ドッグセラピーから学ぶ、使命感が認知症患者さんを改善する5つの理由

ドッグセラピーから学ぶ、使命感が認知症患者さんを改善する5つの理由

私が代表理事を務めるグループホームでは定期的にドッグセラピーを行っています。ドッグセラピーを行うと、多くの方が目を輝かせて、積極的に犬と関わりあいます。その姿は、本当に愛おしいものを見るまなざしでとても優しいものです。家族によると、もともとは犬嫌いであった患者さんも、ドッグセラピーの場では愛おしそうなまなざしをされるから不思議です。このようなドッグセラピーは、認知症介護サービスにおいて積極的に取り入れるべきと考えています。

今回の記事では、月に1000名の認知症患者さんを診る専門医長谷川嘉哉がドッグセラピーについて解説します。

1.ドッグセラピーとは?

ドッグセラピーとは、難しい言葉でいうと「動物介在療法というアニマルセラピー」の一種です。犬との触れ合いを通じて、精神・身体のリハビリテーション・治療を目的とします。1970年頃から欧米で普及し始めたようです。

私が専門とする認知症の分野では、犬と関わることで記銘力が良くなったり、自発性があがったり、情緒が安定するなどの効果が期待されています。

2.介護施設での導入方法

ドッグセラピーには大きく分けると2種類の方法があります。

2-1.集団ドッグセラピー

集団ドッグセラピーは、レクリエーションの一貫として行われます。私のグループホームなどの介護施設では、集団ドッグセラピーが多いようです。

2-2.個別ドッグセラピー

個別ドックセラピーは、一人一人に対して行われます。20-30分の時間、犬に話しかけたり、餌をあげたり、撫でたりしながら、犬とのコミュニケーションを図ることで症状の改善を目標とします。

個別セラピーの場合は、集団に比べ、個々の目標を決めて行うため、効果判定がはっきり分かります。

Senior woman petting her hound dog
個別ドッグセラピーのイメージ

3.ドッグセラピーの効果は?

ドックセラピーには以下のような効果が報告されています。

3-1.意欲の向上

認知症の初期症状は意欲の低下です。そうなると、活動性も低下し、表情も乏しくなりがちです。そんな方でも、ドッグセラピーでは犬への興味を持って積極的に犬を撫でたり、触ったり、抱きしめたりと意欲的な行動がみられるようになります。

このような変化は、もともと犬が嫌いであった人にも見られるから不思議です。

Dog and Seniors
犬嫌いだった方も、なぜか優しく接するようになることが多いです

3-2.表情が豊かになる

犬に触れ合うことで、自然に笑顔が見られ、表情も穏やかになります。その結果日ごろの不安感が軽減され、精神的な安定も見られます。このような変化は、犬を飼っていた方はもちろん、殆ど犬に接したことがない方にも見られるから不思議です。

3-3.言葉数が増える

認知症が進行すると言葉数も減ってきます。そんな時にドッグセラピーを行うと、犬に話しかけたり、犬の話題にして他人とのやり取りが増えることで言葉数も増えてきます。そんな患者さんの変化は、家族にとっても嬉しいものです。

4.なぜドッグセラピーは効果がある?

なぜドックセラピーは効果があるのでしょうか?

4-1.自発的な使命感が生まれる

私は、ドッグセラピーが効果がある原因の一つは、人間に備わった「守ってあげたい」、「いたわってあげたい」といった自発的な使命感だと思います。多くの患者さんは、認知症が進行するにしたがって、他人から保護されることばかりになります。患者さん自身が他人のために行動することが殆どなくなるのです。しかし、人間はいつまでも他人のために何か行動することで、存在意義を感じるものなのです。まさにドッグセラピーでは、使命感を刺激するのです。

4-2.ストレスの軽減効果

以下のような実験で、ストレスの軽減で心が穏やかになる理由が報告されています。

認知高齢者に対して犬を用いた動物介在療法を実施した群と実施していない群とを比べた研究で、精神的ストレスがあると上昇する唾液アミラーゼ活性値が動物介在療法を実施した群で有意に下がっていることがみられた。同時に、活動性をはかるテストでも動物介在療法を実施した群で活動性が高い結果となり、笑顔や発話、犬への興味、活動量の増大も、行動から観察できたことから精神的・身体的活動の向上が図られた。(川崎医療福祉学会誌ー認知症高齢者に対するイヌによる動物介在療法の有用性 太湯好子ら他4名)

5.ドッグセラピー以外で同様の効果を生む方法

私の日々の診療では、ドッグセラピーと同一にしては申し訳ないのですが、同様な効果を認める事柄がありますのでご紹介します。ドッグセラピーを導入できない所でも何か参考になれば幸いです。

5-1.自分より進行した患者さんへのいたわり

グループホームに入居されている方は、全員が認知症です。その中には、軽症から重度の方がいらっしゃいます。認知症患者さんは、自分より症状が進行している方には、優しくいたわり、時に手助けをされます。その結果、手助けしている方の方が、改善されていくことが多いと感じます。まさに、使命感が認知症の症状を改善するのです。

5-2.家事の手伝い

認知症の患者さんは、自宅では家事も行わない方が殆どです。機能的には、全くできないことはないのですが、家族の方にしてみれば、患者さんにやってもらう方が時間と手間が余分にかかってしまうのです。その点、グループホームなどの入居施設では、出来ることはできる範囲で手伝ってもらいます。

実際に、野菜を切ってもらったり、お皿を並べてもらったり、洗濯ものを畳んでももらったりしてもらいます。介護者が、少し注意をしてあげれば、かなりのことができるものです。

5-3.園芸療法

笑いの演芸も認知症には効果がありますが、花や野菜を育てる園芸療法も有効です。やはり、生命を世話しながら育てることは、ドックセラピー同様に使命感を刺激するようです。

6.まとめ

  • グループホームなどの介護施設では、ドックセラピーが導入されています。
  • ドックセラピーは、意欲を刺激し、表情を改善し、言葉数も増えてきます。
  • ドックセラピー改善の一因である、使命感は、自分より進行した利用者さん、家事の手伝い、園芸療法などでも同様に発揮されます。
error: Content is protected !!