期待大!国民皆歯科健診といかに付き合うか

期待大!国民皆歯科健診といかに付き合うか

2022年5月、政府は国民の毎年の歯科検診を義務付ける「国民皆歯科検診制度」の検討を明記しました。生涯医療費の抑え込み、日本歯科医師連盟の要望、7月の参院選向けの組織票など思惑がありそうですが、このこと自体は大歓迎です。

私自身のクリニックでは、300人近い外来患者さんが敷地内の歯科クリニックを受診してから、当院を受診しています。毎日、身をもって歯科の重要性を感じているものからすると、多くの方の尽力に感謝したくなります。今回の記事では、「国民皆歯科検診」に対する期待と有効利用についてご紹介します。

1.歯科検診は、医科の健康診断に負けないほど命に係わる

不思議ではないですか? 学生時代から日本では高校生までは、毎年歯科検診が義務付けられていました。しかし、その後は歯科検診は全く行われません。一方、医科の健康診断は義務付けられ、市町村や企業が中心になって健康診断を行っています。

確かに、医科の健康診断は、病気の早期発見による早期治療が目的とされます。しかし特に歯周病については、認知症、脳血管障害、虚血性心疾患、糖尿病の発症に関わっていることが明らかになっています。さらに、大腸がん、食道がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、膵臓がん、胃がん、血液のがんに対して危険因子になり得ることがわかっています。

つまり、医科の健康診断に負けないぐらい、歯科検診は命に関わっているのです。今回の国による「国民皆歯科検診制度」はとても意味があるのです。詳細については、以下の記事も参考になさってください。

2.日本は、歯科定期受診の後進国

残念ながら、多くのひとが「歯が全身にまで影響を及ぼす」ことを知りません。今回の報道でも、

厚生労働省の調査によると過去1年間に歯科健診を受けた人の割合は2016年度に53%。特に20~30代は受診率が45%未満

とされていますが、これは歯の痛みなどの症状が出て受診をした割合です。

我々が目指す、症状がない段階での定期受診はもっと低いのが実態です。具体的には、予防先進国である定期受診率はスウェーデン90%、アメリカ80%、イギリス70%にたいして日本は約2%です。その結果、80歳で残っている歯の数は、スウェーデン20本、アメリカ17本、イギリス15本に対して、日本人は、わずか8本しか残っていないのです。

3.医師の意識改革も

せっかくの国を挙げての「国民皆歯科検診制度」ですが、できれば医科の先生方の意識も変えたいものです。

3-1.医師の不養生は歯科検診でも

歯科の先生方と話をしていると、「医師は一般の方に比べ歯の状態が悪い人が多い」と聞きます。多くの医師は、いまだに「歯は命にかかわらない」と勘違いしている人が多くいます。さらに忙しさにかまけ、定期的な歯科受診など全く受けていない人が多いのです。(私も以前はそうでした)


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3-2.医師の中でも先進的な領域

但し、医科の中で以下の領域は歯科領域との連携が先進的です。

  • 糖尿病:歯周病の治療は、糖尿病コントロールに密接に関わっています。したがって糖尿病手帳には、定期的な歯科受診の項目が記載されています。
  • 整形外科:骨粗鬆症の治療薬を投与する前に、歯科のチェックを受けるケースが増えてきました。
  • 心臓外科術前:心臓の手術の前には、手術の成功率をあげるために口腔ケア、虫歯や歯周病の治療、感染源となりうる歯の抜歯を行います。

3-3.歯科のメンテナンスは健康意識のバロメータ

外来をやっていて感じることは、歯のメンテナンスを受けている人は、医科の健康管理についても熱心です。少なくとも、好きなだけタバコを吸って、暴飲暴食をしているが定期的に歯科のメンテナンスを受けているような人はいません。ある意味、歯科受診自体が、健康意識のバロメータと言えるのです。

4.歯科検診後のケアが大事

本来、歯科受診は症状はなくても定期的な受診が望まれるのです。今回の国民皆歯科検診制度が、歯科クリニックの受診のきっかけになれば理想です。但し注意したいのが、歯科検診の目的は確かに、虫歯や歯周病といった病気を見つけ治療をすることです。しかし、それで終わっては不十分です。治療後も、定期的なケアを続ける人が増えることが最大の目的なのです。

5.本当は、国民皆歯科検診関係なく定期受診を

確かに、今回の国民皆歯科検診は画期的です。しかし、心配なことがあります。

5-1.歯科受診への抵抗感

やはり我々素人からすると、「歯科は怖い」と意識が強いことです。ブレイングループでも一足早く、歯科検診を開始したのですが、感情的な理由で受診いただけないスタッフがかなりいらっしゃいました。

5-2.公的検診は最低限

長年、医科の検診に関わってきたものからすると、公的なものは最低限であることです。つまり、表面的な歯科検診だけでは、十分な対応ができないことも多いのです。

5-3.検診より定期受診を

やはり公的な検診に頼るだけでなく、かかりつけ歯科医に、3か月に一度美容院に通うがごとく定期的に受診が大事です。

6.まとめ

  • 国民の毎年の歯科検診を義務付ける『国民皆歯科検診』制度の検討されています。
  • 歯科検診は、医科の検診と同様に命に係わります。
  • ただし、理想は公的な検診に頼るだけでなく、かかりつけ歯科医に、3か月に一度定期受診です。
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