認知症保険に入る前に知っておくべき専門医が教える5つのポイント

認知症保険に入る前に知っておくべき専門医が教える5つのポイント
2017-10-13

認知症保険という保険商品が増えてきました。特に、認知症特化型保険を発売した某生命保険の「認知症治療保険」は2016年3月に発売して半年で、23万件の契約を獲得。異例の大ヒットになったそうです。

このような広告を目にすると、認知症保険加入を考える方も多いかもしれません。しかしその内容は少々わかりづらいのではないでしょうか。

私自身認知症専門医でありながらファイナンシャルプランナー資格も取得して日々診療にあたっています。なぜならば、認知症専門外来では、医学的な診断治療だけでなく、介護サービスの利用、さらに社会資本の利用(公的補助)までを含めた対応をする必要があるからです。ですので、認知症の方にどのような保険が最適なのかを両面から捉えることができていると自負しています。

この記事では、認知症保険について、ファイナンシャルプランナー資格を持つ認知症専門医としてアドバイスをさせていただきます。

1.加入しているのは誰?

まず誰が認知症保険に加入しているのでしょうか? 数社の保険を見てみると、契約年齢は、20歳から85歳となっています。保険お支払い期間も10年から終身になっています。加入されている方は、大きく2つの世代に分かれるようです。

・若い世代(40-50歳代)の方が、自分が将来困らないために認知症保険に加入するケース

・親世代(70-80歳)の方が、子供たちに負担をかけたくないために認知症保険に加入するケース

2.現状の認知症保険を強くお勧めしない理由

そもそも、認知症保険に加入する必要があるのでしょうか? 認知症保険の保障内容は、認知症になったら一時給付金や年金で支払うという触れ込みです。そもそも、認知症保険の保障は何のために必要なのでしょうか? これも加入する世代により異なります。

・若い世代であれば、認知症になって働けなくなった際の生活保障:確かに、働き盛りの時に認知症になれば日々の生活を保障する保険は魅力的です。しかし、働けなくなる理由は認知症だけでしょうか?

交通事故、ガン、心臓疾患、脳血管障害によっても働くことはできません。保険会社によっては認知症でだけでなく、7大生活習慣病、老人性白内障、熱中症などによる入院・手術・放射線治療を保障する保険もありますが、あくまで入院手術のみの対応です。働けなくなった際の生活保障は認知症保険でなく、働けない場合の収入を保障する、所得保証保険や就労不能保険の方が目的に合致していると思われます。

・親世代であれば、認知症になった際の介護費用の保障:これも高齢になった際の、要介護の原因は認知症だけではありません。脳血管障害や、骨折など多岐にわたります。はっきり言えば、認知症保険より、要介護を広く保障する民間の介護保険がお勧めです。

以上の観点をふまえ、その上でも加入を検討したい人には、選ぶ際に是非覚えておきたい知識として、次章から詳しくお伝えします。

Health insurance application on tablet
手軽に保険商品に加入できるようになりましたが、その中身についてはよく吟味が必要です

3.認知症保険の保険金支払い条件は

専門医として気になるのは、せっかく加入した認知症保険が、どのような状態になると支払われるかです。ある保険会社の基準は以下のようになります。


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器質性の認知症を保障します。器質性の認知症とは、脳の組織の変化による病気です。
認知症により、「時間」「場所」「人物」のいずれかの認識ができなくなったときを保障します。
・アルツハイマー型認知症
・脳血管性認知症
・パーキンソン病の認知症
・クロイツフェルト・ヤコブ病の認知症など
*認知症治療給付金は、生まれて初めて器質性認知症に該当し、かつ、意識障害のない状態において所定の見当識障害があると診断確定され、その状態が180日以上継続した時にお支払いします。

実は、こう言った保険会社の独自の基準や、所定のといった表現が医師としてはとても悩みどころなのです。確かに、診断はできます。しかし気をつけないといけないのは、診断されただけでは保険金は支払われないのです。診断されてかつ、”会社独自の診断基準“を満たす必要があるのです。主治医が、適切に所定の見当識障害を記載してくれないと、長年かけた保険が意味のないものになってしまうのです。

4.保険の支払事由を知っておこう

ファイナンシャルプランナー資格をもつ認知症専門医でも、記載に困る診断書は結構あるものです。そのために、加入するみなさんには、保険が実際に支払われる“支払事由”を知っておきましょう。支払事由には大きく分けて3つです。

・連動型
・非連動型
・一部連動型 の3つに分けられます。

診断書を記載する医師としては、お勧めは「連動型」です。連動型とは、支払事由が、『公的介護保険』等に連動しているものです。一方で、非連動型は、あくまで会社独自の基準によって支払われるものです。最近では、公的介護保険と会社独自の基準の両者で支払われる保険も見受けられます。

会社独自の基準は、あくまで独自であって、医師には理解しづらいことが多いものです。時に、“本当に支払う気があるのか?”と疑わしくなる基準さえ存在します。

一方、公的介護保険に連動していれば、その基準は医師にとっても分かりやすいものです。仮に、いったんは支払事由を満たさなくても、状態が変化すれば、介護保険の認定を“再申請”すればよいのです。認知症保険を検討するなら、掛け金の安い高いでなく、支払事由が『公的介護保険』と連動しているものがお勧めです。

5.認知症保険を販売している保険会社の性質は?

賛否があるかもしれませんが、認知症保険を大々的に販売している保険会社は大手のでないことが多いものです。確かに、認知症保険などというと時代にマッチしていて、ニュース性があります。保険会社が、宣伝目的としてネーミングが良く、マスコミ受けしそうな保険を販売していることさえあります。

本当の保障は、他の保険でカバーできるのは? と思ってしまいます。例えば、たとえば、ある保険では下記のようになっています。

50才の女性が終身払いで契約した場合、毎月の保険料は約7000円です。平均寿命までの35年間で、支払った保険料総額が300万円を超えます。

これを計算すると一時金は300万円ですから、35年間健康で認知症などにならなければ損をするものもあるのです。

要するに保険会社としては、売りたい保険なのかもしれませんが、一般の方が入るべき保険ではないこともあるのです。

Smiling senior husband and wife
大病を患ったとしても、社会資本である程度まかなうことができます

6.まとめ

認知症保険を検討するなら、若い世代なら就労不能(=働けない)を保障するような保険がお勧め。
高齢者なら、認知症だけでなく介護全般が保証される民間介護保険がお勧め。
どうしても認知症保険に加入したいときは、公的保険に連動しているものを選びましょう。
もちろん、保険加入しないで、その分の現金をもっていれば十分なこともあるのです。

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