「一億総中流」という時代に育ったものとしては衝撃的な内容です。生涯賃金も減り、可処分所得にこれだけ減れば、従来の「中流の暮らし」である「正社員」「持ち家」「自家用車」さえも実現することは難しいようです。ただし、本の中にはそのための対策もしっかり書かれています。一読して、子供たちの将来への対策を練る必要があると思いました。
- 中間層の所得がこの 25 年間で大幅に落ち込んでいる。2022年7月に内閣府が発表したデータでは、1994年に505万円だった中央値が2019年には374万円。 25 年間で実に約130万円も減っている
- 一人あたりの名目国内総生産(GDP) をみてみると、1995年には、ルクセンブルクやスイスに次いで、世界で3番目の水準にあったものが(IMF統計、国連統計では第6位)、内閣府が2022年 12 月 23 日に発表した国民経済計算年次推計によると、経済協力開発機構(OECD) 加盟国 38 ヵ国中 20 位に急降下
- 大卒正社員の生涯賃金は1993年は男性で3億2410万円だったが、2019年には2億8780万円に、女性は1997年に2億7750万円だったのが、2億4030万円となり、男女ともにピーク時に比べて3500万円以上減少した
- 働く人の 36・9%が非正規
- 可処分所得を調べてみると、1990年が576万円だったのに対して、2020年では463万円となり、年間で113万円(約 20%) も減少していた。2割も使える金が減れば、個人消費が低迷するのも当然
- かつて当たり前のものだった「中流の暮らし」は高嶺の花となっただけではなく、将来に対して希望を失っている人がことのほか多い
- いまの若者たちは、そもそも「 夢すら見られない」という現実に直面
- 2020年時点の男性の生涯未婚率( 50 歳時点で一度も結婚をしたことのない人の割合) は、 28・3%。実に、この 30 年で5倍も増えた
- 日本のデフレスパイラル(【消費者がお金を使わなくなる】→【値下げ競争が激化】→【企業が稼げなくなる】→【給与が減る】→【消費者がお金を使わなくなる】)
- “中流復活〟の鍵を握ると考えたのが「デジタルイノベーション」「リスキリング」「同一労働同一賃金」という3つのキーワード
- 技術でイノーベーションを起こせる人材はいたけど、マーケット視点のイノベーションを生む人材が不足
- 顧客ニーズを把握し、「顧客が求めるもの」を優先して製品を開発する「マーケットイン」の発想が欠けていた
- 日本の得意とする製造業にサービス事業を組み合わせた新ビジネスを始める日本企業が最近増えてきた
- リスキリングがここまで注目されているのだろうか? その背景には「技術的失業」に対する強い危機感
- デジタル技術は〝敵〟ではなく、人間が人間にしかできない仕事に注力できるよう手伝ってくれる存在
- デジタル社会では、スキルの有無が、収入や働き方の新たな格差を生むリスクがある。だからこそ誰もが平等にスキルを身につけられる環境を整備していくことが重要
- 「労働時間差別禁止法」そして「労働時間調整法」が制定されて 20 年以上が経過したオランダでは、従業員の幸せこそが会社の利益をもたらすものだという考えが経営者の間ではなかば常識
- 中流の行方に着目したのが福澤諭吉だった。当時のベストセラー『学問のすすめ』の中で、「国の文明は……必ずその中間より興りて、衆庶の向かうところを示し」得る人材が必要だと力説
- 福澤諭吉流にいえば、ミドルクラスが学問(リスキリング) に励み、イノベーションを起こせば、新しい産業を興すことができる。企業が稼ぐ力を取り戻せば、それが中流復活という好循環を生み出す。