便秘薬の使い方を医師が解説・開発ラッシュが進む新薬の紹介も

便秘薬の使い方を医師が解説・開発ラッシュが進む新薬の紹介も

年齢、男女を問わず、便秘を訴える患者さんはたくさんいらっしゃいます。潜在的な患者数は、国内で1,000万人を越えるといわれています。

内科をやっていますと、この便秘でお困りの方も見えられます。高齢者の方でも悩まれますし、ある疾患の症状の一つとして便秘が頻発するものもあります。

患者さんによっては、市販の下剤を購入。それを「飲むと下痢、飲まないと便秘」を繰り返している方もいらっしゃいます。一方で、下剤は身体に悪いと拒否するあまり、10日に1回しか排便がない方もいらっしゃいます。規則的な排便は、食欲につながります。快食快便は健康の基本です。長らく新薬が開発されていなかった便秘薬ですが、最近では新薬も相次いで発売されています。

今回の記事では、規則的な排便習慣のために症状にあった便秘治療を紹介します。

目次

1.便秘とは?

便秘とは一般的に、大腸内の排泄物(便)の通過が遅くなったり、腸内に便が長時間とどまるなど、排便が順調に行われない状態のことをいいます。排便のない状態が3日程度続いたら便秘だと思ってよいでしょう。また、1日1回排便があっても、量が少ない、すっきり出た感じがない、便が硬く、なかなか排泄できない、排便の間隔が不規則などの状態があれば、便秘といえます。1日1回、バナナ2本分くらいの排便があるのが理想的です。

woman sitting on the bed with pain
痛みを伴うこともあります

2.便秘によって引きおこされるもの

便秘が続いて便が腸内に長く停まると、体と心にさまざまな症状が出てきます。「腸内に悪玉菌が増える」「骨盤内の血行が悪くなり、全身的に血行が悪くなる」「自律神経の働きが乱れる」などです。その結果引き起こされるものをご紹介します。

2-1.腹痛・腹部膨満感・食欲低下

お腹がパンパンでおならが臭いなら、便やガスがたまっている証拠。便秘では胃の働きも悪くなって、食欲も低下しがちです。

2-2.肌荒れ

スキンケアに気をつけているのに、肌の調子が今ひとつ…こんな人は、便秘が続いていることが多いものです。

2-3.イライラ・不快感

心の元気と腸の健康には深い関係が。便秘が続くと精神的に不安定になりやすく、「出ない!」というストレスで、よけいに便秘がひどくなる場合も。

2-4.肩こり・腰痛

便秘で血行が悪くなり、疲労物質がたまりやすくなるために起こります。血行不良は、冷えやむくみ、月経不順などの原因にも。便秘は女性によくある不調の大敵です!

2-5.痔

若い女性に増えている切れ痔の最大の原因は、便秘です。コチコチ便の人や、トイレでウーンと強くいきむ人は要注意!

以上、主な症状を紹介しました。便秘が解消するとこうした症状が連動してよくなるのです。

3.あなたはどれ? 便秘、代表的な3つのタイプと改善法

一言で「便秘」といってもその原因は主に3タイプあります。原因を知ることで改善法が導き出されます。

3-1.弛緩性便秘

弛緩性便秘は、大腸の蠕動(ぜんどう)運動が弱くなったり、筋力が低下して便を押し出すことができなくなったりすることで起こります。高齢者や出産回数の多い女性によくみられます。便が硬い方は、まずは便を軟らかくする薬剤を使いましょう。便が柔らかい方は、腸の動きを刺激する薬剤を使用します。


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3-2.痙攣性便秘

痙攣性便秘は、ストレスにより自律神経が乱れて、腸の運動がひきつったようになり、便の通りが悪くなって起こります。下剤の乱用で、腸が過剰に蠕動運動をすることでも起こり、下痢と便秘を交互に繰り返すことがあります。下剤よりも先に生活習慣の改善が大事です。

3-3.直腸性便秘

直腸性便秘は、便が直腸(便が排出される直前の場所)まで運ばれているにも関わらず、便意が脳に伝わらないために起こります。便意を我慢し過ぎたり、浣腸を乱用したりすることが主な原因です。まずは便意を我慢せず、浣腸の使用も減らしましょう。その上で、便を柔らかくしてから腸の動きをよくするという便秘の基本的な治療を行いましょう。

