認知症と車の運転②・・どこまで責任が取れる? 

 車の運転の医学的指導については、我々神経内科医は、てんかん患者さんでの経験があります。20年程前は、医師にてんかん患者さんの運転について、厳しい指導は求められていませんでした。しかし、三重や京都でてんかん患者さんによる重大な交通事故が起こりました。そこで、コントロール不良な患者さんへは、禁止を厳しく指導するように求められるようになりました。今後は、指導が不十分であれば医師にまで責任が問われるかもしれません。

 現在、認知症の患者さんもてんかん患者さんと同じ流れになろうとしています。

 “平成24年11月、宮崎県えびの市の県道。1台の軽トラックが路側帯に突っ込み、下校中の児童3人(当時小学校2年生)を次々とはねた。はねられた男児の1人は重体となり、今も意識は戻っていない。運転していた76歳の男性には認知症の症状があった。今年9月、宮崎地裁都城支部で懲役1年2カ月の実刑判決が言い渡された。自動車運転過失傷害と道路交通法違反(事故不申告)の罪だ。”

弁護側は裁判で、「認知症で心神耗弱の状態だった」と主張した。だが判決では責任能力あり、と判断された。医師や家族から運転をやめるよう注意されていたが「たいしたことはない」と運転を続けていたという。判決は「わずかな出費を節約するために車を運転した態度は非難を免れない」と厳しく指摘、執行猶予をつけなかった。

私は、このケースは結構外来で使わせていただいています。『残念ながら本日の検査で、○○さんは車の運転を止めていただければいけません。医師の指導に従わず、事故を起こした場合は、執行猶予の付かない実刑になります。お願いですから、私の指示に従ってください』という具合です。少し申し訳ない気持ちもあるのですが、被害者があることですから止むを得ません。


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 実際に認知症の人による自動車事故は各地で起きています。“警察庁によると、平成24年8月までの2年間の高速道路での逆走(447件)を調べたところ、約7割が65歳以上の運転者。うち認知症だったり疑われたりしたケースが約4割にのぼった。”

これも私の講演ネタの一つですが、高速道路を運転していて、認知症の患者さんが逆走してくることは十分あり得るのです。ちなみに、その場合は追い越し車線から走行車線に戻ってください。認知症患者さんは、左による傾向があるので、みなさんの追い越し車線を走ってきますから・・。頭の中に入れておかれれば、もしかすると身を助けることがあるかもしれません。

            

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