2020年末から、2021年にかけては、新型コロナウイルスの感染が収まっていません。この時期は、気温も下がり、体調をくずして熱を出す方もいらっしゃいます。しかし、今シーズンは、例年のように熱が出たからといって、いきなり医療機関に受診することは避けることが、メディアでも伝えられています。
ならば、発熱したらどのように対応すればよいのでしょうか? 今回の記事では、自らのクリニックで「発熱外来診療体制確保支援」を行っている、総合内科専門医の長谷川嘉哉が解説します。
なお、発熱とは、体温が37.5度以上の状態をいい、高熱とは体温が38度以上をいいます。
目次
1.発熱後すぐに受診しない、とは
診療をしていて感じることは、多くの患者さんは「発熱してすぐに受診を希望しすぎる」ことです。
1-1.まずは様子を見る
発熱とは、人間の防御反応として体温を上げているのであって、大至急、熱を下げる必要は殆どありません。熱を上げることで、ウイルスや細菌を退治しようとしているのです。まずは、様子を見ましょう。真夜中に、眠っている子供さんが、熱があるからといって受診希望される患者さんもいらしゃいますが、無理矢理起こしてまで受診する必要はありません。
1-2.様子観察時間は、24時間
例年、インフルエンザが流行っている時期は、発熱後6〜8時間経ってからの受診が薦められていました。それより早い時間ですと、インフルエンザ感染の有無を正確に判断することができないのです。しかし、今年度は、発熱の際、インフルエンザだけでなく新型コロナウイルスも鑑別する必要があります。新型コロナウイルスの場合、2日目以降から判定が可能なため、発熱後24時間経ってからの診察が望まれます。従って、当院では、発熱後24時間経ってからの受診をお願いしています。
1-3.自然軽快することも多い
発熱してから、24時間も様子を見て大丈夫か、と思われるかもしれません。しかし発熱して24時間経つと、半数以上の方は、自然に解熱して受診自体が必要なくなります。これは、インフルエンザも同様で、すべての患者さんに抗インフルエンザ薬を使わなくても、自然軽快するのです。今シーズンの経験をもとに、多くの患者さんが、発熱してもすぐに受診する必要がないことを理解してもらいたいものです。
2.すぐに受診が必要な場合は
ただし、発熱しても以下のような状態がある場合は、緊急受診が必要です。
2-1.呼吸困難や激しい咳を伴う
発熱だけであれば、様子を見ても良いのですが、息苦しさや、激しい咳を伴っている場合は、気管支肺炎や急性心不全を合併していることが多いので、緊急受診をしましょう。ちなみに、そんな時のために、自宅にパルスオキシメータを常備されていると、酸素濃度が測定できるので役立ちます。詳しくは以下の記事を参考になさってください。
2-2.意識障害
発熱に、意識障害を伴う場合は、緊急受診をしましょう。さらに、食べ物を戻すような嘔吐を伴う場合、脳炎や胆嚢炎の可能性もあるので、救急車を呼ぶ必要があります。
2-3.痙攣(けいれん)
発熱にけいれんを伴うと、周囲は相当に驚いてしまいます。しかし、けいれんを起こした場合も焦らずに、衣服をゆるめて、気道を確保してください。吐物による窒息を避けるために横向きに寝かせることも重要です。多くの場合は、3分でけいれんはおさまります。3分以上けいれんが続く場合は、救急車を呼びましょう。
3.かかりつけ医に電話するとは?
最近、マスコミでは発熱したら、まずはかかりつけ医に電話をしてくださいと報道されています。しかし、すべてのかかりつけ医が、発熱患者さんに対応してくれるわけではありません。
3-1.発熱外来診療体制確保支援補助金とは?
発熱外来とは、「発熱外来診療体制確保支援補助金」を申請している診療所です。これを申請している診療所は、インフルエンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制を確保することで補助金を受け取ります。当院も申請をしていますが、診療所の外にプレハブを立て、発熱患者さんに対して、インフルエンザ検査と新型コロナウイルスの抗原検査を行います。但し、あくまで対象は、かかりつけ患者さんですので、一度も当院に受診されていない患者さんには対応していません。
3-2.かかりつけ医が発熱外来をやっていないと
実は私の開業している岐阜県土岐市でも、「発熱外来診療体制確保支援補助金」を申請している診療所は数件です。つまり、多くの診療所は、発熱外来をやっていないのです。その場合、発熱してかかりつけ医に電話をすると、「当院は発熱患者さんに対応していない」といって断られてしまっているのです。
3-3.かかりつけ医なら、多くの診療所が発熱外来を
各診療所に、多くの事情があることは分かります。しかし当院も、「発熱外来をやっていない診療所の患者さん」を診るほどの余裕はありません。かかりつけ医というからには、出来れば「発熱外来」を開設して欲しいものです。プレハブを建てることは、驚くほど安い費用でできます。その上、「発熱外来」を申請すると、マスク、フェースガード、防護服などが支給されますので助かります。
4.まとめ
- 発熱とは、37.5度以上の体温を言います。
- 他の症状がない場合は、発熱して24時間は様子を見ましょう。
- 「発熱外来診療体制確保支援補助金」を申請している診療所を、かかりつけ医にしましょう。