パーキンソン病のリハビリとは・薬の服用を減らす方法を専門医が解説

パーキンソン病のリハビリとは・薬の服用を減らす方法を専門医が解説

パーキンソン病のリハビリについて調べられている方がおおぜいいます。

少しでも日常の生活を取り戻すことができるように、患者さんに最適なリハビリ方法があるのではないかと考えるからだと思います。

医師の立場としても、まずパーキンソン病と診断すると、薬を処方します。しかし多くの場合、動きが悪くなるにしたがって、薬の量も増やさざるを得なくなるものです。そんな時、ご家族としても「薬だけ飲んでいれば良いの?」「いずれ薬が効かなくなるのでは?」「薬の副作用は大丈夫?」と心配になっていくのです。

正直なところ、パーキンソン病治療薬の種類と量には、限界があります。そのため、専門医としてもできるだけ薬の使用や増量は最小限にしたいものです。そこでぜひ行なっていただきたいものが、リハビリです。リハビリを有効に行えば、薬を増やさなくても動きを改善することができるのです。今回の記事では、パーキンソン病を専門とする脳神経内科医の長谷川がパーキンソン病のリハビリについてご紹介します。

目次

1.パーキンソン病とは?

私たちが体を動かす際に、運動の調節を指令しているのが神経伝達物質の「ドパミン(ドーパミンとも)」です。ドパミンは、脳の奥の「黒質」にある「ドパミン神経」でつくられています。パーキンソン病になると、このドパミン神経が減少し、ドパミンが十分につくられなくなります。

Dopamine-pathway
ドパミンの分泌経路。分泌量が減ると運動に障害をもたらします

その結果、運動の調節がうまくいかなくなり、体の動きに障害があらわれるのです。パーキンソン病では、主に、手足がふるえる(振戦)、動きが遅くなる(無動)、筋肉が硬くなる(固縮)、体のバランスが悪くなる(姿勢反射障害)といった症状がみられます。 これらによって、顔の表情の乏しさ、小声、小書字、屈曲姿勢、小股・突進歩行など、いわゆるパーキンソン症状といわれる運動症状が生じます。

parkinson-symptoms
パーキンソン病の代表的な症状

2.パーキンソン病に対するリハビリとは

パーキンソン病の主な治療として、減少しているドパミンを補充して症状を軽くする方法が行われます。病気の原因が不明なので、薬物治療だけで完治することは難しいため、リハビリ等を適宜追加します。

2-1.症状を緩和することができる

薬物治療だけで、一日中身体を動かさないでいると運動機能はどんどん低下してしまいます。そのため、リハビリを定期的に行うことで、症状の改善がはかられ、症状の進行を最小限に抑えられるのです。

2-2.薬の増量のペースを遅らせることができる

残念ながらパーキンソン病は徐々に進行していく病気です。使える薬の種類も、量にも限界があります。そのため、主治医としては、できるだけ薬の増量は、遅らせたいのです。薬物療法にリハビリを追加することで、薬の増量のペースを遅らせることができるのです。

2-3.精神症状を改善する

パーキンソン病の患者さんは、運動機能の低下だけでなく、やる気が出ない等のうつ症状を合併しがちです。あまりにうつ症状がひどいと抗うつ剤も検討したくなるのですが、この副作用として運動機能が悪化するため避けたいものです。そんな時に、身体を使ったリハビリを追加すると、精神症状の改善が図られるのです。

患者さんは、リハビリ等に消極的になりがちですが、周囲の家族が働きかけ何とかリハビリに参加してもらいましょう。結果として、やる気も高められるのです。

Senior Woman Comforts Husband Suffering With Parkinsons Diesease
運動しにくいからといって閉じこもっていては、悪化させる一方です

3.パーキンソン病でリハビリが最も必要な人は?

パーキンソン病の進行度が軽度の場合には、特に積極的にリハビリを行いましょう。身体が動く段階でこそ積極的に取り組むことで進行を抑えることができるのです。中等度以上に進行した場合でも、現在の体の状態を維持したり、転倒予防のためにリハビリが適しています。

パーキンソン病は、40歳代からも発症します。通常、パーキンソン病自体で寿命は短くなりません。従って、特に年齢が若い方の場合は、罹病機関が長くなるからこそ、リハビリを早期に取り入れ、継続して行うことが重要です。

4.パーキンソン病のリハビリで最も効果的なパワリハ

ブレイングループでは、5カ所のデイサービスでパワーリハビリテーション(以下パワリハ)を取り入れ、老化や脳血管障害後遺症の方々に効果を発揮しています。その中でもパーキンソン病には、特にこのパワリハが著効します。パーキンソン病患者さんは、病気に対する情報収集に熱心な方が多く、自身で探してパワリハの施設を見つけてくるほどです。


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4-1.パワリハとは?

