新型コロナウイルスへの抗体が体内にできたとしても安心してはいけない理由

新型コロナウイルスへの抗体が体内にできたとしても安心してはいけない理由

20205月、人気歌手のマドンナさんが、自身のSNS上で新型コロナウイルスの感染歴を調べる抗体検査で陽性だったことを明かしました。さらに、マドンナさんは「明日は長いドライブに出かける。窓を開けて新型コロナの空気を吸おう」とも語っています。これはウイルスへの抗体に対する認識が大きく間違っています。実は、抗体を持っていても再び感染する可能性はあるのです。新型コロナウイルスの抗体については、誤解が多いようです。今回の記事では、総合内科専門医の長谷川嘉哉が、ウイルスの抗体やワクチンについて解説します。

1.抗体・免疫・ワクチンとは?

Leukocytes killing bacteria
その病気に罹った状態を事前に作り出し、それに対する抵抗力で、実際の病原体から身を守ろうとします

抗体とは、病原体などの「身体にとっての異物」が体内に入った時に、特異的に反応する物質の総称です。人間の身体は、ウイルスなどの感染症に罹ると、抗体が作られ、外から侵入した病原体を攻撃する仕組みがあります。この仕組みを、「免疫」といいます。この免疫の仕組みを利用したものが「ワクチン」です。前もってワクチンを接種することで、病原体(ウイルスや細菌)に対する免疫を作り、病気になりにくくするのです。(ワクチンは主に予防の観点で使われます)

2.抗体は万能ではない

young woman wear mask in the city during Smog day
他のウイルス性疾患と同様に新型コロナウイルスでも、たとえ抗体が体内にできたとしても罹患してしまう可能性はあると考えます

そもそも抗体があれば、まったく病気にならないわけでではありません。

2-1.インフルエンザでは抗体はあっても罹患する

皆さんの中にも、インフルエンザワクチンを予防接種しても罹患した方がいらっしゃるのではないでしょうか? 当院でも毎年、予防接種をしても罹るスタッフがいたので、予防接種前にインフルエンザの抗体値を測定したことがあります。驚いたことに、全員が昨年の予防接種後から1年経っていても十分な抗体値を持っていました。その状態で、さらに予防接種をするわけですから、インフルエンザが流行っている際にも十分な抗体値があることが予想されます。それでも、罹る人は罹るのです。つまり、抗体があったとしても絶対に発症しないことにはならないのです。

2-2.新型コロナウイルスでは感染しても抗体がつきにくい?

そもそも、新型コロナウイルスは不明なことだらけです。以下の報道がありました。

中国の復旦大学の研究チームは、2020年2月26時点で軽度の新型コロナウイルス感染症から回復し、上海公衆衛生臨床センターから退院した175名の血漿を採取。その結果、約30%は抗体レベルが極めて低く、そのうち10名はその抗体力価が検出可能な最低レベルを下回っていた。(ニューズウイーク・「回復した人の3割が十分な抗体を持たず」と中国の研究結果:新型コロナウイルス

つまり、罹患しても、ワクチンを打っても十分な抗体ができる人が少ない可能性もあるのです。

2-3.怪しげな抗体キットは全く無意味

つまり、新型コロナウイルスでは、仮に抗体がついたとしても、その効果についても分かっていません。精度についても正確性がわからないのです。そのため、抗体が測定できるという怪しげなキットを購入しても全く意味がないのです。この様な段階で、抗体があるからといって自由に外出してよい理由には全くならないのです。自分が軽症で済む根拠もなく、また他の人には感染させてしまう可能性も低くありません。

3.新型コロナは終生免疫ではない

麻疹ウイルスや水痘ウイルスなどは一度感染すると、その後二度と感染しません。こういった免疫を終生免疫と呼んでいます。しかし、世の中にあるウイルス全てに対して終生免疫を獲得できるわけではありません。

例えば、インフルエンザなど、毎年かかる方もいることを考えると終生免疫ではありません。これは、インフルエンザというウイルスが終生免疫を獲得できないこと、さらに免疫力が持続しないことから、その年の感染は免れることができたとしても次の年には免疫力がなくなっており、また感染してしまうからです。

新型コロナウイルスに関しては、研究段階であり明確ではありません。しかし、専門家が共通して述べているのは、「新型コロナウイルス(COVID-19)の終生免疫獲得はできないだろう」ということです。その理由については以下の2点が指摘されています。

  • 新型コロナウイルス以外のほかのコロナウイルス(風邪ウイルスもそうです)が感染を繰り返すタイプのものだから。
  • 2002年から翌年にかけて流行したコロナウイルスの一種による重症急性呼吸器症候群(SARS)も免疫持続期間は平均して約3年しかなかった。

4.新型コロナウイルスへの対応方法とは

ならば、新型コロナウイルスへはどのように対応すれば良いのでしょうか?

