映画大好き専門医がお薦めする認知症関連映画13選

映画大好き専門医がお薦めする認知症関連映画13選

自分には趣味はないと思っていました。しかし、周囲から「先生の趣味は映画観賞ですよね?」と言われるようになり、たしかに映画鑑賞が趣味であることに気が付きました。考えてみると、1年に120本以上の映画を見ているのですから趣味なのかもしれません。さて、皆さんも年末でいつもよりは自由な時間が取れるのではないでしょうか?そんな時には、家で映画観賞はいかがでしょうか? これからの時代、誰もが関わることになる、認知症と関連した映画もたくさんあります。

今回の記事では映画が大好きな認知症専門医である長谷川嘉哉が、認知症を学べるだけでなく、映画としても楽しめる名画を一挙13本ご紹介します。

1.まずはこれから。認知症映画のスタンダード

まずは、有吉佐和子さん原作「恍惚の人」は、認知症映画の代表作です。介護保険がなかった時代の認知症介護の大変さが理解できます。主演である森繁久彌さんが、認知症の中核症状だけでなく、家族を苦しめる周辺症状を熱演しています。特に、便をこねて、畳から壁まで便だらけにするシーンは壮絶です。亡くなった奥さんの骨を食べようとする、「異食」のシーンも、とてもよく取材されています。

この1本を観れば、認知症については相当理解できてしまいます。当院のスタッフの教育、学生への授業でも使わせてもらっています。

*恍惚の人

2.映画としても最高のデキ!オススメの3本

せっかくの映画です。何も認知症を勉強する必要はありません。以下は、認知症は関係なく映画として素晴らしい出来です。

2-1.きみに読む物語

認知症の映画と知らずに観た方も多いのではないでしょうか?恋愛の素晴らしさと、配偶者が認知症になった夫婦の深い愛情が、とても上手に描かれています。先日も、「認知症の妻の記憶が、短時間だけ戻るときがあります」と嬉しそうに話されるご主人いらっしゃいました。日々の外来でも、映画に負けない素晴らしいご夫婦がいらっしゃるのです。

*きみに読む物語

2-2.やさしい嘘と贈り物

認知症というテーマを殆ど感じさせることない、感動作です。少しネタバレになってしまいますが、認知症になる前後で、同じ女性に恋をしてしまう。これは、感情を司る扁桃核を理解すると十分にあり得るのです。何しろ、女性に対する快・不快は3歳までに形成されてしまうのですから・・

やさしい嘘と贈り物

2-3.手紙は憶えている

私は、この映画は認知症の映画とは知りませんでした。サスペンス映画として観始めると、息をつく間もないほどに引き込まれてしまいます。そして衝撃な結末。あまり有名ではありませんが、紹介した方々皆さんが絶賛しています。超お薦めです。

手紙は憶えている

3.認知症の最期をうまく描いた

認知症の映画では、本当の認知症の最後は描きにくいものです。ご紹介するアニメーション「しわ」は、認知症の最期を実際に描くことなく、上手に表現しています。本当に認知症の最期を知りたい方は、以下の記事も参照なさってください。

*しわ

4.人格障害を起こす「ピック病」がよくわかる

認知症とは総称であって、その中に100種類を超える疾患があります。1位はアルツハイマー型認知症、2位は血管性認知症、3位はレビー小体型認知症、そして4位がピック病です。4位ですから比較的多いのですが、認知機能は維持されていて、人格が障害されるため、とても理解しにくのです。当院では、ご家族に、『「わたし」の人生 我が命のタンゴ』のDVDをお貸ししています。皆さん、とても理解できたと好評です。何しろ、監督が精神科医でもある和田秀樹先生ですから、とても分かりやすいのです。

*「わたし」の人生 我が命のタンゴ

5.発症前にわかることの是非・遺伝子検査がテーマ

日本では、認知症の遺伝子検査はタブー視されています。対して、アメリカでは自身が希望すれば検査を受けることは可能です。映画「アリスのままで」では、母親が認知症である子供たちが、遺伝子検査を受ける人と、あえて受けない人の心情が描かれています。

*アリスのままで


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6.認知症介護と家族の関わりがテーマの2本

日本の映画は、認知症と家族のかかわりを描かれるものが多いようです。但し、実体を知っているものからすると、正直描き方が甘いです。

6-1.わが母の記

この映画を観て、一貫して感じる事。主人公は認知症介護に携わった人でないことです。本当に、認知症介護に関わった、長男のお嫁さんの本当の苦労が、主人公には理解できていないと感じてしまいます。

*わが母の記

6-2.サクラサク

認知症介護の苦労は描かれても、実際には何も解決されない映画です。もちろん、映画は何かを解決するために観るものではありません。しかし、本当に介護しているご家族の多くは、こういった映画は観られません。

*サクラサク

7.過剰な介護負担の実態

映画、「八重子のハミング」は、認知症専門医としては観るに堪えられませんでした。患者さんの症状、介護力から考えて自宅での介護は不可能なレベルです。しかし、映画では、自宅介護を感動的に描いています。こういった映画が、「誰か一人が犠牲になるような介護」を強いてしまうのです。

*八重子のハミング

8.若年性アルツハイマーを描いた

認知症の中で、5%しかいない若年性アルツハイマーですが、やはり映画にはなりやすいので多くの作品があります。

8-1.蝶の眠り

元アイドル中山美穂さんが、若年性アルツハイマーを演じる時代になりました。映画全体に流れる音楽がとても心地良い映画です。何よりも、進行してしまった認知症患者を中山美穂さんが、きちんと演じている点が好感が持てます。

*蝶の眠り

8-2.明日の記憶

渡辺謙さんが主演です。働き盛りのサラリーマンが若年性アルツハイマーに罹患されます。ただし、FP資格を持つ認知症専門医としては、仕事は?収入は?住宅ローンは?自己破産?自宅は競売?などどととても気になってしまいました。

*明日の記憶

8-3.私の頭の中の消しゴム

若い女性が若年性アルツハイマーに罹患されます。必死に介護する恋人に対して、昔の彼氏の名前を言ってしまいます。さらに女優さんが尿失禁もしてしまいます。恋愛だけでなく、認知症の実際もしっかり描かれています。

私の頭の中の消しゴム

9.いい映画だが、アルツハイマーかは疑問

たまにこういう映画もあります。公開前に知り合いに頼まれて観た「毎日がアルツハイマー」。映画の中の、患者さんの年齢と、歩行状態、さらにはちらっと移った頭部MRI写真からは、診断は血管性認知症です。もちろん映画の内容に問題はありませんが、専門医としては気になってしまいます。

*毎日がアルツハイマー

10.まとめ

  • 認知症を描いている映画作品とてもたくさんあります。
  • 認知症が題材でも、映画として素晴らしい作品もたくさんあります。
  • コロナウイルスで引きこもりがちないま、映画を観て心を健康にしましょう
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