日本における高血圧の患者数は、約4,300万人と推定されています。そのため外来でもかなりの患者さんがいらっしゃいます。最近では、降圧薬の進歩によって、1~2種類の薬で良好に血圧をコントロールすることができます。しかし、稀に薬をどれだけ加えても血圧が下がらない人たちがいます。このようなケースを難治性高血圧というのですが、その中に睡眠無呼吸症候群を基礎に持つ患者さんがいらっしゃいます。このようなケースでは降圧剤の増量以前に、無呼吸のコントロールが重要です。今回の記事では、難治性高血圧の患者さんについて解説します。
目次 [非表示]
1.難治性高血圧とは?
難治性高血圧とは、3種類以上の降圧薬を使用しても血圧が下がらない高血圧を言います。従来は、難治性高血圧の原因は以下と考えられていました。
- 異常な生活習慣:非常識な飲酒、大量の喫煙、運動不足
- 高度肥満(体格指数(BMI)が35以上である状態)
- 副腎の良性腫瘍による原発性アルドステロン症
最近当院では積極的に睡眠時無呼吸症候群の診断をしています。そうすると上記以外に、難治性高血圧の患者さんが、実は睡眠時無呼吸症候群が原因であるケースが見つかっています。
2.若年発症の脳出血患者さん
最近、2例ほど50歳未満の脳出血患者さんを経験しました。いずれも難治性高血圧であり、それが原因の高血圧性脳出血を発症していました。いずれも若くして片麻痺の後遺症を残してしまいました。かなりの量の降圧薬を使用しても血圧のコントロールは不良で再発作も心配していました。しかし、ご家族との話の中でいびきがかなりひどいことが分かり、検査をしたところいずれも重度の睡眠時無呼吸症候群と診断されました。現在は、Continuous Positive Airway Pressure(CPAP:シーパップ)治療を開始、血圧のコントロールも良好になっています。
3.睡眠時無呼吸で血圧が上がることは当たり前?
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、ひどい人ですと1分程度の呼吸停止が30回以上見られます。これって想像してみてください。日常生活で1分間息を止めるだけでも結構きついものです。それを何度も繰り返せば、とても良質な睡眠がとれるわけはありません。結果、睡眠中は副交感神経優位になるべきなのに、常に交感神経が過剰興奮しているのです。これでは血圧が高くなってもやむを得ないのです。
4.まとめ
- 難治性高血圧の患者さんは、睡眠時無呼吸症候群が原因である可能性があります。
- 若くして脳血管障害を起こした患者さんは、一度は睡眠時無呼吸症候群のチェックが理想です。
- 睡眠時無呼吸症候群が認められた場合は、CPAPの使用が再発予防にまでつながります。