突然「まぶたがぴくぴく」してお困りではありませんか? 原因に心当たりがない場合もありますし、「目の疲れかな?」と思われる方もいるでしょう。しかし、心のどこかで「何か大きな病気の前兆では?」と心配されているかもしれません。
実際に、いろいろな原因がこのまぶたぴくぴくを引き起こします。心配いらない一過性のものが多いですが、なかには精密検査が必要な場合もあります。
このときに眼科を受診すると、眼科領域以外に原因がある場合に見落とされてしまうことがあります。では何科を受診すればいいのでしょうか?
この記事では、神経系の病気を専門とする長谷川嘉哉が、このよくわからない「まぶたぴくぴく」の原因と代表的疾患名、さらに重大な病気の可能性がある場合のチェックポイント、セルフでできる改善法と再発予防策をお伝えしますのでお困りの方はぜひ参考になさってください。
目次
1.まぶたのぴくぴく。重症度を知るセルフチェックポイント
まぶたがぴくぴくした場合は、左右と場所で大方の診断がついてしまいます。逆に、診察している医師から以下の質問をされなかった場合は、その医師はこの分野の知識と経験が欠如していると判断しましょう。
1-1.両目がぴくぴくする場合
まぶたのぴくぴくが、片側に限定しているのか、両目ともにぴくぴくするかを判断しましょう。さらに、その程度が重要になります。まず、両目がぴくぴくするだけの場合は、通常は様子観察で問題ありません。但し、両目が閉じてしまうほどの症状の場合、特に運転中に両目が閉じてしまう場合は、専門医を受診しましょう。
1-2.片目だけぴくぴくする場合
片目がぴくぴくする場合は、同時に額や口の周りもぴくぴくしないかを判断しましょう。上まぶたや下まぶたにだけ限定してぴくぴくする場合はほとんどのケースで問題はありません。病院に受診する必要もないと考えて大丈夫です。
1-3.口や額もぴくぴく
片目がぴくぴくするだけでなく、額や口までがぴくぴくする場合は、精密検査が必要です。自身の感覚だけでなく、鏡を見たり、他人にチェックしてもらいましょう。
2.精密検査が必要な片目のぴくぴくとは
片側の目をつぶるための筋肉、笑うときに収縮する筋肉、口の開閉にかかわる筋肉が勝手にぴくぴくした場合は、片側顔面けいれんが疑われますので精密検査が必要です。原因として、命に関わることもありますので必ず精密検査を受けましょう。以前に、当グループに税務調査に来た担当者がまさにこれでした。調査中に「脳腫瘍の場合、命に関わることがありますから、必ず受診してくださいね」と言い続けたところ、とても優しい対応をしていただきました。
2-1.片側顔面けいれんの可能性
40歳以上に多く、男女比はほぼ1:2で女性が多いです。初期の頃は目の周囲だけが気になりますが、だんだん片側の顔全体の筋肉の勝手な運動が出没するようになります。このぴくぴくは話したり、笑ったり、食べたり、目や口を動かしているときに出やすく、また緊張すると出る人もあります。なかには、耳鳴りを伴う例もあります。
2-2.片側顔面けいれんの原因
片側の顔面神経が脳幹から出てくるところで、正常な血管(動脈)とぶつかって、勝手に興奮させられている場合が、原因として最も多いものです。顔面神経は、上に示したような筋肉の運動を起こしている運動神経で、痛みの神経とは無関係ですので、痛みは伴いません。ときには血管でなく腫瘍や血管瘤が神経にぶつかっていることもあるので、一度は画像診断が必要です。
2-3.片側顔面けいれんの治療
治療は、投薬治療としてはカルバマゼピン(テグレトール)などの抗痙攣薬を用いてけいれんを緩和させる治療もありますが、根本的な治療ではない為、完全にけいれんを取り除くことは難しいです。
脳外科的に神経と血管がぶつからないようにする手術が最も根治的治療ですが、特に60歳以上ではリスクもあるので勧められません。最近は勝手に動く筋肉にボツリヌス毒素A製剤を少量注射して、けいれんを止める方法が主流になりつつあります。効果は3~4か月ですので定期的に注射を打ってもらう必要があります。
3.何科を受診?
1章で述べたぴくぴくのうち、検査が必要な可能性がある場合、何科を受診すればよいのでしょうか?
