多くの方とお話をしていて、“脳ドック”と“認知症ドック”を正確に理解されていないことに気が付きます。
例えば、『先日、脳ドックで異常がなかったから認知症は心配ない』
『身内に脳血管障害の人がいるから、認知症ドックを受けようと思います』とおっしゃる方が見えます。
残念ながら、二人はいずれも間違っています。
脳ドックとは、実施施設によって多少の違いがありますが、中心となるのはMRIとMRAによる画像診断です。
MRIによって、小さな梗塞などもはっきりと映し出せます。
MRAでは血管を立体画像として映し出します。
動脈硬化が進行して血流が細くなっている血管を発見したり、動脈瘤を発見することができます。
以上から、脳ドックで異常がなければ、数年以内に脳梗塞や、くも膜下出血が発症する頻度はかなり低いといえます。
しかし、これらの検査では認知症の診断や、早期発見はできません。
認知症については、『認知症ドック』もしくは『もの忘れドック」を受診する必要があります。
やはり施設によって多少の違いがありますが、最初にMRIを用いた画像検査を行います。
注意が必要ですが、脳ドックで行われるMRAは行われないことが多く、脳血管の狭窄や動脈瘤については検索されません。ですから身内に脳血管障害がいる方にとって、認知症ドックでは不十分となります。
認知症ドックでは、MRI画像から記憶の重要な場所である海馬の萎縮度の測定をしたり、記憶力、認知力の低下を図る認知力テストをおこないます。その結果、もの忘れが“年齢にともなうもの忘れ”なのか、それとも対処・治療を必要とする認知症あるいはその前段階なのかを判断します。
つまり、脳全般のドックを万遍なく受けるためには、脳ドックと認知症ドックの両方を受ける必要があるのです。