認知症専門医が最初にイクセロン/リバスタッチパッチを選択する理由

認知症専門医が最初にイクセロン/リバスタッチパッチを選択する理由
2018-07-03

現在、健康保険で効果が認められている抗認知症薬は4種類あります。専門外の先生方は漠然と使用しているようですが、認知症専門医はイクセロン/リバスタッチパッチを最初に選択することが多いようです。しかし、残念ながら相当数の方に副作用として皮膚症状を認めます

それでも最初にイクセロンリバスタッチパッチを使用するには理由があるのです。今回の記事では月に1000人の認知症患者を診ている認知症専門医の長谷川が、イクセロン/リバスタッチパッチを第一選択する理由、副作用についてご紹介します。

目次

1.イクセロン/リバスタッチパッチとは?

イクセロン/リバスタッチパッチとは、化学薬品名をリバスチグミンといい、アルツハイマー型認知症の症状の進行を抑制する薬です。

1-1.日本では、同じ薬が二社から販売

日本では小野薬品工業株式会社から「リバスタッチパッチ」 、ノバルティスファーマ株式会社からは「イクセロンパッチ」の製品名で販売されています。両者の有効成分は全く同一のものです。

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海外でも処方されているイクセロンパッチ

1-2.唯一の貼り薬

リバスチグミンはアセチルコリンエステラーゼに対して阻害作用を持ちます。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬のなかで最も吸収が早く、排泄も早い特徴を持ちます。低分子であることを利用して、パッチ剤が開発されました。アルツハイマー型認知症治療薬では世界で唯一の経皮吸収型製剤となります。

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経皮パッチ剤は皮膚に貼り付けて使用します。

1-3.海外では飲み薬も

リバスチグミンも開発された当初は他の認知症の薬と同様に内服薬として製剤化されたのですが、吐き気などの消化器系の副作用が相当強かったため日本では導入されていません。

2.作用機序

イクセロン/リバスタッチパッチの特徴は以下のようなものです。

2-1.アクセル系の一つ

アルツハイマー薬の作用は、アクセル系とブレーキ系に分けることができます。患者さんが初診で訴えられた症状で、「やる気が出ない」、「物覚えが悪い」、「出来ていたことができなくなった」という症状の際、アクセル系の薬を最初に使います。具体的には、保険薬ではアリセプト、レミニール、イクセロン/リバスタッチパッチの3種類がこれにあたります。

2-2.認知症の進行予防の効果に差はない

認知症の進行を抑制する効果については、保険薬ではアリセプト、レミニール、イクセロン/リバスタッチパッチの3種類で効果に差はないと報告されています。

2-3.唯一、意欲を高める

冒頭に申し上げた「それでも最初に使う理由」は、他の抗認知症薬の中で唯一「意欲」を改善するからです。

脳内のアセチルコリンを分解する酵素にはアセチルコリンエステラーゼ(AchE)ブチルコリンエステラーゼ(BchE)2種類があります。リバスチグミンはアセチルコリンエステラーゼ(AchE)を阻害する作用だけでなく、ブチルコリンエステラーゼ(BchE)も阻害するという特徴があります。その結果、唯一「意欲を高める」「言葉数が増える」という効果を持ちます。

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意欲が戻れば、多くのことができるようになります

3.イクセロン/リバスタッチパッチを特に勧めるケース

以下のケースでは、イクセロン/リバスタッチパッチの使用がお勧めです。

3-1.意欲がない

認知症の症状のなかで、意欲の低下を訴える方は多くいらっしゃいます。「一日中寝てばかり」「すべてにやる気がない」「今まで好きであったこともしなくなった」などです。そんな時に、イクセロン/リバスタッチパッチを使用すると意欲が高まり積極的になるのです。

3-2.言葉数が少ない

イクセロン/リバスタッチパッチのもう一つの特徴に、言葉数が増えることです。抗認知症薬の使用による脳血流の変化を観察すると言語野の血流を増やすことが分かっています。

3-3.嚥下障害が強い

認知症の中でも血管性認知症や、レビー小体型認知症の患者さんは、嚥下障害が出現し薬の服薬が難しくなります。そのため、1種類でも経口薬は減らしたいものです。リバスタッチ/イクセロンパッチは貼付型ですから、そのような観点からも便利なお薬なのです。

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嚥下障害のある方にも使いやすいのです

3-4.細かい量設定が必要なケースに対応できる

レビー小体型認知症においては、抗認知症薬は少量の使用が必要です。少しでも量が多いと副作用が出るためです。そのため、4段階で細かい設定のできるイクセロン/リバスタッチパッチは有効です。


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3-5.アリセプト・レミニールで副作用が出ているケース

貼付剤であるメリットは、薬の成分が皮膚から持続的にゆっくり吸収されるため血液中のリバスチグミンの濃度の変動が少なくなることです。その結果、アリセプトやレミニールに比べ消化器症状が極めて少ないのです。

