めまいの症状で、病院を受診する方はたくさんいらっしゃいます。地域の基幹病院に勤務していた時、脳神経内科の外来には、毎日10名以上の「めまいを主訴とする初診の患者さん」がいたものです。しかし、検査をして「異常がありません」と説明しても、症状が残る方が多くいらっしゃいます。そうすると、別の病院にも受診されることが多いようです。しかしどの病院でもやはり「異常ありません」。異常はないのに、患者さんは症状に困り続けるのです。
このような患者さんはどのようにすればよいのでしょうか? 今回の記事では、脳神経内科専門医の長谷川嘉哉が、「病院で異常がないとと言われためまい」について解説します。
目次
1.めまいがあるが医学的に異常がないとは?
まず、患者さんのめまいに対して異常がないと正しく診断するには、以下の3点の確認が必要です。
1-1.耳鼻科的に異常がない
めまいの中でも、周りが回転するようなめまいの原因は、耳鼻科的な原因であることがあります。その際に、耳鳴り、難聴、耳閉感がないかを患者さんに伺うことが大事です。患者さんに、その質問をしない医師は、そもそもめまいの診察が苦手なケースが多いのです。めまいが改善しない場合は、一度は耳鼻科受診が必要です。
1-2.脳神経内科的に異常がない
めまいの中でも、自分自身がふわふわするような浮遊感の原因は、脳神経内科的な脳を中心とした中枢の原因であることがあります。そのため、頭部のCTやMRIを撮影します。頭部のCTでは見つけられない小さな腫瘍が原因のこともあるので、めまいが徐々に悪化するような場合は、頭部MRIも必要になります。
1-3.内科的に異常がない
耳鼻科的および脳神経内科的なチェックと同時に、最低限の内科的診察と血液検査が必要です。高血圧、不整脈、貧血、甲状腺機能異常などで、めまいを訴える患者さんはいらっしゃいます。
以上のどれにも当てはまらない場合には、医学的に「異常がない」と診断されるのです。
2.めまいの多くの原因は、肩こり?
紹介したような検査をすべて行っても、まったく異常がなく、それでもめまいが残る患者さんが結構いらっしゃいます。私は、勤務医時代は、年に1,000人以上のめまい患者さんを診察していました。その経験からすると、その大部分の原因は、頭から首にかけての筋肉の緊張が原因です。簡単に言えば肩こりです。
そのため、めまいが残る患者さんの中には若い患者さんもたくさんいます。また仕事もデスクワーク中心の方が多いようです。当院でもめまいの患者さんは、初診の段階で頚部のXP撮影を必ず行います。患者さんは、「めまいで首の写真?」と怪訝な顔をされますが、かなりの頻度で、ストレートネックの所見を認めます。ストレートネックがあるために、肩や首の緊張がしやすくなりめまいを起こすのです。
*ストレートネック:健常な人の、頚椎はなだらかな彎曲があることで頭の重さを分散しています。しかし、その彎曲がなく、頚椎がまっすぐな状態では、首の周囲の筋肉に負担がかかってしまいます。ストレートネックには以下の記事も参考になさってください。
3.めまいの対処方法①
以上の知識を持っていただいたうえで、耳鼻科・脳神経内科・内科的に異常がないと言われたら、まずは安心しましょう。めまいの症状は、人生であまり経験したものではありません。そのため、心配・不安がよりめまいを強く感じさせてしまいます。「これだけの検査をしたのだから大丈夫」と安心することで、かなりの患者さんの症状が改善されます。
ただし、経過を見ることは、診断方法の一つです。2〜3か月様子を見ても、明らかに症状が進行する場合は、再度医療機関を受診するようにしてください。
4.めまい対処方法②
肩こりがめまいの原因であることを考えると以下の対応も大事です。
4-1.目は大丈夫?
肩こりの原因が眼である方も結構いらっしゃいます。眼鏡やコンタクトレンズの度が合っていなかったり、視力の良かった人でも、老眼が始まっていたりします。視力のチェックとメガネの度数変更で、肩こりが楽になって、めまいも改善することもあるのです。
4-2.運動
デスクワークが中心の方ならば、有酸素運動やストレッチも生活の中に取り入れましょう。ストレッチは、起床時もしくは眠前の習慣にしたいものです。さらに、30分程度のウォーキングを週に3回程度行えれば、肩こりと同時に、めまいも改善します。何よりも、めまいが継続すると、精神的も落ち込んでしまいます。そんな時には、体を動かすことが有効なのです。
4-3.睡眠
規則正しい睡眠も重要です。できれば7時間程度は確保したいものです。寝る前には、スマホなどの利用は避けましょう。私は、毎日寝る前に眼を温めます。そうすると睡眠も快適ですし、朝起きた時の目の爽快感が抜群です。コンタクトレンズを使用されている方には特にお薦めです。以下の記事も参考になさってください。
5.めまいの対処方法③
いろいろな方法を試しても、めまいも肩こりも改善しない。病院にも再度受診しても異常がない。そんな時には、東洋学的なアプローチが有効なこともあります。
5-1.針
私は、40歳の時に、あまりにハードな仕事、つまり交感神経の過剰興奮の生活をしていました。そこで週に1回、針治療にかかり始めました。針治療を行うと、副交感神経が優位になり、眠気が誘発され、腸管が動き始めることがわかります。私には、とても合っているようで以来14年間継続しています。以下の記事も参考になさってください。
5-2.灸
私の体には東洋医学があっているのか、最近は、毎日寝る前にお灸もしています。お灸も効果的で、死んだように眠れますし、起きた時の爽快感が違います。イメージとしては、体全体の緊張がゆるむ感じです。おかげで、血圧は確実に下がりました。以下の記事も参考になさってください。
5-3.首にアプローチするタイプのカイロプラクティックには注意
肩の緊張に伴うめまいに対しては、マッサージもお薦めです。ただし、首や体をひねることが多い、カイロプラクティックは避ける必要のある患者さんがいます。頚部のXPでストレッチや骨の変形が強い患者さんは、逆にめまいが誘発されることがありますので、注意が必要です。
6.ブレイングボードもお薦め
針や灸には少し抵抗がある方には、ブレインググループが開発したブレイングボード®もお薦めです。ブレイングボード®は、「有酸素運動」「筋力トレーニング」「柔軟性向上」「バランス性向上」の4つの運動がわずか5分でできてしまいます。特に、有酸素呼吸運動だけでなく、筋力や柔軟性・バランスを改善することで全身の緊張状態を緩めます。その効果は、針やお灸に負けないものなのでお勧めです。
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7.まとめ
- めまいの患者さんの中には、耳鼻科・脳神経内科・内科的にも異常がない方がいらしゃいます。
- その原因の多くは、首から肩にかけての筋肉の緊張、いわゆる肩こりが原因です。
- めまいを引き起こす肩こりに対しては、運動や東洋医学的な対応も効果的です。