現役時代、汗水をたらして働きながら、退職後は悠々自適の生活を思い描いている方もいらっしゃると思います。そのための資金として、退職金はとても大事です。しかし、多くの日本人はお金の教育を受けていないため、いきなり退職金という大金を手にしても、どうしてよいか分かりません。そこで、お金の専門家に相談しようと考えてしまうのです。
その結果、虎の子の退職金を目減りさせてしまったり、最悪の場合は「老後破産」にまでなってしまうことがあるのです。今回の記事ではFP資格を持つ脳神経内科専門医の長谷川嘉哉が、大切な退職金を騙されることなく有効に使う方法をご紹介します。
目次
1.お金の専門家なんていない!
多額の退職金を手にすると、専門家に相談しようと考えるようです。しかし、お金の専門家なんて本当はいません。
1-1.金融機関
私の父親は元銀行員です。そのため、家訓として「銀行員の勧める金融商品を買ってはいけない!」があります。「彼らは自分の都合の良い商品を売りたいだけで、お客さんのことは考えていない」と元銀行員が言うのですから間違いありません。特に、マイナス金利の今、金融機関は利益を上げるために、金融商品を売りつけて手数料を得ることに必死です。彼らは、お金の専門家でなく、単なる金融商品の販売員なのです。
1-2.ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー(以下FP)というといかにも、お金の専門家というイメージです。しかし、日本の場合は、お金のアドバイス料だけで生計を立てているFPは皆無です。多くのFPは、お金のアドバイスという名のもと、バックエンド商品を持っています。バックエンド商品の代表的なものは、保険商品です。つまり彼らは、お金の専門家でなく、単なる保険商品の販売員なのです。
1-3.税理士
税理士というと、お金のことは何でも知っていると勘違いしている人がたくさんいます。しかし、彼ら自身、それほどお金を稼いでいるわけでなく、投資経験も乏しい方が多いものです。彼らは、お金の専門家でなく、税金計算の専門家でしかないのです。
2.基本の投資先4パターン
人に相談する前に、投資には4つのパターンがあることを知っておきましょう。
2-1.大きく分けて債権と株式
代表的な投資先は、大きく分けて、債券と株式です。債券とは、国や企業に対してお金を貸し付け、対価として利息を頂きます。あくまで貸付ですから、相手がつぶれない限りお金は返してもらえます。つまり、低リスクですが、低リターンになります。
一方、株式は、企業に投資をします。そこに返済義務はありません。したがって、上手くいかなければゼロになってしまいますが、上手いくいけば10倍、100倍の価値になることもあるのです。つまり、高リスクですから、高リターンなのです。
2-2.日本円と外貨
債券と株式に、それぞれ日本円と外貨を組み合わせることで、以下の4パターンが出来上がります。
- 日本円の債券
- 日本円の株式
- 外貨の債券
- 外貨の株式
2-3.怪しい商品
世の中の金融商品を見てみると、殆どのものは上記の4つのパターンに含まれるのです。逆に、「4つのパターンのどこに含まれるかはっきりしないもの」は怪しいと疑う必要があります。令和2年9月に世間を騒がせたジャパンライフの商品などは、この知識があれば、「怪しい」と簡単に気が付くはずなのです。
3.現物投資には、一定の経験が必要
「不動産や金への投資は、どうですか?」という質問も良く受けます。不動産や金は、現物投資といって、2章の4つの投資先には含まれません。従って、投資としては少し経験が必要です。ある程度、投資経験を積んでから、財産の一部を投資することが大事です。
4.好きこそものの上手なれ
ならば、「お金のことは誰に聞けばよいの?」との疑問になります。私はSNSをお薦めします。日本には、「好きこそものの上手なれ」との諺があります。職業に関係なく、投資が好きな人は、良く勉強していて、自分自身でリスクをとって投資をしています。最近では、そんな彼らがYouTubeやブログで多くの情報を発信しています。
誰か一人に偏ることなく、数人の人の情報を収集すると、下手な「自称お金のプロ」の知識量を簡単に超えてしまいます。私が参考にしているサイトを一部ご紹介します。
- バフェット太郎の投資チャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCQPPXy9LCznUQHHG_kh6Bpg
- 両学長 リベラルアーツ大学:https://www.youtube.com/channel/UC67Wr_9pA4I0glIxDt_Cpyw
- 高橋ダン :https://www.youtube.com/channel/UCFXl12dZUPs7MLy_dMkMZYw
5.具体的な方法
ならばせっかくの退職金をどのようにすれば良いのでしょうか?
5-1.分散投資が大基本
ときどき、なけなしの退職金を一種類の金融商品に投資して、大きく損をしてしまったという話を聞きます。何に投資するか以前に、「投資は分散すること」が大基本です。
5-2.一部は現金で所有
分散する場合でも、必ず一定額は現金で持っておいてください。この一定額を知るためには、年金以外で必要な額、さらには入院・介護などの緊急用の額を想定する必要があります。
5-3.ネット証券で、ETFがお薦め
私は、多くの投資初心者にはネット証券をつかったETFをお薦めしています。ETFとは、正式名称を上場投資信託といいます。営業マンが介在しないネット証券であれば、変なものを売りつけられることもありません。その上、手数料が一般の証券会社に比べ、遥かに安価です。
さらにETFでは、日本株式、外貨債券、外貨株式、さらには不動産、金など多くのものに投資が可能です。つまり、ネット証券を使ったETFだけで、あらゆる投資先に投資が可能なのです。
6.絶対避けた方が良いもの
金融機関が薦めるものは全般的にお勧めではありません。その中でも、投資信託は特にお勧めではありません。金融機関が薦める商品は、「手数料が高く、金融機関は必ず儲かっても、購入者は殆ど儲からないもの」です。その他、毎月分配型も避けましょう。さらに、トルコリラなど、国情が安定しない通貨への投資も論外です。(岐阜県の○○共立銀行は、トルコリラの商品を積極的に販売していますの要注意です)
7.前頭葉機能低下に注意
65歳を超えると多くの方が前頭葉機能が低下します。具体的には論理的思考が苦手になります。そのため、営業マンに強く勧められると、論理的に考えずに契約してしまうこともあります。それを防ぐには、まずは、その場では決めないこと。そして、いったん帰宅して、配偶者や子供さんに相談することが、騙されないためには大事です。
8.まとめ
- 退職金の運用の際に、相談するお金の専門家などは世の中に存在しません。
- 自ら学ぶことが第一であり、特にSNSは情報の宝庫です。
- 投資をする際は、その場で決めずに、いったん帰宅してから家族に相談することが大事です。