ジェネリックの効果が不安な方へ・オーソライズド・ジェネリックが選べる場合も

ジェネリックの効果が不安な方へ・オーソライズド・ジェネリックが選べる場合も

医療機関を受診して薬をもらう際、「ジェネリックにされますか?」という質問を受けることが増えてきました。国は、医療費の増加を防ぐために、ジェネリック(後発医薬品)の数量シェア80%を目指しています。しかし、ジェネリックは先発品と同一成分と言われていますが、臨床の現場では、効果の違いを感じることもあります。

そのため、医師や患者さんによっては、先発品を希望される方もいらっしゃいます。一方で国の医療費の負担を考えるとジェネリックも普及させたい。そんな、ジレンマを解決するものとして、オーソライズド・ジェネリックというものが登場してきました。令和2年6月には、認知症の治療においては不可欠なメマリーにもオーソライズド・ジェネリックが発売されました。これは、患者さんの自己負担の面からも朗報です。

今回の記事では、総合内科専門医の長谷川嘉哉が、オーソライズド・ジェネリックの利用をお勧めする理由をご紹介します。

1.ジェネリック医薬品は先発品とすべて同一ではない!

ジェネリック医薬品とは、先発医薬品(=新薬)の特許期間が終了した後に、厚生労働省の承認を得て製造・販売される新薬と同じ成分の医薬品です。先発医薬品と比べて、開発コストが安く抑えられるので、薬の値段も安価になります。

しかし薬は、原材料が同じであれば、効果も全く同じというわけではありません。薬は、原材料に、形や品質や効果を整えるために添加物を加え、それらを決まった製法で混ぜたり固めたりします。つまり、原材料以外も薬の効果に影響を及ぼすため、先発品とすべてが同じではないのです。

2.私が体験したジェネリックから先発品に戻した例

実際、私の外来でもジェネリックに変更後、明らかに効果が弱くなり、先発品に戻したケースもあります。

  • アリセプト:抗認知症薬のアリセプトですが、ジェネリックに変更後、意欲・反応が低下した方が数名います。いずれも家族の要望で、先発品に変更後改善しました。
  • ロキソニン:頭痛や腰痛といった、種々の痛みを抑えるロキソニン。この薬も、先発品のほうがよく効くといわれる方が多いです。ただし、先発品に変えることまでの差はないといわれる方も多いようです。
  • ゾーミック:片頭痛の薬であるゾーミックですが、もっともジェネリックへの変更による影響が大きい薬です。患者さんの、1/3から1/2で先発品に戻すことを希望されます。それだけ片頭痛の作用機序は繊細なのだと考えられます。詳しくは以下の記事も参考になさってください。

3.オーソライズド・ジェネリック(=AG)とは?

オーソライズド・ジェネリック(=AG)とは、「許諾をうけたジェネリック医薬品」という意味です。英語で、「Authorized Generic」で書くため、略して「AG(エージー)」と呼ばれています。

ジェネリック医薬品と異なり、先発医薬品から許可を得た、原材料、添加物、製法で作られます。つまり、AGは先発品と全く同じものが、安く提供されるのです。医師の立場からも、まったく同効能が期待できるAGが最も安心なのです。

4.お薦めオーソライズド・ジェネリック

このように、AGはとてもお得であり、以下に紹介するような、多くの患者さんが使用されている薬でも発売されています。


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  • ザイザル:抗アレルギー剤です。花粉症だけでなく、高齢者の全身掻痒感にも使われます。
  • ゼチーア:抗コレルテロール血症に対する薬です。比較的若い自己負担が3割の方が、継続して服用することが多いので、AGの販売は歓迎です。
  • セレコックス:痛み止めです。ロキソニン同様、ジェネリックでは効果に不安がありますが、AGであれば安心です。
  • メマリー:認知症専門外来では、必須の薬です。とても効果が繊細であるため、専門医としては、通常のジェネリックであれば変更するつもりはありませんでした。しかし、AGであれば安心して変更できると思っています。このことで、患者さんの自己負担軽減につながります。

5.黙っていたらオーソライズド・ジェネリックは処方されない

Pharmacist in drug store concept
医師、薬剤師に加えて患者さんの方でもAGに対する知識が必要です

先発品と完全に同等の信頼性があって、薬価が安いAG。誰もが処方してもらいたいものですが、黙っていればAGが処方されるわけではありません。

5-1.医師も薬局任せにしない

現在、多くの医師は薬を処方する場合に、処方箋には「ジェネリックへの変更可能」の指示をしています。しかし、そのままでは、患者さんにジェネリックが渡されるか、AGが渡されるかは、薬局の裁量となってしまいます。従って、医師もAGの処方をお願いする旨を薬局に伝える必要があります。

5-2.患者さんも要望しよう

最近では、AGの発売が相次いでいますので、すべてを医師が把握できていないこともあります。そのため、患者さん自身が、医師もしくは薬局でAGの処方を希望する旨を伝える必要があります。

5-3.製薬メーカーはオーソライズド・ジェネリックを取組むべき

実は、すべての薬にAGがあるわけではありません。実は、先発メーカーとしては、医師がジェネリックではなく先発品を処方してくれることが最も利益が出るのです。しかし、医療費高騰の現在、ジェネリックがあっての先発品処方はあり得ません。ならば、先発メーカーが自らの責任で、AGを生産して患者さんに届けることが責務です。もちろん、利益が減ることは間違いありませんが、特許が切れるまでは十分利益を得ていたはずなのです。

具体例としては、認知症の治療薬であるアリセプトは、AGはなく、ジェネリックしかありません。先発メーカーの責任として、エーザイ株式会社には早急にAGの生産をお願いしたいものです。

6.まとめ

  • 医療費の節減のためにも、ジェネリック医薬品の使用は避けられません。
  • ジェネリックは原料が同じだけで、添加物や製法が異なるため薬効に差があります。
  • オーソライズド・ジェネリックはすべてが先発品と同様であるため、信頼出来て薬価が安くなります。
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