3-1.脳神経内科か脳神経外科
脳神経内科か脳神経外科の診断が必要になります。ここで大事なのは「問診」です。1章でご紹介した両側なのか片側なのか、額や口の周囲まで広がるのかを確認して精査が必要かを判断します。医師にとっては、この問診である程度、検査方針が決まります。問診が不十分では専門外ということになりますし、問診の内容がセルフチェックでき、ご自身で問題なさそうと思われればそもそも受診の必要がありません。
3-2.CTだけでは不十分、必ずMRIとMRAを
眼だけでなく額や口の周囲もぴくぴくする場合は、画像診断が必須です。この場合、頭部CTでは不十分です。診断はMRIによる顔面神経周囲に並走、またはループを形成する血管の存在。顔面神経の起始部の脳幹部への血管圧迫所見。又は腫瘍の存在を検索します。
4.まぶたピクピクの代表疾患
まぶたがピクピクする代表疾患を紹介します。
4-1.眼瞼(がんけん)けいれん
症状は通常、両目に起こります。初期症状としては、まぶたの不快感、まぶしく感じる、まばたきが多くなる、などがあります。進行すると、まぶたが頻繁にけいれんし、目をうまく開けていられないため、人や物にぶつかるなど、生活に支障が出るようになります。さらに進行すると自分の意思ではまぶたをあけることができなくなります。
根治的に治す方法はありませんが、逆にこれで命を落とすこともありません。最も用いられる対症治療は、眼周囲の皮膚にボツリヌス毒素Aを製剤にしたものを少量注射して、目をつぶる力を弱める方法が一般的です。
4-2.眼瞼ミオトニア
疲れたときなど、まぶたの一部がぴくぴくと動く症状です。顔面ミオトニアは上下のまぶたの一部だけが微細に動くだけで、決してほかの部位には拡大しません。比較的軽い病気ですから、原因を取り除いてあげることで自然治癒が期待できます。
原因としては肉体的な疲労だけではなく、精神的なストレスでも起こりやすく、コーヒーを飲んでも症状が強く出る場合があります。通常は数日~数週間で自然におさまります。
4-3.チック症
小児や青年期を中心に、体の一部分が勝手に動いてしまう症状をいいます。顔に起こったときは、まばたきが多くなることもあります。通常は心の働きの関与によって起こるとされています。一時的であれば、我慢して症状を抑えることができるという特徴を持っています。実は私自身、大学受験の時にチックの症状が出ていましたが、大学合格により一瞬で治ってしまった経験があります。
4−4.メガネの度が合っていない
本を読んでいる時やパソコンをしている時に目がけいれんするのなら、眼鏡の度数があっていないかもしれません。まぶたがぴくぴくするのは、目が頑張って焦点を合わせようとしているからかもしれないのです。あまりにもぴくぴくするのが続くようなら一度眼科に行って、視力や度数の検査を行なってください。
5.まぶたピクピクを改善させる生活習慣
ピクピクがまぶた以外に広がる片側顔面けいれんや、両目に起こる顔面けいれんはそれぞれの治療が必要です。しかし、大部分の目の周囲に限定するまぶたのピクピクは生活習慣で改善できます
5-1.眼精疲労・ドライアイを予防しよう
最近のまぶたピクピクで最も頻度が多いのが眼精疲労・ドライアイです。日々の生活でできるだけ目の負担を減らしましょう。私は、特に寝る前に眼を暖めることをお勧めしています。眼精疲労・ドライアイだけでなく、自律神経も穏やかにするのでお勧めです。以下の記事もご覧になってください。
5-2.カフェインを取りすぎない
コーヒーを飲む習慣が目のけいれんの原因になりえます。実は目の筋肉は、他の筋肉に比べてカフェインの作用を受けやすい特徴があります。心拍数と代謝を上げる作用があるカフェインが、筋肉を興奮させて目がピクピクするのです。
5-3.ストレスを溜めない
身体はストレスに色々な形で反応します。目のけいれんもその一つです。まぶたのぴくぴくが「身体が何かに対してもう無理」と訴えているサインともいえます。なにか思い当たるフシはありませんか?
6.まとめ
- まぶたがぴくぴくする場合、片目の周囲だけに限定する場合は、ほとんどは問題がありません。
- 額や口の周りに広がる場合や、両目に広がる場合は専門医の受診が必要です。
- その場合、脳神経外科もしくは脳神経内科に受診しましょう。