「ヒポクラテス症候群」という病気(?)があります。医大生や研修医になりたての医師がかかり易い病です。「医大生落ち込み症候群」とも解説されています。 ちょっとした身体の異常が、講義で習った病気の症状に良く似ている気がして、自分は難病かもしれないと悩むのです。吐き気があると胃がんかもしれないと思い、小便が臭いと糖尿病じゃないかと心配するのです(本当はお酒を飲んだ後であったのですが・・)。自分は、子供のころから目の前に糸くずが飛ぶことがありました。授業で、『飛蚊症は網膜剥離の前兆です』と言われ、慌てて眼科を受診しました。診断は“生理学的飛蚊症”、つまり“生まれつき”という診断でした。
実はヒポクラテス症候群で一番有名なのは、先回までご紹介した、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の初期症状です。1つの症状として「線維束性収縮」と言うのがあります。症状として、まぶた、手、足、舌がピクピクしたりするのです。そんなこと皆さんもありませんか?実際、ドラマや映画を見て筋肉のピクツキがALSの初期症状と知り、不安になって受診される患者さんは結構見えます。診察をすると、寝不足など良性のものが殆どです。診断を受けるまでは、“舌が振るえ、、、、、手も!(飲みすぎだったりして)、、、、そう言えば、最近ちょっと飲み込みにくい、、、、”と心配になってしまうようです。
先回からご紹介している、映画『博士と彼女のセオリー』や『ベネディクト・カンバーバッチ ホーキング』やドラマ「僕のいた時間」は確かにお勧めです。しかし見終わった後に、ヒポクラテス症候群にかからないように気を付けてください。
追記)医大生たちを主人公にした映画「ヒポクラテスたち」(大森一樹監督)のことをふと思い出しました。今は亡き古尾谷雅人が主人公でした。若き日の斉藤洋介とか伊藤蘭とか柄本明とか俳優さんがとても個性的でした。