マスコミでは、〇〇の患者数○○万人と簡単に言っていますが、実際にどうやって数えるのでしょうか?数年前まで認知症患者さんは300万人と言われていました。この数字は、介護保険の主治医の意見書のデータから集計されたものです。しかし、主治医の意見書は認知症専門外の医師が診断した介護保険のデータです。そのため、診断の難しい軽度から中等度の認知症はかなり見落とされ、数字が過少であったようです。そこで、2013年6月1日には全国8市町村で実施した市町村のデータから認知症の有病率を検討したところ、15%と推計され、現在約462万人と分析されました。この数値は、専門医による診断をもとにしているため、かなり実態に近いと思われます。つまり、統計の取り方で300万人から一気に462万人まで増えたのです。
同じことが、MCIでも言えます。厚生労働省は、MCIの患者数400万人と言っていますが、これもかなり過少と思われます。当院では、通常の側頭葉機能の検査が正常な患者さん90名を検討しました。これらの90名は、通常の病院であれば、正常と診断されるレベルです。そこで30分程度の時間をかけてリバーミード検査という前頭葉機能の検査を行いました。その結果、なんと3/4に前頭葉機能低下を認めMCIと診断しました。この結果からは、本当のMCI患者さんは400万人どころか1000万人近くいるのでは?と予想されます。
ここまでの診断には相当の手間暇がかかります。しかし、そのきっかけは、家族の、“何か変”です。時に、専門外の医師が、家族の必死の訴えに対して“異常ありません”と誤診して、その後進行する例が後を絶ちません。医師は、家族の“何か変”といった言葉には、真摯に耳を傾ける必要があるのです。