血液サラサラ、抗血小板療法の効果・注意点について専門医が解説

血液サラサラ、抗血小板療法の効果・注意点について専門医が解説

「血液サラサラになる薬を飲まれていませんか?」といった質問が、医療機関ではよくされます。とくに新型コロナワクチンの問診の際には必ずお伺いするものです。そんな「血液サラサラ」になる薬とは何でしょうか?今回の記事では、脳神経内科専門医である長谷川嘉哉が、血液をサラサラにする抗血小板療法についてご紹介します。

1. 抗血小板療法とは?

血小板は、止血や血液凝固に大事な働きをします。血管に傷がつくと数秒後には血小板が血管に集まり互いに凝集して、血の塊をつくって傷口からの出血を止める働きがあります。

逆に、その働きのため、脳梗塞や心筋梗塞などで血管の中で血栓ができる際にも血小板が関与します。抗血小板薬とは、血小板の働きを抑制することで、血栓の生成を予防する治療です。その状態を、患者さんに分かりやすく説明するために、「血液サラサラ」といった表現をするのです。

2. どんな人が服薬するの?

抗血小板療法は、以下のような患者さんに使用されます。

2-1.脳梗塞や虚血性心疾患の再発予防

脳梗塞や心筋梗塞や狭心症などの既往歴のある患者さんに、抗血小板療法を行います。抗血小板療法は動脈における血栓を予防することで再発を予防します。抗血小板療法により再発率は約半分に抑えられると報告されていますので、継続的な服薬が大切です。

2-2.ステント血栓症予防

狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の際には、冠動脈の狭窄や閉塞を改善するために冠動脈インターベンション時にステントを留置します。その際にステント留置後に起こりうるステント血栓症の予防のために使用されます。

*ステントとは:金属のチューブのようなもので、バルーンで血管内を拡張後に留置されます。血管がまた狭くならないように支える役割をします。

2-3.早期認知症

国立循環器病研究センターは、脳梗塞再発予防薬として広く用いられている抗血小板薬「シロスタゾール」が認知症の進行予防にも有効であることを明らかにしました。とくに認知症の中でも早期認知症に対する効果が高いと報告されています。私自身も、早期認知症で頭部CTなどで梗塞巣が見られるケースでは「シロスタゾール」を処方しています。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


3. 抗凝固療法とは異なるの?

抗血小板療法と似た言葉に、抗凝固療法があります。抗凝固療法は、静脈における血栓を予防します。したがって、不整脈などで心臓から血の塊がとぶ脳塞栓の予防や、深部静脈血栓症の予防に使用されます。有名な薬剤としては、ワーファリンがあります。なおワーファリンを服薬する場合は、納豆は禁忌になりますが、抗血小板療法の場合は、納豆は通常通り食べてもらっても問題はありません。

4. 服薬の際の注意は?

抗血小板療法で使われる薬には、皮膚の内出血・鼻出血・歯茎からの出血・血痰などの副作用の可能性があります。出血が続くとき、多量の出血の場合は医師に連絡をとりましょう。ただし、抗血小板治療の場合、全く血が止まらないわけではありません。出血の際に、通常なら3分押さえていれば止血できるものが5分必要になる程度です。

したがって、抜歯の際でも、技術の高い歯科医の先生は、抗血小板療法を休薬せずに行ってくれます。なお他の検査については、薬の種類や、手術・処置の種類、患者さんの状態により休薬するか否か、休薬するならその期間が異なります。必ず主治医と相談してください。

5. 具体的な薬と副作用

具体的な薬としては以下のものがあります。単独で使用する場合もありますし、血管の狭窄が強い場合は、組み合わせて使用することもあります。例えば、2剤(バイアスピリン+プラビックス、 バイアスピリン+シロスタゾール )のような併用する事もあります。

5-1.アスピリン(商品名:バイアスピリン)

いわゆるアスピリンです。1日1回 の服薬ですが、胃腸障害・ アレルギー の副作用があります。薬価が、1錠 5.7 円と極めて安価ですが、その効果は特筆すべきものです。アスピリンについては以下の記事も参考になさってください。

*脳梗塞・心筋梗塞の再発も予防!アスピリンの凄い効果一覧

5-2.クロピドグレル(商品名:プラビックス)

以前によく使われていたパナルジンの副作用(下痢、血小板減少、 顆粒球減少、 肝障害)の頻度が低く、安全性が高まった薬剤です。薬価が、1錠 152 円と高価になります。

5-3.シロスタゾール(薬品名:プレタール)

脳梗塞の再発予防で使用する際、 副作用としての脳出血の副作用が少ない特徴があります。ただし、副作用として頻脈が比較的多くみられます。私は、シロスタゾールを処方する際は、診察の際に必ず脈拍を測定します。脈拍が100を超えるようであれば、アスピリンやクロピトグレルに変更します。

6. まとめ

  • 抗血小板治療により、血液がサラサラになります。
  • そのため抗血小板治療は、脳梗塞や心筋梗塞や狭心症などの再発予防目的使用されます。
  • ワーファリンと異なり、抗血小板療法では納豆を摂取してもらっても問題はありません。
error: Content is protected !!
長谷川嘉哉監修シリーズ