映画「おとうと」のなかで、弟の鉄郎が癌の末期になります。
そこで、病院で胃瘻が増設され、民間ホスピスで生活しています。
当然、栄養はすべて胃瘻を通して行われます。
私の考えでは、癌の末期に胃瘻?と疑問を持たざるを得ません。
実は、胃瘻は約15-6年前から国内で導入された技術です。
海外では、当初は障害を持った小児を想定して作られていました。
しかし、日本では、食事が取れなくなった成人にまで適応が広げられていきました。
特に、入院日数を減らしたい病院との思惑が一致して、最近では年間に20万例が新規で導入されています。
凄い数だと思いませんか?
胃瘻は、比較的新しい医療技術であるため、導入するか否かについては、世の中の同意が得られていません。
実際の現場では、
①高齢で食事が取れなくなった方
②脳血管障害で意識は比較的保たれているが、嚥下障害が強く誤嚥性肺炎を繰り返している方
③癌の末期
の3つのパターンに導入されているようです。
正直、高齢で食事が取れなくなった方への胃瘻は、意味がないのではないでしょうか?
また脳血管障害の方は比較的年齢が若い方の場合は、導入も一案だと思います。
一方癌の末期は、過去に苦痛を延ばすという理由で、中心静脈栄養からの高カロリー輸液を使用しなくなった経緯からは、胃瘻導入は時代に逆行しているような気がします。
いずれにせよ、胃瘻は一概に良いとか、悪いとか言い切れるものではありません。
適応症例を、一例ずつ丁寧に検討して、一定の導入基準を作成する必要があると思われます。