新型コロナとインフルエンザの同時流行にいかに立ち向かうか?【認定内科専門医が解説】

新型コロナとインフルエンザの同時流行にいかに立ち向かうか?【認定内科専門医が解説】

新型コロナ禍が収まる気配がみえません。例年、秋から冬場に向けてインフルエンザは大流行します。新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスも発熱などの症状から、簡単に鑑別はできません。そんな2つの疾患が同時に流行したら医療現場はどうなるのでしょうか?

今回の、記事では、認定内科専門医である長谷川嘉哉が、現状で考えられる、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの同時流行時の対応方法をご紹介します。

1.症状だけでは鑑別は難しい

突然の発熱、悪寒、そして咳と息切れ。それに伴う、頭痛と倦怠感。喉の痛み、くしゃみ、鼻水、下痢を伴うこともある。これらはインフルエンザウイルスにも新型コロナウイルスでも見られる症状です。従って、症状だけでの鑑別は不可能です。

新型コロナウイルスでは、味覚・臭覚異常がみられる点が特徴的とのことですが、この症状だけでの鑑別はやはり困難です。

2.一般診療所では検査できない!

check body temperature for covid-19
発熱の患者さんがいた場合、診療所でも厳重な対策をとって検査しなくてはなりません

国は、診療所レベルでの、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスの診断を求めていますが、現時点では対応は困難と思われます。

2-1.診療所レベルでは、コロナの検査は対応が困難

現在、診療所レベルでもキットによる新型コロナウイルスの抗原検査は可能です。しかし、この検査は、PCR検査に比べ感度が劣ります。したがって、陰性であっても100%新型コロナウイルスの感染は否定できません。陽性の場合は、新型コロナウイルスの確定診断となりますが、診療所レベルではその後の感染対策が困難です。何より、風評被害でも出てしまえば、診療所の運営自体も不可能となってしまいます。

2-2.インフルエンザだけの検査も対応できない

ならば、新型コロナウイルスの検査は無理でも、インフルエンザの検査だけを行うことは可能でしょうか? 最初に述べたように、両者の鑑別は困難です。インフルエンザの検査自体が、検者を新型コロナウイルスの濃厚接触者にしてしまいう可能性があります。少人数で運営されている診療所レベルでは、濃厚接触者が出ることは避ける必要があるのです。従って、発熱等の患者さんが来院されても、診療所レベルではインフルエンザも新型コロナウイルスのいずれの検査もできないのです。

2-3.ワクチンの効果も不確定要素が強い

ならば、優先的に医療従事者に新型コロナウイルスに対するワクチンを接種すれば対応は可能でしょうか?

インフルエンザウイルスでもわかる通り、ワクチンを接種しても100%感染が予防されるわけではありません。その上、今回のワクチンは短期間に生産する必要があったため、通常より効果についても審査が緩くなっています。

さらに、すでにアストラゼネカのワクチンでは、横断性脊髄炎という副作用が出たということで一時治験がストップしました。ワクチンの効果・危険性を知っている医療従事者としては、ワクチンを100%信頼はできないのです。詳しくは、以下の記事も参考になさってください。

3.血液検査が有効

ならば、開業医でレベルではいかに対応すべきでしょうか? 一つの方法としては、緊急採血で血液中の白血球(WBC)とCRPを測定することです。

*CRP:C-リアクティブ・プロテイン、感染症、心筋梗塞などで炎症や細胞の破壊が起こると血液中で増加する。

3-1.緊急のWBC、CRP測定は有効

緊急のWBCとCRPは約5分で測定ができます。発熱の患者さんであれば、車内で待機してもらい、窓から採血することも可能です。WBCとCRPは、新型コロナやインフルエンザなどのウイルス感染では上昇しないか、上昇しても軽度です。

一方、ウイルスに対する細菌感染の場合は、WBCとCRPはともに上昇します。但し、WBCもCRPも発症後、数時間で増え始めるので、発熱後すぐの場合は、正常でも細菌感染を完全に否定できません。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


