喉のイガイガ、止まらない咳、げっぷ…逆流性食道炎かもしれません

喉のイガイガ、止まらない咳、げっぷ…逆流性食道炎かもしれません
2019-03-12

皆さんのなかで喉のイガイガが止まらない、夜間横になると咳が止まらない、食後にげっぷや胸やけが気になる方は見えないでしょうか? 中には、あまり症状も悪化しないため、我慢して放置されている方もいるかもしれません。病院に受診して、風邪もしくは胃炎と診断され薬を処方されるも今一つ改善しない方も見えるかもしれません。

実は、これらの原因が逆流性食道炎の可能性があるのです。逆流性食道炎は薬物治療が著効します。医師としてはできれば発見治療してあげたい病気です。今回の記事では、認定内科専門医の長谷川嘉哉が逆流性食道炎について解説します。

目次

1.逆流性食道炎とは?

逆流性食道炎は胃の中で食物を消化する胃酸や、胃で消化される途中の食物が食道に逆流して食道の中にとどまることで、酸に弱い食道の粘膜が胃酸によって炎症を起こし、びらんや潰瘍を起こす病気です。

欧米人に多く見られ、日本人の発症率は低かったのですが、高齢化が進んできたことや、食生活の欧米化に伴い、日本でも徐々に増加する傾向にあります。

Human Digestive System Stomach Anatomy
胃酸が食道を逆流してさまざまな症状を引き起こす病気です

2.症状

逆流性食道炎というと、消化器系の症状がメインと思いがちです。しかし、それ以外の部位でも症状が現れます。いずれも命にかかわるような病気ではありませんが、不快なものです。

2-1.喉の症状

逆流性食道炎では、胃酸が喉の奥までこみ上げてきてげっぷが出る呑酸(どんさん)という症状を起こします。その結果、喉がひりひりしたり、違和感も感じます。患者さんによっては、「風邪による喉の痛みが治らない」と訴えられる方も見えます。また食事で物を飲み込むと、つかえる感じがあって、食道癌を心配される方もいらっしゃいます。

2-2.気管支の症状

逆流性食道炎は、咳や喘息といった気管支の症状まで引き起こします。消化器の病気である「逆流性食道炎」が欧米では慢性咳嗽の三大疾患の一つとされています。なかなかよくならない慢性の咳は、逆流性食道炎が原因のこともあるのです。

2-3.胃・食道の症状

胃酸が食道に逆流することで胸やけがおこります。食道への刺激が強いと、胸が締め付けられるような痛みを感じることもあります。また胃における食物の消化作用や腸に送り出す動きが弱くなり、胃もたれや食欲不振の原因となります。

Woman having sore throat
胃酸を感じずに、喉の違和感や咳となって出ることもあります

3.診断

逆流性食道炎は以下の手順で診断していきます。

3-1.問診

食道逆流症の診断は、逆流の有無を知ることが最も確実です。しかし、その為には食道内pH測定や内圧測定が必要ですが、患者さんの負担が大きくどこでも出来る検査ではありません。大半の医師は症状重視で胃食道逆流症と診断しています。報告では、このような問診(聞き取り)でおよそ60~70%の診断が可能といわれています。

Treatment of esophageal cancer concept
食道がんは特に見落としてはいけない疾患です

3-2.胃内視鏡

食道における炎症の程度や範囲の詳細を調べるとともに、他の病気、とくに食道がんや食道裂孔ヘルニアの有無の鑑別を行います。必要に応じて、食道の病変を採取し、病理検査を行います。

3-3.診断的治療

自覚症状があっても内視鏡検査で異常がみつからない場合。もしくは内視鏡検査の実施が難しい場合には、胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ阻害薬 (PPI) を診断目的で投与します。これはプロトンポンプ阻害薬を1週間程服用し、胸やけなどの自覚症状が改善されるかどうかをみる診断的治療です。逆流性食道炎ではPPIが著効します。


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*診断的治療:症状の原因が明らかでない場合に、特定の疾患を想定して治療を行うこと。治療に効果があればその疾患と診断し、効果がなかった場合は、別の疾患の治療を試しながら診断を確定する。

4.悪化要因も取り除く

逆流性食道炎は生活習慣や姿勢・体型も悪化要因となります。

4-1.生活習慣

  • 食べ過ぎ:食べ過ぎるとゲップが出るのは、食道と胃のつなぎ目の「噴門」が、一時的に開いて胃にたまった空気を出す現象です。このとき空気だけでなく胃酸の逆流も起こるのです。
  • 高脂肪食:高脂肪食を摂取すると、コレシストキニンというホルモンが分泌されます。このホルモンにより「噴門」が開いて胃酸の逆流を起こしやすくなります。
  • 食べてすぐ寝る:食後はもっとも胃酸逆流がおこる時間帯です。食べてすぐに寝ると、逆流した胃酸が長時間食道内にとどまり、逆流性食道炎が発生しやすくなります。
  • 喫煙:たばこは、下部食道括約筋圧を低下させ、逆流性食道炎の増悪因子となるので避けましょう。

4-2.姿勢・体型

  • 円背・亀背:骨粗しょう症による背骨の変形椎体骨折では脊柱の変形が発生するして、前屈が強くなり、胃酸の逆流が起こりやすくなります。*円背・亀背:背中の丸まりが増加した状態です。
  • 前かがみ姿勢:庭仕事のような前かがみ姿勢や、腹部を締めすぎる服装、おなかに力をかける仕事をしている人は、おなか全体が圧迫され、胃酸の逆流が起こりやすくなります。
  • 肥満:内臓脂肪が蓄積している肥満の方、妊娠されている方は、胃が圧迫されるため、胃酸の逆流が起こりやすくなります。

5.内科的治療が著効

逆流性食道炎の治療薬としては以下のようなお薬を投与致します。

5-1.胃酸分泌を抑制する

胃内を中和させる目的でPPI(プロトンポンプ阻害薬)やH2ブロッカーが用いられます。逆流性食道炎の場合、H2ブロッカーがあまり効かないことが多く、PPIが用いられます。PPIは著効するため、患者さんは治癒したと勘違いして休薬を希望されます。しかし、休薬するとすぐに再発するので継続的な服薬が大事です。

*PPI(プロトンポンプ阻害薬)の代表的な薬品名:オメプラゾール、タケプロン、パリエット、ネキシウム、タケキャブなど

*H2ブロッカーの代表的な薬品名:タガメット、ガスター、ザンタックなど

5-2.胃内容の逆流防止

胃の内容の逆流防止および食道運動促進を目的に消化管運動機能改善薬が使用します。

*消化管運動機能改善薬の代表的な薬品名:ガスモチン、ガナトン

5-3.外科的治療

PPIにより症状のコントロールが可能となり、外科治療を選択することは少なくなりました。それでも、PPIでコントロールできない場合、服薬の中止で再燃・再発を繰り返す症例、食道狭窄、短食道などの合併症を認める場合には、手術療法が選択されます。

6.まとめ

  • 逆流性食道炎は、高齢化および食の欧米化に伴い日本でも患者数が増えています。
  • 症状は、消化器症状だけでなく、喉の痛みや、慢性の咳など他の部位の症状も引き起こします。
  • プロトンポンプ阻害薬 (PPI)という薬が著効することが、診断と治療になります。
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