4.代表的な便秘薬と開発ラッシュが進む新薬について

便秘薬と言っても、種類がたくさんあります。治療の基本は、普段は「便を軟らかくする薬」で、つらいときは「刺激性下剤」です。便がコロコロの状態で、刺激性の下剤を使っても効果がありません。この場合はまずは便の性状を整えることが第一です。そのための処方薬があります。

逆に、便が柔らかいのに便を柔らかくする薬を使うと下痢になってしまいます。状況に合わせた治療が大事です。

ここのところ新薬の開発が相次いでいます。「たかが便秘」と思いこれまでの薬しか使っていなかった方は、新しいものも出ていますので、医師に相談なさってはいかがでしょうか。

4-1.センナなどの刺激性下剤

もっとも身近な便秘薬といえば、センナを代表とする刺激性下剤です。センナはマメ科の植物で、小葉を便秘用のハーブとして使用します。

刺激性下剤は、大腸の蠕動運動を促して排便を起こす効果の強い薬です。刺激性下剤は薬局でも売られている薬ですが、作用が非常に強力で、毎日飲むと水のような便になってしまいます。また、依存性が高く、飲む量がどんどん増えるので注意が必要です。

4-2.酸化マグネシウム

古くから広く使われている薬は、酸化マグネシウム(製品名:マグミットほか)です。この薬は、腸内で胃酸や膵液と反応することで塩類の濃度を高め、浸透圧を働かせて腸管から腸内へ水分を移動させ、便を軟らかくします。便が硬くて便秘の患者さんは、酸化マグネシウムを使用することで便が柔らかくなり、あとは自力で排便が可能となるケースも多々あります。

酸化マグネシウムは、繰り返し使用しても効果が弱まる(便秘が悪化する)ことがないという利点がありますが、腎機能が低い人や高齢者が長期間にわたって使うと、血中のマグネシウム濃度が上がり、高マグネシウム血症になる可能性があります。このような方が酸化マグネシウムを飲む場合は慎重に使用し、定期的に血中のマグネシウム濃度を測定する必要があります。

4-3.ルビプロストン(製品名:アミティーザ)

近年、便秘の治療薬は進歩しています。2012年から使えるようになったルビプロストン(商品名:アミティーザ)は、便秘治療薬としては32年ぶりの新薬です。小腸に働きかけて水分の分泌を促すことにより、便を軟らかくして自然に排出しやすくします。ルビプロストンは上皮機能変容薬と呼ばれ、ガイドラインでも推奨度が最も高いランクに評価されています。

4-4.グーフィス錠5mg(一般名:エロビキシバット水和物)

グーフィス錠5mg(一般名:エロビキシバット水和物)は2018年4月に発売されました。世界初の作用機序を持ちます。胆汁酸の再吸収にかかわるトランスポーターを阻害することで、大腸に流入する胆汁酸の量を増加させ、水分分泌と大腸運動促進の2つの作用で自然な排便を促します。便を柔らかくする機能と、大腸を刺激する働きの両面をもつため、ここまでで紹介した他の薬の効果がない場合に用いられると予想されます。

5.薬以外の改善法について

便秘の治療では、薬を飲む前にまず生活指導が行われます。基本は、適度に運動をして十分な睡眠をとること、そして食物繊維不足に気を付けることです。便秘の患者さんの中には、1日2gくらいしか食物繊維をとっていない人もいます。わが国の推奨量は、成人男性で1日20g以上、成人女性で1日18g以上です。極端なダイエットでも食物繊維の摂取量が減り、便秘の原因になります。

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6.パーキンソン病の便秘について

私が専門とする神経内科が専門とするパーキンソン患者さんの便秘は相当頑固です。原因は、パーキンソン薬の副作用もしくは自律神経症状が原因です。そのため、外来でもかなりの部分を便秘の対応に当てます。本日、紹介した便秘薬もフルに使います。

それでも効果がない場合は、浣腸を使ったり、訪問看護による摘便で対応をするほどです。

7.まとめ

  • 便秘の患者さんは1000万人以上ですが、タイプがあります。
  • 便秘のタイプ、状況に応じた治療が大切です。
  • 最近は、新しい便秘薬がたくさん開発されています。
長谷川嘉哉監修シリーズ