【お薦め本の紹介】「80代になれば、たいていボケるか死ぬ」――だから70代を無駄にしてはいけない

【お薦め本の紹介】「80代になれば、たいていボケるか死ぬ」――だから70代を無駄にしてはいけない

林真理子さんの『80代になるとたいていボケるか死ぬ。70代は神様から与えられた特別な時間』を読みました。何とも刺激的なタイトルです。しかし、認知症専門医として多くの高齢者を診てきた私には、単なる「毒舌本」とは思えませんでした。

林さんは、「七十代になったら、今までと同じことをしていてはいけない」と書いています。そして80代になれば、心身の衰えから逃れられる人はむしろ少数派。だからこそ70代は、老いを否定する時期ではなく、「残された時間をどう使うか」を考える特別な年代なのです。私は現在60歳。まだ少し先の話ではありますが、「自分は70代をどう生きたいか」と何度も考えさせられました。

目次

1.老いに逆らうのではなく、老いに合わせて生き方を変える

この本で最も共感したのは、老いを無理に否定しない姿勢です。若い頃なら朝起きて30分で家を出られた。しかし今は2時間かけて身体を目覚めさせる。そして「人生の残り時間は少ないのに」と思いながらも、「焦っていいことは何もない」と林さんは書きます。

これは医学的にも大切な考え方です。加齢によって筋力も反射神経も嚥下機能も低下します。それなのに若い頃と同じ生活を続けようとすれば、転倒や誤嚥、事故につながります。林さんは「タコが噛み切れなくなったら諦める」と書きます。実に現実的です。老いることは負けではありません。できなくなったことに執着するのではなく、「今の自分に合った方法」に変えていく。その柔軟性こそ、高齢期を上手に生きる知恵なのだと思います。

2.70代こそ「人との距離感」が問われる

もう一つ面白かったのが、人間関係についての指摘です。健康自慢をしない。過剰なお節介をしない。若い人の二次会についていかない。自慢話をしない。クレーマーにならない。

中でも印象的だったのが、「年とったら誇りを持って脇にどけ」という言葉です。年齢を重ねると、どうしても「教えてあげたい」「自分の経験を伝えたい」という気持ちが強くなります。しかし相手が求めてもいないのに語れば、それは知恵ではなく説教になってしまいます。しかし、経験が増えるほど大切なのは「話すこと」よりも、「求められた時だけ話すこと」なのかもしれません。

林さんが「先生と呼ばれると老ける。“ちゃん”と呼び合う友人が必要」と書いているのも面白い。肩書きを外した人間関係を持ち続けることは、老後の孤立を防ぐ意味でも大切だと思います。

3.70代は人生を縮小する時期ではなく、楽しみ切る時期

この本には死の話が何度も登場します。しかし決して暗くありません。むしろ一貫しているのは、「人生を愉しまずに逝ってはいけない」という姿勢です。高価な食器をしまっておかず使う。好きなものを食べる。旅行する。本を読む。友人と会う。そして、可能なら少しでも仕事を続ける。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


林さんは、70代では「少額でもいいから現金を稼ぎ、現役感を持つことが大切」と書いています。これは私も強く共感します。仕事には収入以上の意味があります。人と会い、頼られ、決められた時間に出かけ、頭を使う。そのすべてが身体と脳への刺激になります。

もちろん無理に働く必要はありません。趣味でも、ボランティアでも、旅行でもいい。「今日もやることがある」という状態をできるだけ長く持つことが、老後を豊かにするのだと思います。

おわりに

この本を読んで、70代とは「老後」ではなく、「人生を仕上げる10年間」なのだと思いました。若さを取り戻そうと必死になる必要はありません。

林さんは、「老いに逆らうのではない。小さな努力の成果を楽しむ」と書いています。歩けるうちは歩く。働けるうちは働く。会いたい人には会う。食べたいものを食べる。使わずにしまってあるものは使う。そして何より、「いつか」ではなく「今」を楽しむ。

80代になれば、病気になるかもしれない。認知症になるかもしれない。あるいは、その前に人生が終わるかもしれません。だからこそ70代は、神様から与えられた特別な時間。60歳になった私にとっても、少し早めに読んでおいてよかったと思える一冊でした。

Amazon紹介ページ
長谷川嘉哉監修シリーズ