認知症外来で同時に内科的管理も必要な理由

認知症外来で同時に内科的管理も必要な理由

認知症専門外来では、「認知症だけを診てもらい、内科疾患は他の医療機関で診てもらう」と勘違いしている患者さんがいらっしゃいます。もちろん主治医が精神科であればやむを得ませんが、脳神経内科医の場合、内科医でもあるわけですから内科疾患も診ることができます。というか認知症というのは全身疾患とも密接に関わり合うので認知症を診ている医師がすべての処方を把握することが理想です。

今回の記事では、認知症専門医であり総合内科専門医である長谷川が、「認知症外来では同時に内科的管理も必要な理由」を解説します。

目次

1.脳神経内科医が把握したい内科疾患とは?

以下の疾患の治療については脳神経内科医が管理したい疾患です。

1-1.高血圧

血圧のコントロールについては高すぎても低すぎてもいけません。一般的には認知症患者さんの場合、血圧はあまり下げたくはありません。ただし脳出血や心不全の既往がある場合は、ある程度血圧を下げてコントロール必要があります。血圧を下げる際もできれば腎臓を保護する観点からの薬の選択が望まれます。

1-2.糖尿病

糖尿病については75歳までは厳格にコントロールをする必要がありますが、それ以降はHbA1cで7.0代であれば十分なレベルです。何よりも認知症患者さんでは低血糖発作は絶対に避けたいです。低血糖発作により、一気に認知機能が低下することさえあるのです。

1-3.心不全

高齢になると心不全で入院する患者さんが増えます。心不全は突然動悸、息切れ、胸部圧迫感が出現するため緊急入院になることが多くなります。認知症患者さんの場合、入院を機に一気に認知症が進行することが多々あります。そのためには、常に心不全の予兆を気にする必要があります。

1-4.徐脈

そもそも最近のお医者さんは脈をとりません。人間の脈の正常値は60~100回/程度です。これ以上の頻脈、これ以下の徐脈でも認知機能に影響を与えます。他の医療機関で、脈が速くなる薬や、脈が遅くなるような薬を飲まれていることが結構あります。脈を測定しなければ副作用自体が見逃されます。

2.脳神経内科医に内科的フォローも任せるべきケース

医師の立場からは、ご家族に言いにくいのですが以下のような場合はできれば、内科的疾患も脳神経内科医に任せてもらいたいと思っています。


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2-1.内科疾患を内科医以外が診ている

医師の専門も「餅は餅屋」です。やはり血圧・糖尿病・心不全などは内科医が診るべきです。開業医の場合、皆さんが内科医と思っていても内科医でないケースは多いものです。診察の標榜は、自由ですので、開業医はほぼ全員内科を掲げています。多くの場合、内科の標榜の次が本当の専門であることが多いです。例えば、「内科・外科」、「内科・泌尿器」などです。このようなケースは本来は外科や泌尿器が専門ですから本当の内科医に診てもらうべきです。

2-2.古い糖尿病の治療薬を使っている

糖尿病の治療は日々進んでいます。特にSU剤をいまだに使っているケースは早急に変更がのぞまれます。高齢者の場合、低血糖のリスクが極めて高くなります。

*SU剤(スルホニル尿素薬):糖尿病の治療薬として用いられる経口血糖降下薬で、膵臓のインスリン分泌を促進して血糖を下げる

2-3.心不全の対処がされていない

心不全は、かなり悪化するまで症状が現れません。そのため高齢者の場合、無症状でも心不全を見逃してはいけません。定期的な酸素濃度や脈の測定、胸部XPや血液検査におけるBNPなどのチェックがされていない医療機関は多いものです。

3.基幹病院での内科的フォローは任せるべき

ただし、頻回に心不全や肺炎による入院歴がある場合など、入院施設のある基幹病院での管理が必要な場合は、継続して受診する必要があります。この場合は、脳神経内科医による認知症治療と内科疾患の管理はそれぞれで行うことになります。

4.まとめ

  • 脳神経内科医による認知症治療の場合、内科的な治療も包括的に診るべきです。
  • 特に内科医以外が内科的疾患を診ている場合は変更することがお薦めです。
  • ただし、心不全や肺炎による頻回な入院歴がある場合は、入院設備のある基幹病院と認知症治療をそれぞれで行うことになります。
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