医科歯科連携の実践・・医科クリニック敷地内に歯科クリニック誘致の薦め

医科歯科連携の実践・・医科クリニック敷地内に歯科クリニック誘致の薦め

令和268日、ついにブレイングループの土岐内科クリニックの敷地内に、クローバー歯科が開院されました。これまでは、外来で、「歯はすべての疾患の原因になりますから歯科医にかかってくださいね」と、お願いしてもなかなか受診いただけませんでした。ならば、「敷地内に歯科医の先生に開業してもらおう」と考え実現しました。

全国的に、医科歯科連携は叫ばれていますが、なかなか実現しないことが多いものです。今回の当院の取り組みは、医科歯科連携のまさに実践です。早速、当院の100名を超す外来患者さんが、クローバー歯科を受診しています。今回の記事では、医療の診療所の施設内に歯科医院が開院することのメリットと、そこに至るまでの過程をご紹介します。医科と歯科の連携の参考にしていただければ幸いです。

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土岐内科クリニック敷地内にオープンしたクローバー歯科

目次

1.医療法人ブレインと医療法人LSCのコラボとは?

今回は、医科と歯科の医療法人が協力して実現しました。それぞれの特徴をご紹介します。

1-1.医療介護を提供する医療法人ブレイン

2000年4月の介護保険の施行と同時に開業。外来では、認知症と糖尿病を専門として、高齢者の患者さんを中心に診療しています。在宅医療にも積極的に取り組み、在宅患者さん60名、グループホームをはじめとする16施設210名の協力医でもあります。グループ内で介護事業も行っており、デイサービス、デイケア、訪問看護、訪問リハビリ、居宅介護支援事業所、グループホーム4施設を運営しています。

ブレイングループのホームページ

1-2.総合歯科を提供する医療法人LSC

医療法人LSCは歯科の医療法人で、本院のリーフ総合歯科はチェア台数が10台で、名前の通り高度な歯科治療まで総合的に行っています。今回は、兄弟医院として、当院の敷地でクローバー歯科を開業してくれました。クローバー歯科は、現在は4台のチェアですが、7台まで増やせる想定になっています。

医療法人LSCのホームページ

1-3.在宅支援診療所とかかりつけ強化型歯科医院

連携した2つの医療法人の間には、血縁関係はありません。理事長同士も全くの他人です。ただ医療法人ブレインは、機能強化型在宅支援診療所であり、医療法人LSCは、かかりつけ強化型歯科医院です。機能強化型在宅支援診療所とかかりつけ強化型歯科医院は医科と歯科の違いはありますが、いずれも国が、これからはレベルの高い外来診療に加え、在宅医療にも取り組んでほしいという意図によりつくった制度です。

2.それぞれの医師会とも良好な関係

医科診療所の敷地内に、歯科の診療所を誘致すると、人によっては「医師会との関係は大丈夫?」と心配されます。今回の連携は、全国でも先駆け的な取り組みとなります。その際に、医師会との良好な関係がとれていなければ、広がりません。そこで当初から、それぞれの医師会・歯科医師会には報告をしながら進めました。お陰様で、医療法人ブレインも医療法人LSCも、地域の医師会に所属して、医師会活動にも参加しています。

3.患者さんのメリット

医科の敷地内に、歯科診療所ができることがわかると、多くの患者さんから大歓迎されました。患者さんやその家族は、歯科の重要性を知っています。しかし、高齢にになれば、医科だけでも、内科・整形・眼科など複数の診療所への受診が必要になります。ご家族によっては、「歯科受診が必要なことは分かっていますが、これ以上は受診できません」と言われる方も多数いらっしゃるのです。

そんな中で、同一敷地内で、予約日もできるだけ同じ日にすると、とても喜んでいただけます。もちろん歯科の状況によっては、医科の予約より頻回に受診が必要なケースもありますが、「必要な治療」と受け入れてくれているようです。

4.土岐内科クリニックから紹介する患者さんの例

医科から歯科にご紹介する患者さんには、診療所によって違いはあると思いますが、土岐内科クリニックでは以下の方を歯科受診をお願いしています。

4-1.認知症患者さん

認知症患者さんには、認知機能の進行予防目的で歯科受診いただきました。早期認知症から、周辺症状も出現しているような重度の認知症患者さんまで、幅広く受診いただいています。当初は、妄想や易怒性もあるような認知症患者さんは、歯科治療に抵抗するのでは?と心配していましたが、問題なく歯科受診いただいています。

4-2.糖尿病患者さん

糖尿病患者さんは、糖尿病のコントロール目的で歯科受診をお願いしています。何しろ、定期的に患者さんの採血データを記録する糖尿病手帳には、歯周病のチェック欄があります。それも、改訂でより詳細なチェックが必要となっているのです。

