認知症予防に効果的な食事が地中海食である理由を専門医が解説

同じ食事をとるならば、認知症にならないような食事を摂りたいものです。そうなると、「日本食は身体に良いから和食を中心に」と考えたくなりますが、実は、認知症予防には、和食以上に地中海食が理想です。今回の記事では、月に1000名の認知症患者さんを診察する専門医の長谷川嘉哉が、地中海食が理想である理由をご紹介します。

１．地中海食が認知症を予防する証拠

地中海食が認知症を予防する論文が、いくつも発表されています。

１－１．地中海食がアミロイドβの蓄積を抑制

脳神経内科専門医の中でも、レベルの高さから信頼がおける雑誌の一つ「Neurology」に発表された論文です。

アルツハイマー型認知症に特徴とされるアミロイドβやタウ蛋白質の蓄積および認知機能と、食習慣の関連を調査。野菜や果物、オリーブオイル、魚が豊富な、いわゆる地中海食と呼ばれる食事スタイルは、認知機能の低下を防ぐ可能性を示唆する結果が明らかになった。

１－２．地中海食が記憶力を維持

また内科の雑誌の中でも信頼がおける海外の医学誌「JAMA Internal Medicine」の論文でも、

「地中海食ではない低脂肪食を摂取したグループ」と比べ、「地中海食＋週1Lのエクストラバージンオリーブオイルを摂取したグループ」「地中海食＋1日30gのナッツ類を摂取したグループ」の方が、記憶力・思考力が高く維持されていた

ことが明らかになっています。

１－３．動物実験におけるオリーブオイルの効果

アメリカのテンプル大学の研究チームが行ったマウス実験によれば、

オリーブオイルを与えたマウスは、与えられていないマウスと比べて認知機能が高く、アミロイド斑（アルツハイマー病の原因）も少なかったことが判明。人間でも同様のメカニズムが起こると推察される

と報告されています。

２．そもそも地中海食とは？

このように認知症予防に効果がある地中海食とはどのようなものでしょうか？地中海食とは、以下のような特徴があります。

オリーブオイルを多く使う
豆類やナッツの摂取量が多い
野菜やフルーツを豊富に摂取
魚介類を習慣的に摂取
肉類は、鶏肉を主として、牛肉や豚肉の摂取は少量
食事と一緒に適量の赤ワインを飲む
ソーセージやハムなどの加工肉の摂取は最小限
お菓子やケーキなどデザートの摂取は最小限

３．地中海食の何が効果的？

なぜ地中海食は、認知症予防に優れているのでしょうか？大きく分けて以下の2つが考えられます。

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３－１．不飽和脂肪酸が豊富

地中海食で摂取する、オリーブオイルやナッツ類には「オメガ３」という不飽和脂肪酸が多く含まれます。その中でも、「オレイン酸」は、脳の神経細胞を保護する髄鞘に多く含まれています。そのため、オリーブオイルやナッツ類からオレイン酸を摂取することが、認知症の予防につながると考えられます。

３－２．抗酸化物質を多く含む

動脈硬化が進行して、血管が老化すると血管性認知症の危険性が高まります。動脈硬化は、血中の悪玉コレステロールが酸化することでおこります。オリーブオイルやワインには抗酸化物質「ポリフェノール」が豊富に含まれ、悪玉コレステロールの酸化を防ぐことで血管の老化の原因となる酸化ストレスを抑制するのです。