私が新型コロナウイルスに罹ったら、フサンをぜひ使用したいと思う理由【認定内科専門医が解説】

私が新型コロナウイルスに罹ったら、フサンをぜひ使用したいと思う理由【認定内科専門医が解説】

新型コロナウイルスについては、まだまだ不明な点が多くあります。そして、治療薬についても絶対的なものがない状態です。そんななか私は、「自分が新型コロナウイルス感染症に罹患したらフサン(一般名:ナファモスタット)の使用を希望したい」と考えています。

今回の記事では、認定内科専門医である私、長谷川嘉哉が、もし新型コロナウイルスに罹ったら、フサンの使用を希望する理由についてご紹介します。

目次

1.新型コロナウイルスは微小梗塞を引き起こす、とは

医学雑誌Lancetの報告では、新型コロナウイルスが血管にあるACE2受容体を攻撃して、血管を傷つけることが明らかになりました。血管が傷つけられると、修復のために小さな血栓が生まれます。その結果、心臓の血管が詰まると心筋梗塞、肺の血管が詰まると肺梗塞が引き起こされやすくなり、生命的な危険を引き起こすのです。

全身の血管が攻撃され、血栓が起こりやすくなります

2.新型コロナウイルスと血管病変の関連性について

私は以下の理由からも、新型コロナウイルスが血管病変との関与を疑います。

2-1.急激な進行

新型コロナウイルスの重症例では、数時間前まで元気であった人が、あっという間に人工呼吸器に繋がれるほど重篤になることが報告されています。我々、医師は発症の仕方から原因疾患を想像しますが、急激な進行の場合は、血管病変を疑うことが多くなります。

2-2.血管年齢が重症化を左右

重症化する患者さんの特徴は、男性、喫煙歴、高血圧、糖尿病いずれも血管の機能が落ちている人たちです。そこに、新型コロナウイルスが血管を攻撃したら、連鎖反応で大量の血栓が生じ、重症化するのです。つまり、もともとの血管年齢が軽症化と重症化に2分していると言えるのです。

2-3.D-ダイマーが亢進

新型コロナウイルスの重症例でD-ダイマー値が上昇していることがわかっています。D-ダイマーは体の中のどこかに血栓ができていれば高い値を示すものです。この点からも、新型コロナウイルスが単なる感染症でなく、血栓を形成しやすく、そのことが重症化に関与している可能性があるのです。

3.フサン(一般名:ナファモスタット)とは?

K10012422501_2005081752_2005081832_01_02
フサンのパッケージ(画像出典:NHK

フサンとは、1986年に発売された薬で、我々臨床医は、長年にわたっての使用経験がある薬剤です。

3-1.適応症は膵炎とDIC

フサンは、臨床的には膵炎やDICに対して使用します。DICとは聞きなれない病名かもしれません。「汎発性血管内凝固症候群:disseminated intravascular coagulation」が正式名称です。DICは、癌、白血病、感染症などの基礎疾患のある患者さんの血管内に、無数の血栓がばらまかれ、凝固反応が亢進した状態になる症状です。

これがまさに新型コロナウイルスの重症例に似通っているのです。

3-2.ウイルスの増殖も抑える

フサンは、血液を固まることを予防するだけでなく、新型コロナウイルスの増殖を抑える効果も期待されています。フサンのタンパク分解阻害の働きが、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスである、SARS-CoV-2 Sタンパク質の膜融合を阻害する効果も認められているのです。(参考:ナファモスタットに新型コロナウイルス感染阻止の可能性(日本経済新聞))


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


20200319-2
フサンの新型コロナウイルスに対する作用(出典:東京大学発表の論文より)

3-3.他の抗ウイルス剤に比べ安全性も高い

現在、新型コロナウイルスに対する治療薬として候補に上がっているものは、エボラ出血熱の治療薬であったレムデシビル、抗インフルエンザ薬のファビピラビル(=商品名アビガン)、HIV感染症に対するロピナビル/リトナビル(=商品名カレトラ)などです。

しかし、これらの薬はいずれも使用経験が少なすぎます。あまりに早急では、十分な副作用も報告なされていない状態での認可となります。。ただし製薬会社としては、薬価が高いために新薬の普及を望んでいるのかもしれません。

やはり、個人的には30年以上処方されているフサンの方が相当に安心です。その上、ウイルスの増殖を抑えるだけでなく、血栓を予防する効果もあるので、まさに今回の新型コロナウイルス感染症においてうってつけの薬剤だと思います。安全で、多方面の効果も期待できる。だからこそ自分なら、フサンの投与を希望するのです。

4.どのように使用?

具体的には、フサンは以下のように使用します。

4-1.感染予防にはならない

くれぐれもこの記事を見て、感染していないにも関わらず、医療機関を訪ねて「フサンの使用をお願いします」とは言わないでください。フサンは、新型コロナウイルスに対する感染を予防する薬ではありません。新型コロナウイルスに感染をした後で、入院もしくは隔離をされた状態の際に使用します。

4-2.重症化の予防的に使用

フサンは点滴用の薬剤です。もし自分が、新型コロナウイルスに感染して入院した場合は、発症や重症化の予防を目的としてフサンを24時間持続点滴の中に入れてもらいます。

4-3.経口薬よりも点滴

実は、フサンの経口薬ともいえるカモスタットという飲み薬があります。薬の効果は、血中濃度が重要になります。カモスタットの経口では、点滴によるフサン投与に比べ血中濃度が低くなるので効果が劣ってしまいます。24時間の持続点滴は、苦痛ですが命には代えられません。

5.まとめ

  • 新型コロナウイルスは、単なる感染症でなく微小梗塞の関与が疑われます。
  • そのため、もともとの血管年齢が重症化を左右するのです。
  • 認定内科専門医としては、安全で、多方面の効果も期待できるフサンの使用を希望します。

 

長谷川嘉哉監修シリーズ