公的保険において、保険サービスと保険外サービスをどのように組み合わせるかはとても重要です。原則は、最低限のサービスは保険で対応し、それ以上のクオリティ(見栄え、快適性)については、保険外で対応するべきです。その点では、歯科医療はその原則に乗っています。私の例では、部分入れ歯を保険で作成することも出来ますが、見栄え、快適性から保険外も選ぶことができた点はとて理にかなっています。
しかし介護の世界では、この原則が守られていません。通常、特養や老健は国の補助金で建築されます。そのため、規模も大きく、豪華で、原則個室です。その上入居費用も安く、個人の所得が少なければ、減免制度により自己負担も安くなります。さらに裏ワザで世帯分離をしてしまえば、子供さんの所得が高くても、本人の年金さえ少なければ安く入所することさえ可能です。
一方で民間の有料老人ホーム等には助成金等はありません。その上、建物設備も一部に豪華なものもありますが、多くは特養・老健より劣ります。その上、殆どの施設は、特養・老健より費用負担は多くなってしまうのですから不思議です。特養・老健のように所得が低いからといって減免制度も適応になりません。
つまり、介護保険の世界では、本来最低限のサービス内容であるべき施設が最も豪華でお金がかっていて、その上自己負担も軽いのです。しかしそれらの施設は、限られているため全員が入ることができません。入所だけしてしまえば、まさに”既得権”です。これらの施設に入れなかった多くの方は、民間が提供する、劣悪だが費用も高い施設で我慢するしかないのです。
これは明らかな厚生省の政策ミスだと思います。本来は、保険で提供する特養や老健は、自己負担は安いかわりに大部屋を中心とした最低限の施設を作るべきだったのです。そこに不満があれば、自己負担でよりクオリティの高い民間施設に移ればよかったのです。しかし現状では、公的な施設があまりに豪華であるため、クオリティの高い民間施設が提供さえされなくなっています。
この政策ミスは、簡単には解決できないと思います。結局は、現状の制度の中で情報収集をして賢く動いたものだけが得をするようです。