糖尿病手帳では、歯科の項目において、より詳細なチェックが必要となりました

4-3.付き添いの介護者も一緒に

土岐内科クリニックを受診されている患者さんのご家族は、歯科受診の重要性を理解されています。そのため、介護者自身も歯科を受診したいのですが、時間的余裕がありません。その点、医科の敷地内に歯科があることで、患者さんと介護者さんが同時に受診することが可能です。これには、とても感謝いただいています。

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忙しい介護者の方も一緒に受診しやすいとのことです

4-4.在宅患者さん

医療法人ブレイングループは、複数の介護サービスを提供することで在宅生活を支えています。そのため、通院できない患者さんには従来の訪問診療に加え、クローバー歯科から訪問歯科・訪問歯科衛生士によるサービスを提供いただきます。

5.いかに相互の信頼を構築したか?

多くの方から、医師と歯科医師がどのように連携して、同一敷地内での開業につながったを聞かれます。


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始まりは、私の部分入れ歯が壊れ、近くで歯科医がないか探していたところ、分かりやすいホームページから医療法人LSCを受診、藤本靖貴先生の患者となりました。

その後、藤本先生が、私の東京での講演会にわざわざ参加。経営の相談に乗るようになりました。しかし、患者さんへの対応方法など、医師の方が歯科医から学ぶことも多く、どちらが教えてもらっているか分からなくなりました。少なくとも、拙書「認知症専門医が教える! 脳の老化を止めたければ 歯を守りなさい!」は藤本先生からの教えがなければ実現しなかったといえるくらいのものです。

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そんな流れの中で、私の患者さんに、歯科治療を提供してあげたい。それも、「良質な歯科治療をお願いしたい」との思いが、医療法人LSCによるクローバー歯科開院につながったのです。

6.ビジネスパートナーとして、理念以上に気をつけること

理念を双方で共有することは重要ですが、前提条件として医科の敷地内での歯科診療所の誘致に関しては以下の方法で行いました。今後、医科歯科連携を行う方に参考になれば幸いです。

6-1.医科側は、あくまでも地主

今回、歯科診療所の建物と内装は、医療法人ブレインが準備しました。経営については一切口を出さない。しかし、協力して安定した経営ができなけば、家賃をもらえないという形にしました。

6-2.適切な賃貸条件

賃貸契約においては、決して高すぎず、安すぎない設定額にしました。どちらかに負担を強いるような条件では、いずれ破たんがきます。ここでは詳細条件を記載しませんが、関心がある方は問合せください。

6-3.リベートは絶対に要求しない、受け取らない

医科の診療所に隣接している院外薬局が突然変わったり、撤退することがあります。その原因の一つが、診療所側によるリベート要求とされています。確かに、敷地内にある相手の事業が上手くいくと、リベートが欲しくなる人がいるようです。この点については、最初から「いかなることがあってもリベートは要求しない、受け取らない」を約束しました。

*リベート:英語の「rebate(値引き)」がカタカナ語になったもの。「手数料」「世話料」「謝礼金」「報奨金」「賄賂」などの意味がある。

7.医科クリニックに歯科医院を誘致をお薦めする理由

流行っている医科のクリニックの場合、日々の仕事をこなすことで精一杯になりがちです。しかし、そんな医科にこそ歯科クリニックの誘致をお薦めします。

7-1.医師として、適切な歯科治療を勧めるのは務めである

これらからの時代は、医科の患者さんに対して、従来の治療だけでは不十分です。歯科疾患は、虚血性心疾患、脳血管障害、認知症、さらに癌にいたるまで、命に関わるすべての疾患に影響を及ぼします。自身の患者さんに、適切な歯科治療を受けてもらうことは、医師としての務めでもあるのです。

7-2.三方良しの不動産投資

医科としての経営が上手くいくと、不思議と不動産投資を勧められます。単に自分のための投資を行うぐらいなら、患者さんや地域に貢献できるような不動産投資を行うべきではないでしょうか? 医師が、歯科クリニックの建物を建築すれば、歯科の先生も投資を抑えることもできるのです。まさに、医師・歯科医・患者さんの三方に良いことづくめなのです。

7-3.若い歯科の先生からの刺激を得られる

医師仲間だけでいると視野が狭くなりがちです。若い歯科の先生との交流は、とても刺激的で勉強になります。医療法人LSCの藤本先生も私より11歳若く、いつも刺激をもらっています。

8.まとめ

  • これからの時代、医師が自身の患者さんに、適切な歯科診療を提供することは大事な務めです。
  • そのためには、医科の敷地内に歯科医を誘致することも必要です。
  • 医師が歯科診療所の建物・内装を用意することは、三方良しの不動産投資となります。

 

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