認知症と花粉症。一見するとまったく別の病気に思えるかもしれません。
ひとつは脳の疾患、もうひとつはアレルギー疾患。関係があるとは普通考えません。しかし近年、これら二つに共通して関わっている可能性が指摘されている栄養素があります。それが ビタミンD です。
私は認知症専門医として日々外来に立っていますが、血液検査をしていて強く感じることがあります。それは「ビタミンDが不足している高齢者が非常に多い」という事実です。そして同時に、花粉症や慢性的な炎症症状を抱えている方にも不足例が少なくありません。
今日は、認知症と花粉症という二つの疾患をつなぐ「ビタミンD」の役割について考えてみたいと思います。
目次
1.ビタミンDは“骨のビタミン”ではない
ビタミンDと聞くと、多くの方は「カルシウムを吸収するための栄養素」「骨粗しょう症予防」といったイメージを持たれるでしょう。もちろんそれも重要な働きです。
しかし実は、ビタミンDは単なるビタミンというよりも、ホルモンに近い働きを持つ物質です。体内のさまざまな臓器に受容体が存在し、免疫機能や炎症の調整に深く関わっています。脳にもビタミンD受容体が存在することが分かっています。つまりビタミンDは、骨だけでなく、脳や免疫にも影響を及ぼす存在なのです。
2.認知症と慢性炎症
アルツハイマー型認知症の背景には、アミロイドβの蓄積だけでなく、「慢性炎症」が関与していると考えられています。脳内で炎症が持続すると神経細胞の障害が進み、認知機能低下につながる可能性があります。ビタミンDには、この炎症を抑制する作用があるとされています。実際、血中ビタミンD濃度が低い人ほど認知機能低下が進みやすい、という研究報告もあります。
もちろん、ビタミンDを摂取すれば認知症が治るという単純な話ではありません。しかし、慢性的な炎症を抑える「土台」として重要な役割を担っている可能性は十分にあります。特に高齢者は外出機会が減り、日光を浴びる時間が短くなります。加えて食事量も減少し、魚の摂取量も少なくなる。結果としてビタミンD不足が進行しやすい環境にあります。これは見逃されがちなリスクです。
3.花粉症は“免疫の暴走”
では花粉症はどうでしょうか。花粉症は免疫の過剰反応です。本来無害な花粉に対して免疫が過敏に反応し、くしゃみや鼻水、目のかゆみといった症状を引き起こします。ビタミンDは免疫を強める働きがある一方で、過剰な免疫反応を抑制する働きもあります。免疫のバランスを整える、いわば“ブレーキ役”のような存在です。
ビタミンDが不足すると、このブレーキが弱まり、アレルギー反応が強く出る可能性が指摘されています。つまり、認知症も花粉症も、背景にあるのは「慢性炎症」と「免疫のバランス異常」であり、その調整役としてビタミンDが関与している可能性があるのです。
4.日本人はなぜ不足しているのか
日本は日照時間がある国です。それにもかかわらず、ビタミンD不足の人が多いのはなぜでしょうか。理由は現代の生活様式にあります。
・屋内中心の生活
・紫外線対策の徹底
・魚摂取量の減少
・高齢化
ビタミンDは皮膚で紫外線を浴びることで合成されます。しかし「日焼けは悪」という意識が強まり、完全防御の生活が広がっています。もちろん過度な紫外線は避けるべきですが、完全遮断もまた問題です。
5.どのくらいあればよいのか
血液検査で測定する25(OH)D濃度は、一般的に30ng/ml以上が望ましいとされます。20ng/ml未満は不足と考えられます。しかし実際には20未満の方が少なくありません。特に冬季はさらに低下します。もし物忘れが気になる、あるいは花粉症が年々悪化しているという方は、一度血中ビタミンDを測定してみる価値はあります。
6.どう補うか
方法は大きく三つです。
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適度な日光浴
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魚類やきのこ類の摂取
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必要に応じたサプリメント
鮭、サバ、イワシ、干ししいたけなどは有効です。昔の和食は理にかなっていました。サプリメントを使用する場合は、自己判断で大量摂取せず、医師と相談することが重要です。
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7.まとめ
認知症と花粉症。まったく別の疾患に見えますが、共通するのは「炎症」と「免疫バランス」です。そしてその調整に関わるのがビタミンDです。魔法の栄養素ではありません。しかし、現代人が見落としがちな“土台”の栄養素であることは間違いありません。太陽を避けすぎていませんか。魚を食べなくなっていませんか。
薬の前にできることがあるかもしれません。まずはご自身のビタミンDの状態を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。体は静かに変化します。その静かな変化を整える鍵のひとつが、ビタミンDなのかもしれません。

認知症専門医として毎月1,000人の患者さんを外来診療する長谷川嘉哉。長年の経験と知識、最新の研究結果を元にした「認知症予防」のレポートPDFを無料で差し上げています。