4-1.ワクチンも一定の効果はあると考えられる

世界中の国や製薬メーカーが現在、力を入れて開発しているワクチン。効果的なワクチンが開発されたとして、それを打っても、感染や発症をしないとは言い切れないことから、効果は100%ではありません。しかし、多くの人がそのようなワクチンを打てば、感染者の数を減らすことができ、その結果、感染拡大が抑えられます。つまり、ワクチンによって「集団免疫」が働く効果は期待できるのです。

*集団免疫:人口のうち一定割合の人がこの免疫を身に付ければ、ウイルスは感染を拡大することができなくなり、自然に収束に向かうことになる。

4-2.治療薬とワクチンを組み合わせることになる

治療薬についても、現状では万能ではありません。新型コロナウイルスに対しては、早期にワクチンを開発することで、集団免疫を確保。それでも感染・発症した患者さんに治療薬を行うこと対応するしかないのです。

4-3.自身の免疫力を高めることが第一

インフルエンザでも同様ですが、ワクチンをうって、治療薬があっても、大事なことは規則正しい生活を送ることです。ワクチンによって抗体がついても、罹ることはあります。治療薬があっても効果がないこともあります。だからこそ、規則正しい生活を送ることで、自身の免疫力を高めておくことが何よりも重要なのです。

5.ワクチンの副作用を忘れてはいけない

Vaccination
安全性が比較的高いものでも、体内に入れるということは副反応が起こり得る可能性があります

現在の、新型コロナワクチンの議論を見ていると、ワクチンの副作用について軽視していると感じてしまいます。

5-1.一定の重篤な副反応が必ず起こる

ワクチンは、健康な人に向けて、予防の目的で接種されます。もし、ワクチンを投与したことで、健康な人が病気になってしまうようなら、大問題となります。そのため、ワクチンには、有効性と安全性を兼ね備えることが条件となります。しかし、100%副反応のないワクチンはあり得ません。必ず、一定数の副反応が起こるのです。

*副反応:一般的に薬物に伴うものは副作用といいますが、ワクチンの場合副反応といいます。ワクチンの副反応には軽いものから、重篤なものまであります。

5-2.命に関わる副反応も

ワクチンの副反応の大部分は軽いものです。しかし、稀ですが、ショック、アナフィラキシー様症状(全身のかゆみやじんま疹、腫れが、喘鳴や呼吸困難、失神)が見られることもあります。また、急性散在性脳脊髄炎といった自己免疫的な機序による疾患も起こり得るのです。これが、ワクチンが開発されれば安全かつ安心でどんどん使える、とは考えられない理由です。

5-3.どんな予防接種も摂取後30分間安静にしていただきたい

予防接種の副反応を知っているため、我々医師は、どのようなワクチン接種でも緊張するものです。そのために予防接種後は、できれば接種した医療機関で30分安静にしてもらうのです。私が以前、医師会の仕事で小児の予防接種を行った際、お父さんが子育ての記念にと、ビデオ撮影を始め出しました。あまりの緊張感のなさに、「予防接種の危険性」を厳しく説明して、退出いただきました。まさに、現在の新型コロナウイルスに対するワクチンの議論の際には、副反応の危険性が忘れられているようで不安になります。

6.まとめ

  • 新型コロナウイルスの抗体が陽性であることは、感染・発症しない証明ではありません
  • 新型コロナウイルスに対しては、集団免疫を得るためのワクチンと治療薬を組み合わせる必要があります、もっとも大事なことは、自身の免疫力を上げることです。
  • ワクチンには一定数、命に関わるような副反応もあること忘れてはいけません
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