3-2.細菌感染なら抗生剤治療ができる

患者さんにとっては、細菌感染でもウイルス感染でもどちらも大変なことです。しかし、WBCとCRPが上昇していれば、ひとまず、新型コロナやインフルエンザなどのウイルス感染は否定されますので、医療従事者としては安心です。治療としては、抗生剤の服用もしくは点滴で殆ど改善します。

3-3.検査機が高価である点がデメリット

このように臨床において、極めて有効なWBCとCRPの測定ですが、機械が高価です。おおよそ300万円程度します。但し、これからの時代、診療所レベルでも適切な治療を行うためには必須です。社会的義務としてこの程度の投資はしてほしいものです。

私も、年に2回ほど休日診療所で働くのですが、WBCとCRPの測定ができないため、とても診断に困窮します。同時に、自分の診療所で行っているレベルの医療が提供できない点を心苦しく感じています。

4.ウイルス感染が疑われたときは

前項による血液検査で、WBCとCRPがそれほど上がっていない場合は、ウイルス感染症を疑います。その場合の、治療としては以下が考えられます。

4-1.麻黄湯

麻黄湯は、抗インフルエンザ薬とは異なり、抗ウイルス作用に加えて宿主側の免疫応答を調整することで効果を発揮します。麻黄湯の作用としては、発汗作用で、体の熱や腫れ、あるいは痛みを発散して治します。この効果は、インフルエンザだけでなく、新型コロナウイルスに対しても有効です。詳細は、以下の記事も参考になさってください。

4-2.抗インフルエンザ薬も検討

突然の発熱、悪寒、筋肉痛を認め、周囲の感染状況からインフルエンザが疑われれば、抗インフルエンザ薬を使用します。「検査をしなくても抗インフルエンザ薬?」と言われそうですが、少し前まではインフルエンザ測定キットはありませんでした。医師は、患者さんの症状・家族歴から判断したのです。そのためには、原点に戻って丁寧な診察が大事になります。

5.患者さんへのお願い

令和2年度の冬場は、例年とは異なる事態となりますので患者さんにも以下のようなお願いをしたいです。

5-1.発熱後すぐ、医療機関を受診しない

これはインフルエンザが流行っているときにもお願いしていることです。発熱して、すぐの受診は控えてください。発熱をしても、いったん5〜6時間様子を見ましょう。そうするだけで、かなりの感染症は改善します。なにしろ、人間の体は、ウイルスを殺すために発熱しているのです。同様に発熱以外の症状も、同様にいったん様子を見て、自然治癒能力に期待をしましょう。

5-2.確定診断を求めない・・確定診断できない

きっと今シーズンの外来では、「インフルエンザの診断書を!」、「新型コロナウイルスの陰性証明書!」、「診断名を教えてください」といったやり取りで医療現場は混乱しそうです。現時点においては、診断方法・医療体制から、確定診断はできません。できないことを強制することは、医療崩壊につながります。学校・職場には、「発熱などの症状があれば、診断書を求めずに休んでもらう」という、当たり前の対応をお願いします。

5-3.インフルエンザワクチンの積極的接種

鑑別の困難な、インフルエンザと新型コロナウイルスのうち、インフルエンザワクチンの接種はお薦めします。インフルエンザは効果がないなどの噂がネット上でありますが、それは噂にすぎず、本当ではありません。インフルエンザワクチンには効果があり、接種を毎年受けた方がいいということは、厚生労働省やアメリカの疾病対策センター(CDC)で報告されています。WHOもインフルエンザの発症や重症化を防ぐにはワクチン摂取が最も効果的だと公表しています。以下の記事も参考になさってください。

6.まとめ

  • 令和2年度の冬場、一般診療所では、濃厚接触者をへらすために、新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザの検査も困難です。
  • 臨床の場では、高価な機械が必要ですが、緊急検査で、WBCとCRPの測定が有益です。
  • 新型コロナウイルスとインフルエンザの同時に流行した場合は、自然治癒力を信じて、発症後しばらく様子をみることもお薦めおすです。
error: Content is protected !!
長谷川嘉哉監修シリーズ