胃ろうより負担の多い中心静脈栄養をなぜ選択するのか?

胃ろうより負担の多い中心静脈栄養をなぜ選択するのか?

最近、食事がとれなくなった患者さんの中で中心静脈栄養を選択される人が続いています。個人的には特に中心静脈栄養は選択してほしくないと思っていたので不思議に感じています。そこで患者さんの家族にお伺いすると入院中の病院から『胃ろうか中心静脈栄養のどちらかを選択してください』と言われたそうです。家族としては、世間の情報で『胃ろうだけは選択してはいけない』と考え、中心静脈栄養を選択したとのことです。

今回の記事では、1000名以上の看取りを経験した在宅専門医の長谷川嘉哉が『胃ろうか中心静脈栄養のどちらかを選択してください』という究極の選択について解説をします。

目次

1.人間は必ず食事が摂れなくなる

多くの方が病院で亡くなる今の時代、人の死に立ち会ったことのない方が増えています。そのため、「人間は最後は必ず食事が摂れなくなって亡くなる」といった当たり前のことを理解できない方もいらっしゃいます。人間は最期が近くなると、余分なものは受け付けず、体の中を少しずつ整理しいらないものを全て捨てて軽くなるのです。つまり、「死ぬから食べない」ことを知っていただきたいと思います。

実際、食事を摂らないと周囲の方は「苦しいのでは?」と考えてしまいますが、食事を摂らないと脱水状態になり軽い麻酔状態となります。この状態は、患者さんにとっては心地良いものと考えられています。

2.なぜ胃ろうや中心静脈栄養を薦められるのか?

病院は入院日数を1日も短くすることを求められています。そのため、食事が摂れなくなった高齢者を病院に長期入院させることが出来ません。食事が摂れない状態で退院はさせられませんから胃ろうや中心静脈栄養を薦め、退院してもらうのです。

3.胃ろうと中心静脈栄養のどちらが良い?

家族としては胃ろうと中心静脈栄養のどちらを選択すべきなのでしょうか?

3-1.どうしても選ぶなら胃ろう

私個人としては、どちらも選びたくないのですが、究極の選択であれば、胃ろうを選びます。胃ろうの方が、消化管を通じて栄養を吸収するため人間の生命活動には準じています。中心静脈栄養に比べれば、感染のリスクも、家族への負担、医療機器(微量点滴の機械)が不要な点対応しやすいものです。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


3-2.中心静脈栄養は不自然

対して、中心静脈栄養は直接血管に針を留置するため感染症、それも敗血症のリスクが極めて高くなります。理論上は、カロリーが補給されても体はどんどん痩せていきます。なかには、お亡くなりになった際に眼が閉じれないほど痩せてしまった患者さんもいらっしゃいました。

3-3.自然の死は美しい

胃ろうや中心静脈栄養は、生命体としての死を無理やり延命しています。だからこそ敗血症や極限までの体重減少がおこるのです。食事が摂れなくなって、延命をせずに自然に死を迎えた患者さんはとても美しいものです。

4.可能なら在宅看取りも

できれば胃ろうも中心静脈栄養も避けたいものです。しかし、治療をしないわけですから病院での入院は継続できません。そうなると自宅に退院するしかありません。その場合、在宅医療および訪問看護をしてくれる医療機関を探して、自宅で看取りをすることがお薦めです。

病院では何もしないで入院継続はできませんが、在宅であれば胃ろうや中心静脈栄養をせずに自然に看取りをすることができるのです。自分も含め多くの在宅医は、自然の看取りの実践のために、病院勤務から訪問診療を始めた医師が多いのです。そして、それに賛同してくれる訪問看護士さんも協力してくれているのです。

5.まとめ

  • 最近、食事がとれなくなった患者さんの中で中心静脈栄養を選択される人が続いています。
  • 中心静脈栄養は胃ろうよりも、リスクが高く、患者さんへの肉体的負担が重いものです。
  • 可能なら、自宅に退院して自然の看取りを実現してもらいたいものです。
長谷川嘉哉監修シリーズ