我が家の子供たちも、時々寝落ちをしています。周囲の若い人たちも、「昨日、寝落ちしちゃった」などという会話をしています。正直、私自身は「寝落ち」というものを体感したことがありません。しかし、最近、この「寝落ち」という言葉が以前よりも頻繁に使われるようになった気がします。
ただ、そんな「寝落ち」、実は体に良くありません。今回の記事では、総合内科専門医の長谷川が、「寝落ち」が身体に悪い理由と、その対策をご紹介します。
目次
1.寝落ちとは?
「寝落ち」という言葉は、ある一定の年齢以上の方は使わない言葉ではないでしょうか? そもそも、「寝落ち」という言葉自体が、オンラインゲームやチャットをしている途中に、眠ってしまって接続が解除されてしまうことから来ているようです。すなわち「落ちる」とは、ログイン状態がログアウト状態になることを示していて、「寝落ち」の「落ち」もそこから来ているのです。
やはり、言葉の成り立ちからしても若者を中心とした言葉の様です。最近では、生活全般で「何かをしている際に、知らないうちに眠ってしまうこと」を広く、「寝落ち」というようです。
2.寝落ちをしてしまう代表的な3つの理由
そもそも、なぜ寝落ちをしてしまうのでしょうか? 普通であれば、帰宅してから食事をして、入浴をしてから床につければ、寝落ちをすることはありません。以下のような状態が、寝落ちの原因となっているようです。
2-1.夜遅くまでの仕事や勉強
そもそも、仕事や勉強が忙しく、帰宅が遅くなれば、家についただけで安心してしまいます。まさに疲れ果ててしまうことで寝落ちをしやすくなります。
2-2.外で外食・飲酒
外で食事をしてくると帰宅してから食事をする必要がない分、寝落ちしやすくなります。特に、飲酒を伴った場合は、眠気が強くなり寝落ちをしやすくなります。
2-3.睡眠不足
そもそも、毎日夜遅くまで起きていて、睡眠時間が短かいことで、寝落ちをしやすくなります。通常、人間は、睡眠時間が6時間を切ってくると眠気を感じます。
3.寝落ちは良質な睡眠がとれていない証拠と原因になりうる、とは
そもそも、寝落ちでは良質な睡眠がとれません。帰宅してからすぐに、寝落ちをする場合、リビングのソファーであったり、床で寝てしまうようです。これらの場所は、睡眠には適していません。
良質な睡眠においては寝具の役割がとても重要です。寝具には、寝ている時の保温と、身体への負担が少ない姿勢を保つという二つの役目があります
リビングやソファーではそれらの役割が十分かなえられません。結果、良質な睡眠がとれないことで、さらに翌日に寝落ちしやすくなる悪循環に陥ると言えるのです。
4.寝落ちに伴う、悪習慣
寝落ちの習慣がつくと、他の生活習慣にも悪影響を及ぼします。
4-1.夕食の時間が遅くなっている
寝落ちをする場合、帰宅後に食事だけして、寝てしまうことが多いようす。夕食は、寝る3時間前に摂るのがベストです。それよりも短いと、胃の中で食べ物が滞留しているため睡眠に悪影響を及ぼしてしまうのです。
4-2.入浴をしなくなる
寝落ちをする場合は、お風呂にも入らずに寝てしまう方が多いようです。入浴には、副交感神経を高めることと、身体の奥の体温を一時的に上げることで良質な睡眠に誘います。そのため、眠りにつきたい1-2時間前に、あまり熱さを感じない温度で湯船につかることが大事です。入浴もしないでの寝落ちでは、疲労が十分回復しないのです。
4-3.自律神経のバランスが乱れやすくなる
寝落ちによる、悪習慣が身についてしまうと、自律神経のバランスが崩れてしまいます。結果として、疲れやすさ、肩こり、頭痛、日中の眠気、耳鳴り、動悸、圧迫感、胃痛、便秘・下痢といった症状が引き起こされやすくなるのです。
5.寝落ちをしないために
ご紹介したように、「寝落ち」は決して身体にはよくありません。そのために、「寝落ち」をしないための方法をご紹介します。
5-1.意志も大事
まずは、「寝落ち」は身体によくないことを認識しましょう。寝落ちしたくなっても、せめて入浴だけはする意志を持ちましょう。入浴ができれば、いったん眠気が治まるものです。
5-2.30分以内の昼寝も有効
寝落ちをするまでに疲れ果てないために、日中の昼寝は有効です。ただし、時間は30分以内にしましょう。それ以上の、昼寝はかえって身体のバランスを崩してしまいます。
5-3.良質な睡眠をとるように心がける
良質な睡眠をとることが、寝落ちのスパイラルを改善します。そのためには、寝る3時間前に食事を摂り、シャワーでなく必ず湯船につかることが大事です。その上で、寝る前には携帯電話を見ない、軽いストレッチをする、私個人的にはセルフお灸も良質な睡眠につながります。以下も参考になさってください。
6.ひどい場合は病気の可能性も検討する
ただし、度を過ぎた「寝落ち」のような症状がある場合は、病気も気にする必要があります。
6-1.睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に呼吸が止まる病気です。医学的には、10秒以上気道の流れが止まった状態を無呼吸と定義します。無呼吸が一晩に30回以上、もしくは1時間に5回以上あれば睡眠時無呼吸です。
このような睡眠が続くと熟睡感がなく、日中も強い傾眠感を感じ、「寝落ち」しやすくなります。睡眠中の無呼吸は気が付かれないことが多く、検査・治療を受けていない多くの患者さんがいると思われます。
6-2.ナルコレプシー
時間や場所に関わらず、突然眠気に襲われて、居眠りを1日何回も繰り返してしまう病気です。少なくとも3ヵ月間のうち、週に最低3回我慢できないほどの眠気に襲われ、眠り込んでしまいます。寝落ちが、帰宅後だけでなく日中にも起こるようであれば疑う必要がある疾患です。
6-3.何科を受診?
周囲の方からも、あまりに「寝落ち」がひどいと指摘された場合は、病院を受診しましょう。ネットなどでは、精神科や脳神経内科の受診を勧めています。ただし、当院も脳神経内科が専門ですが、睡眠障害の診断はできません。やはり、「睡眠外来」などの睡眠障害に特化した科を受診してください。
7.まとめ
- 寝落ちでは良質な睡眠はとれません。
- 寝落ちを繰り返すことで、自律神経のバランスまで崩しかねません。
- あまりにひどい場合は、病気も疑いましょう。