医療の現場で感じることは、この数年で「筋トレと腸内細菌が健康に及ぼす効果」についての知見が相次いでいることです。これからの健康の鍵は、薬やサプリメントではなく、腸内細菌と筋肉を維持する生活習慣であることが理解できる本です。お薦めです。
- がんは高血圧、糖尿病、脂質代謝異常症と同じく生活習慣病の一形態と見なされるようになり、その予防法は体の慢性炎症を抑えることであるという結論がでています。慢性炎症を抑えるためには、環境要因や生活習慣を変えることです。その結果、がんの 90%は予防できるという見解
- がん予防の筋トレの効果に差が出るのは 10 年 20 年先
- 現在では日本人100人あたり 53・8人が生涯を通じてがんになる
- アメリカでも同様に高齢化が進んでいますが、1980年と2014年で人口 10 万人あたりのがん死亡者数を比較すると240人から192人へと2割減少しています ( 2017)。同時期の日本のデータでは142人から289人へと約2倍に増加していることから、日本のがん死亡者数の急増がいかにおかしいか
- アメリカではがんの予防に良い食品などが話題になり、がんを予防するための食生活を意識して生活している人が年々増加しています。それに対して日本人で、がん予防のための生活習慣を意識している人はまだまだ少ない
- 1960年代の男性喫煙率は 80%を超えていますが、2018年は 27%に低下しています。喫煙率は減っているのに肺がんは増え続けている。そもそも喫煙率の低い女性の肺がんが増えている。
- 検診で発見されるには少なくとも1㎝程度の大きさになることが必要です。1㎝のがん細胞は約1億個の細胞で成り立っています。その大きさになるためには、細胞の悪性度にもよりますが、 10 年から 20 年の年月を要する
- 免疫力が低下している状態を 10 年以上放置しない限り、「目に見える形のがん」になるまではなかなか進行しない
- 免疫細胞を成長させ、十分な機能を発揮させるための栄養素として、ビタミンC、ビタミンD、亜鉛、セレン、鉄、たんぱく質などが必要です
- 筋トレをすることで得られる効果は全身の慢性炎症の改善 です。筋肉は動かせば動かすほど筋肉からミオカイン(myokine) と呼ばれるサイトカイン(細胞間の伝達物質) を放出します。このミオカインには炎症を抑える物質が含まれており、筋トレを繰り返すことで全身の炎症が改善
- あらゆる原因での死亡に関しては、筋トレでも有酸素運動でも死亡率の低下を認めました。しかしがんによる死亡率だけを検討したところ、筋トレのみの群、筋トレ+有酸素運動の群は、がん死亡率の有意な低下を認めましたが、有酸素運動のみの人はがん死亡リスクの低下は認められません
- 血管と同様にリンパ管は全身に張り巡らされ、免疫系の維持および腸管での脂肪の吸収に重要な役割を果たします
- リンパ液をリンパ管の中を流すためには外力が必要です。呼吸の動きや皮膚の緊張、動脈の拍動、姿勢の変化などでもリンパ液は移動しますが、最大の外力は筋肉を動かすことです
- 筋肉細胞から放出されるミオカインで最も多い物質はインターロイキン6(IL-6) です
- 筋肉から放出されたIL-6は、筋肉を修復しながら内臓脂肪を減らす作用も発揮し、慢性炎症を抑える抗炎症効果を倍増
- 筋トレの習慣をつけたいと思ったら、まずは腕立て伏せ1回、スクワット運動1回でもいいから行う
- 筋トレを行いつつ内臓脂肪を落とし慢性炎症を改善することがプロテインを摂取することよりも先決