パワリハは、老化や器質的障害により低下した身体的・心理的活動性を回復させ、自立性の向上とQOL (クオリティ・オブ・ライフ)の高い生活への復帰を目指すリハビリテーションの新しい手法です。6機種のマシントレーニングを中心とした運動プログラムであり、各地で目覚ましい成果を上げています。

4-2.パーキンソン病に対するパワリハの効果

パワリハがパーキンソン病に著しい効果を示す理由としては、神経筋の接合部から大量のドーパミンが分泌され、パーキンソン病によるドーパミンの欠乏状態を改善するからだと考えられています。ある意味、パワリハを行うことで、身体の内部から薬を作り出すようなものなのです。副作用の心配もない、優れた治療と言えるのです。

4-3.負荷は入浴程度

パワリハは、マシントレーニングを軽負荷で行い、全身各部の使っていない筋を動かすことにより効果が得られます。よって筋力強化を目的としたトレーニングではありません。パワリハというと身体の負荷を心配される方あ多いのですが、入浴と同等の負荷ですので、全く心配はありません。

4-4.パワリハができる場所

パワリハは、全国多くの場所で取り入れられています。デイサービス、デイケア、市町村によっては公的な施設に整備されている場所もあります。一度、ケアマネや地域包括センターに問い合わせることをお勧めします。また当グループの所属していいるのですが、以下の学会に問いあわせても教えてもらえます。

一般社団法人 日本自立支援介護・パワーリハ学会

4-5.パワリハの頻度

時々、パワリハを週1度だけ行う方がいらっしゃいますが、統計的には、最低週2回以上行うことで効果が表れます。最低、週2回は行うようにしてください。

Exercise for legs.
マシンを使うことで、正しい姿勢で安全に行うことができます

5.パーキンソン病のリハビリで必ず追加したい訪問リハ

パワリハを行う場合は、特別な資格者は必要がありません。しかし、パーキンソン病患者さんの場合、週一回程度、理学療法士や作業療法士と言ったプロのチェックを受けることをお勧めします。

Health visitor and senior man during home visit.
訪問リハを受けることで細かい身体状況のチェックが可能になります

5-1.バランスのチェック

私の患者さんには、週2回以上のパワリハには、必ず訪問リハによるプロのチェックをお願いしています。時に、身体のバランスが崩れたままパワリハに取り組むことがあるからです。左右の筋力ならびに姿勢をチェックすることでパワリハの効果も上がるのです。

5-2.自宅の生活に合わせて

リハビリの目的は、自宅での生活を最良にするためでです。理学療法士や作業療法士は、自宅の構造に合わせて、手すりをつけたり段差を変更するアドバイスをします。その上で、自宅の構造に合わせてリハビリプログラムを、オーダメイドしてくれるのです。結果として、自宅での生活がスムーズになり、転倒等の危険性も低下するのです。

5-3.程度によっては医療保険を使え自己負担の軽減が図られる方も

パーキンソン病が進行して、ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって、生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度になると、訪問リハビリおよび訪問看護は医療保険を使うことができます。医療保険を使うことで、介護保険の枠を残すことができるので、その分を、デイサービス、ショートステイ、福祉用具貸与等に振り分けることができます。

医療保険を使った訪問リハビリの自己負担を無料にする目的で、体幹失調で身障の3級以上の申請もお勧めです。

*「ホーエン・ヤールの重症度分類」

0度  パーキンソニズムなし
1度  一側性パーキンソニズム
2度  両側性パーキンソニズム
3度  軽~中等度パーキンソニズム。姿勢反射障害あり。日常生活に介助不要
4度  高度障害を示すが、歩行は介助なしにどうにか可能
5度  介助なしにはベッド又は車椅子生活

*生活機能障害度

1度  日常生活、通院にほとんど介助を要しない。
2度  日常生活、通院に部分的介助を要する。
3度  日常生活に全面的介助を要し、独立では歩行起立不能。

6.まとめ

  • パーキンソン病のリハビリは、薬物療法と並ぶ重要な治療の一つです。
  • リハビリを併用することで、薬物の使用を減らすことができます。
  • リハビリの理想は、パワリハと訪問リハビリの組み合わせです。
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