです。発症から6時間前後であれば、インフルエンザA型では10%、インフルエンザB型では20%の偽陰性があると言われています。
4-2.症状が典型的なのに陰性、かつ細菌感染が否定された場合
突然、高熱が出現し、頭痛、関節痛、筋肉痛などの症状が出現した場合、インフルエンザキット検査と同時に、緊急でCRPと白血球を測定します。症状が典型であれば、インフルエンザキットが陰性で、CRPの数値から細菌感染が否定されれば、積極的に抗インフルエンザ薬を使用します。
*細菌感染:血液検査で、CRP(C反応性蛋白:体内で炎症反応や組織の破壊が起きているときに血中に現れるタンパク質)や白血球が高値になります。インフルエンザは細菌感染でなく、ウイルス感染です。
4-3.周囲・家族にインフルエンザが発症している場合
症状が典型的で、周囲や家族にインフルエンザの患者さんがいる場合は、積極的に抗インフルエンザ薬を使用します。ただし、この場合もCRPと白血球を測定することで細菌感染を否定する必要があります。
5.麻黄湯の服用方法
麻黄湯は以下のように服薬してください
5-1.用法・用量
成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用します。通常、3-4日は服用を継続します。前述した通り、解熱後も筋肉痛や関節痛が残ることが多いからです。医師が処方する場合は、ツムラ27番が麻黄湯です。一袋に2.5g入っているので、1回に一袋服用します。
5-2.副作用
麻黄湯は麻黄が5gと、多く内服されています。麻黄はエフェドリンと言う物質に体内で変化します。このエフェドリンは心身の活性効果がありますので、眠気などのない感冒薬として便利です。しかし、高血圧や虚血性心疾患、不整脈などの地病を持っている人は、慎重な内服が必要になります。医師の診察のもとで処方を受ける事が大事です。
5-3.インフルエンザ以外にもこんな時に服用も
麻黄湯は発汗作用があり、体の熱や腫れ、あるいは痛みを発散して治します。病気の初期で、まだ体力が十分ある人に適しています。一般的には、カゼのひき始めでゾクゾク寒気がし、発熱やふしぶしの痛み、頭痛などをともなうときに服用すると効果があります。
6.まとめ
- 麻黄湯は漢方薬ですが、抗ウイルス作用に加えて宿主側の免疫応答を調整することでインフルエンザに保険適応があります。
- 頭痛、筋肉痛、関節痛、倦怠感の症状が強い場合は、抗インフルエンザ薬に麻黄湯を併用することで症状を和らげます。
- インフルエンザ以外でも、風邪の初期で熱や関節の痛み、痛頭などを伴うときに服用すると効果があります。
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