セミナーや講演会の最後を締めくくるのは、たいてい「質疑応答」の時間です。講演者と参加者が直接やり取りできる貴重な機会として、多くの人がこの時間を楽しみにしています。しかし、この質疑応答の時間が、ときにセミナー全体の印象を一気に壊してしまうことがあるのです。
今回は、セミナーを台無しにしてしまう「残念な質問」と、それを未然に防ぐための具体的な方法について考えてみたいと思います。
目次
1.自分の知識をひけらかすだけの質問
質問という形を取りながら、実は自分の知識や経験をアピールしたいだけの発言。たとえば、「私も以前、○○というプロジェクトで似たようなことをやりましてね、○○という理論に基づいて〜」といった具合に、結局質問のないまま終わることもしばしばです。講演者も返答に困りますし、他の参加者にとっても有益な情報は得られません。
2.全体の流れと関係ない質問
講演内容とは直接関係のない、場違いな質問もまた、会場の空気を冷やす原因になります。講演が「ビジネスとAIの関係」についてだったにもかかわらず、「ところで、最近のAIは囲碁ではどうなんでしょう?」などと話が逸れてしまうケースが該当します。
3.そもそも何を言っているのか分からない質問
話が長く、論点が不明瞭。結局「質問は何ですか?」と聞き返されるタイプの発言です。話し手は満足しているかもしれませんが、聞き手には混乱しか残りません。
4.高齢の参加者に多い傾向
こうした「残念な質問」は、特に年配の方に見受けられることが多いのが実情です。長年の経験や独自の理論を持っている分、つい自分の話をしたくなってしまうのかもしれません。ただ、それが講演の趣旨に沿っていないと、場の空気を壊してしまいます。
5.質問の質を上げるための仕組み
こうした問題を予防するための一つの方法として、デジタルによる質問受付の仕組みを導入することが非常に有効です。具体的には、セミナーの冒頭や資料にQRコードを掲示し、それを通じて参加者に質問を投稿してもらう方式です。
この仕組みには以下のメリットがあります。
- 質問を選別できる:主催者やモデレーターが事前に質問をチェックし、講演内容に関連性が高く、有益なものを選ぶことができます。無関係な質問や、自己アピールに過ぎない質問は排除可能です。
- 参加のハードルが下がる:手を挙げて発言するのが恥ずかしい、周囲の目が気になるという参加者にとって、スマートフォンで匿名またはニックネームで投稿できる仕組みは非常に参加しやすい環境を提供します。
- 時間の有効活用:登壇者も選ばれた質問に集中して回答できるため、質疑応答の時間をより効果的に使えます。無駄に長い質問や説明不要な発言に時間を取られることがありません。
6.まとめ:セミナーの質を高めるのは「質問の質」
質疑応答の時間は、セミナーの一部でありながら、参加者の印象に強く残る重要な時間です。その時間が価値ある対話の場になるか、それとも残念な思い出になるかは、ひとえに「質問の質」にかかっています。
そのためには、参加者一人ひとりのマナーや意識の向上ももちろん大切ですが、運営側が仕組みとしての工夫を取り入れることも非常に効果的です。
デジタルツールをうまく活用し、誰もが参加しやすく、そして有意義な時間となる質疑応答を実現していきましょう。