3-6.服薬管理が難しいケース

認知症が進行すると服薬管理が難しくなります。飲み薬の場合、本人に「飲んだ」と言われれば、確認するすべがありません。その点、イクセロン/リバスタッチパッチでは貼っているか否かを確認することで管理が可能になります。

4.イクセロン/リバスタッチパッチ避の使用を避けるべきケース

認知症のレベルが同じでも、攻撃的な症状が出る患者さんがいらっしゃいます。例えば、「イライラする」、「性格変化で穏やかだった人が怒りっぽくなった」、「性格の先鋭化で気が強かった人がより気が強くなった」などです。その時に、アクセル系のイクセロン/リバスタッチパッチを使用すると、火に油を注ぐようなものでさらに悪化します。その場合は、ブレーキ系のメマリーを使用します。

5.認知症専門医の処方例

1日1回4.5mgから開始し、4週間ごとに大きいサイズに変更し、18mgで治療を継続します(パッチのサイズが変わっても1日1枚であることは変わりません)。少量から開始し徐々に増量していくのは、パッチを使用することによって生じる神経伝達物質の変化に体を慣らし副作用を軽減するためです。

2015年8月より9mgから開始し4週間後に18mgにするという増量方法が認められました。この増量方法でも副作用の出現率などに違いがないことが認められたためです。

ただし、体重が40㎏以下の患者さんの場合は、まずは9㎎で維持します。その後、MMSE等で効果判定を行い、点数が悪化した場合18㎎まで増量します。逆に、MMSEが維持もしくは改善する場合は9㎎を維持量とします。

6.三割の方に出現する副作用とは

副作用の大部分は皮膚症状です。貼った部分が赤くなり、掻痒感が出現します。ひどいと腫れあがるほどです。そのため、約三割の方が使用を断念します。中止するまででない程度の発赤も含めれば、半数以上に皮膚症状がみられます。

メーカーは、貼る前にステロイド系のローションを塗り、剥がした後にステロイド系の軟膏を塗ることを勧めていますが、それほどの効果はありません。

正直、副作用が三割の方に出現し使用できなくなる薬はあり得ないと言えるレベルですが、それ以上の効果があるため使用されています。但し、今年度中には、副作用を軽減させた製品が発売されるようですので期待をしています。

7.イクセロン/リバスタッチパッチ著効例

イクセロン/リバスタッチパッチが著効した例を紹介します。

7-1.意欲が高まった

生活すべてに意欲が無くなった患者Aさん。一日中何もしないため、徐々に日常生活動作も低下してきました。そこで、イクセロン/リバスタッチパッチを使用。はた目からも、顔つきが改善。今まで好きであった家庭菜園も再開。歩行も元に戻ってきました。ただし、奥様からは「悪い時は、何も言わずに黙って食事をしていたのが、最近では好き嫌いを言うようになった」とのこと。そのような文句を言いながらもどこか嬉しそうです。意欲を刺激すれば、食欲も改善されるのです。

7-2.レビー小体型認知症で適正量が使用できた

レビー小体型認知症の患者Bさん。アリセプトの維持量5㎎を服用するとめまいや消化器症状が出現します。そのため3㎎を使いたいのですが、保険では認められていません。そこで、イクセロン/リバスタッチパッチを4.5㎎で維持して使用(アリセプトの3mgに相当)。副作用もなく、認知機能障害も維持されています。最近では嚥下障害も出現しているため、貼り薬であることがとても助かっています。

7-3.寝たきりでも言葉が出た

67歳のCさんは、5年前より認知機能障害が出現していたのですが、専門医を受診することもなく、治療を受けることもありませんでした。私が、初めてCさんの自宅への訪問時した際には、呼びかけにもほとんど反応がないような状態まで進行していました。いわゆる認知症の末期像という状態でした。

ご家族の希望もあり、イクセロン/リバスタッチパッチを開始しました。徐々に増量し、4ヶ月かけて最大量になりました。2ヶ月後の訪問診療時に、いつものように呼びかけると、なんと返事が返ってきたのです。その後も徐々に改善しさらに2ヵ月後には、簡単な会話までできるようになりました。この状態は現在までも続いています。

当初、御主人は反応もない奥さんを、特別養護老人ホームに入れる手配をしていました。せっかく介護をしても、反応もなければ介護者の苦労は報われません。しかし最近では、食事を持って行くと、「ありがとう」と言葉を発してくれます。ご主人は、「少しでも会話ができるようになってうれしい」と喜んでみえます。実は最近、特別養護老人ホームから部屋が空いたという連絡をもらわれたのですが、反応の出てきた奥様をみて、しばらく自宅で介護する決断をされました。

8.まとめ

  • イクセロン/リバスタッチパッチはアクセル系の抗認知症薬の中では第一選択です。
  • 特に、意欲を高める、言葉数を増やすという点が特筆すべきです。
  • ただし、3割が皮膚症状により継続使用できません。改良薬の発売が期待されます。
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